『FINAL FANTASY VII (以下、FFVII)』完全リメイク3部作の2作目として、『FFVII REMAKE(以下、REMAKE)』から4年を経てリリースされた『FINAL FANTASY VII REBIRTH(以下、REBIRTH)』

前作と地続きでありながらPS5のパワーによってさらに微細に描き出