「これは"時間"への投資」Blenderアーティスト・Huseki氏が検証!ハイエンドワークステーション「HP Z2 Tower G1i Workstation」の実力
モーションデザイナー/CGアーティストとして活躍するHuseki(Yoshiki Ohta)氏が、日本HPの最新ワークステーション「HP Z2 Tower G1i Workstation」を徹底検証。Huseki氏のメインマシンとの比較テストでは、CPU・GPUのスコアが約2倍、レンダリング速度は体感約1/2という驚きの結果が得られた。本稿では、Huseki氏の創作に対する姿勢からPCへのこだわり、プロとしてなぜハイスペックPCが必要なのかまで、じっくりと話を伺った。
プロフィール
Huseki(Yoshiki Ohta)氏
モーションデザイナー/CGアーティスト。情緒的なビジュアル表現を得意とし、CM・MV・ライブ演出など幅広い分野で活躍。2Dと3Dを自在に行き来しながら、アニメ調のルックと実写的な空気感を融合させた独自の世界観で注目を集めている。近年はhololive IDOL PROJECTのMVやイベント映像なども手がける。
X:https://x.com/_huseki_
映像制作を純粋に希求する心が導いたCGの世界
出典:https://x.com/_Huseki_/status/1884569259239776537
CM、MV、ライブ演出など多岐にわたる分野で活躍するHuseki氏。学生時代から独学で映像とデザインを学び、2021年よりフリーランスとして活動を開始。2Dと3Dを軸とした、情緒的で美しいビジュアル表現を得意としている。
直近の参加作品はhololive IDOL PROJECTの『藍染サマータイム!!』MV。背景CGなどを手がける3Dアーティストとしてキャッチーかつ雰囲気のあるCGを提供している。
また、先日開催された「Blender Fes 2025 AW」(主催:ボーンデジタル)では「アニメスタイル 3DCG制作入門」と題したセッションで、Blenderでのセルルック表現を丁寧に解説し、好評を博した。
そんなHuseki氏がCGの世界に足を踏み入れたきっかけは、ごく純粋な憧れだったという。「映画のワンシーンのようなものをつくりたい、という想いが原点です。そこからカメラを触り、アニメの背景美術やミュージックビデオの演出にも興味が湧いて、CG制作を始めました」(Huseki氏)。
最初に触れたのは、学生でも手軽に始められる無料の映像編集ソフト「AviUtl」だった。そこから表現の幅を広げるため、プロユースのツールの習得を積極的に進めていった。コンポジットはAfter Effects、3DCGはBlenderとCinema 4D。こうしたツールの学習には、YouTubeのチュートリアル動画や解説記事をフル活用。動画や記事を見ながらひたすら手を動かして学ぶという、まさに現代的なスタイルだ。
Huseki氏の作品は、アニメ的なルックでありながら、光と影のコントラストが印象的な、実写的な空気感を併せ持つ。その独創的な世界観は、見る者の感情に直接訴えかける力を持つ。
「作品づくりで最も意識しているのは、人の心がどう動くか、という点です。『映画のワンシーンのような』という漠然とした表現を突き詰めると、その画を見たときに嬉しさや切なさ、懐かしさなどを感じてもらえるか、ということになります。そのために光と影の使い方はもちろん、あえて全てを見せず、鑑賞者に想像の余地を残すような構図を意識しています」(Huseki氏)。
彼の創作活動の根幹には常に「情緒」がある。技術はあくまで、表現のための手段として存在する。こうしたHuseki氏の考えが、多くの人々を惹きつける作品を生み出す原動力となっている。
制作環境にこだわるHuseki氏が「HP Z2 Tower G1i Workstation」をテスト
Huseki氏はこれまでも一貫して、自身の制作環境に強いこだわりをもってきた。CGを始めた当初からPCの自作に興味を持ち、中古パーツを組み合わせて1台目をつくり上げた経験をもつ。「何でも自分でやってみたくなる性分なんです。作業の中で『なぜここで固まるんだろう』とか『もっと速くならないのかな』といった壁にぶつかるたびに、CPUやGPU、メモリといった各パーツの役割を調べて、自分の手で環境をアップデートしてきたんです」(Huseki氏)。
そうして試行錯誤を重ね、現在は3代目となる自作PCをメインマシンとして使用している。
Huseki氏のメインマシン(3代目自作PC)のスペック
- CPU
AMD Ryzen™ 9 5900X
- メモリ
64GB
- GPU
NVIDIA® GeForce RTX™ 3070
これは4年前に組んだマシンとのことだが、当時としてはかなりハイスペックだ。しかし、Huseki氏は「そろそろ換え時かもしれない」と感じていたという。そこで今回CGWORLDでは、Huseki氏にHP社の最新ワークステーション「HP Z2 TOWER G1i Workstation」の検証を依頼した。
HP Z2 Tower G1i Workstation:今回の検証機のスペック
- OS
Windows 11 Pro
- CPU
インテル® Core™ Ultra 9 プロセッサー 285K
- GPU
NVIDIA® GeForce RTX™ 5070
- メモリ
64GB
- SSD
1TB
この検証機のスペックは、現代のCG制作において、極めてハイエンドな構成と言える。
Huseki氏は両者の性能を比較するため、Blender公式のベンチマークソフト「Blender Benchmark」でスコアを計測したところ、圧倒的な結果となった。
マシン比較
| 項目 | Huseki氏メインマシン | HP Z2 Tower G1i(検証機) |
|---|---|---|
| CPU | 284.15 | 528.30 |
| GPU | 3160.53 | 6209.03 |
CPU、GPUともに、スコアは約2倍。特にGPUのスコアは、BlenderのOpen Dataベンチマークランキングで、全ユーザー中のトップ1%に入るという驚きの結果である。
この数値は、実際の制作プロセスにどれほどの影響を与えるのだろうか。「レンダリング時間は、体感で半分ほどになりました。まさに爆速です。試行錯誤を繰り返すCG制作において、この差は計り知れません。単純計算で2倍の回数チェックバックができるので、作品のクオリティを突き詰めるための時間が生まれる。これは本当に大きなアドバンテージです」(Huseki氏)。
ベンチマークスコアが示す通り、レンダリング速度が劇的に向上したことで、クリエイティブな作業にさらなる時間と余裕がもたらされることが証明された。
パフォーマンスだけではない「HP Z2 Tower G1i Workstation」の魅力
Huseki氏は今回「HP Z2 Tower G1i Workstation」を試用してみて、長年自作PCと向き合ってきたからこそ、ワークステーションならではの利点を3つ、強く感じたという。
1つ目は、レンダリング以外のあらゆる操作におけるレスポンスの速さだ。「自分のメインマシンは、時々動作が『もさもさ』することがありました。しかし検証機は、どんな操作もサクサク動いてくれる。このレスポンスの速さが、日々の作業における小さなストレスをなくしてくれます」(Huseki氏)。
2つ目は、そのコンパクトで洗練されたデザインだ。かつてはLEDで装飾した大型のPCを好んでいたHuseki氏だが、制作環境の変化とともに、その価値観は変わってきたという。
「ワンルームのような限られたスペースでは、大型のPCは邪魔になってしまうこともあります。その点、このマシンはミドルタワーサイズで非常にコンパクト。軽くて移動させやすいのも嬉しいですね。また、普遍的で洗練されたデザインなので、どんなインテリアにも馴染みます。場所を選ばないというのは、大きな利点です」(Huseki氏)。
そして3つ目が、メーカー製ワークステーションならではの信頼性とサポート体制だ。Huseki氏は過去に、自作PCを組んで1週間でCPUが故障し、保証が効かずに買い直したという苦い経験がある。「自作PCはパーツを自由に選べる楽しさがありますが、すべてが自己責任。メンテナンスも大変です。その点、メーカー製のワークステーションは、プロが選んだパーツで最適化されており、何より保証やサポートが受けられます。トラブルが起きてもすぐに頼れる場所があるという安心感は、何物にも代えがたい。正直、次にPCを買うときは、もう自分で組むことは考えていないですね」(Huseki氏)。
レスポンス、デザイン、信頼性。「HP Z2 Tower G1i Workstation」は、これらの要素を高いレベルでバランス良く1台に収めたワークステーションだ。自作PCにこだわってきたHuseki氏がクリエイターとしてその価値を認めたことはとても興味深い。
なぜCGクリエイターはハイスペックPCを使うべきなのか
今回の検証を通じて、Huseki氏は改めてハイスペックな制作環境の重要性を実感したという。CGを学び始めたばかりの学生や若手クリエイターに向けて、彼は自身の経験を交えながらこうアドバイスする。
「CG制作は、トライ&エラーの繰り返しです。性能の良いマシンを使えば、その回数を圧倒的に増やすことができる。つまり、より良い作品にたどり着くためのチャンスが増えるということです。それは、自身の成長速度を加速させることにも直結します」(Huseki氏)。
また、ハイスペックな環境は、クリエイターの挑戦の幅を広げてくれる。「チュートリアル動画などを見て『これをやってみたい』と思っても、PCのスペックが低いと『重くて無理だ』と諦めざるを得ないことが多々あります。最初からハイエンドな環境を整えておけば、そうした制約がなくなり、あらゆる表現に挑戦できる。それが新たな仕事に繋がる可能性も大いにあります」(Huseki氏)。
高価な機材への投資は、特にキャリアの浅いクリエイターにとっては勇気のいる決断かもしれない。しかし、Huseki氏はそれを「時間を買い、実力を伸ばすチャンスを買うための自己投資」だと語る。「最高の環境を整えることで、『PCのスペックが低いから』という言い訳ができなくなります。自分の実力と向き合わざるを得なくなる。それは、クリエイターとして成長していく上で非常に重要なことです。無駄なロスをなくし、自分のスキルアップに特化できる。ハイスペックPCは、そのための最も賢い選択だと思います」(Huseki氏)。
今回の検証でその実力を示した「HP Z2 Tower G1i Workstation」は、クリエイターのポテンシャルを最大限に引き出し、新たな表現の扉を開く、強力なパートナーとなるだろう。
TEXT__kagaya(ハリんち)
INFORMATION
HP Z2 Tower G1i Workstation
OS:Windows 11 Pro
CPU:インテル® Core™ Ultra 9 プロセッサー 285K
GPU:NVIDIA® GeForce RTX™ 5070
メモリ:64GB
SSD:1TB
スペシャルコンテンツ
VIEW MORE- 週間ランキング
- 月間ランキング
-
CGWORLD vol.328(2025年12月号)「映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』」特集号を先行告知!
-
NVIDIAら、接触しても貫通しない新しいコンタクトモデル「Offset Geometric Contact」発表! 布や糸の接触シミュレーションを貫通なし、アーティファクトなしで高速処理
-
【VFXアナトミー】映画『雪風 YUKIKAZE』|チーム連携と個人プレイを巧みに使い分けたVFX
-
オープンソース「Krita」でノーマルマップ画像を作成しBlenderで活用! mokunachoi氏によるチュートリアルが話題
-
株式会社TA、Maya用の無料リギングプラグイン「UZURIG 2.4.7」リリース! ゲーム開発向けに設計されたモジュラーリグシステム
-
アニメ『キミとアイドルプリキュア♪』プリキュア5人がそろった後期EDを解説! 〜No.2/アニメーション付け篇
-
3Dモデル生成AI「Hunyuan3D 3.0」リリース! 精度3倍、36億ボクセル、1日20回まで無料生成可能、AI搭載3D制作ツール「Hunyuan 3D Studio」クローズドテストもスタート
-
【VFXアナトミー】Ado×YOASOBI×星街すいせい マクドナルド『ティロリミックス 2025』MV|【Unreal Engine】過去最大のスケールとクオリティ
-
Blenderからnano-bananaでレンダリング! 榊正宗氏開発の無料Blenderアドオン「Monkey Banana」
-
CGWORLD vol.328(2025年12月号)「映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』」特集号を先行告知!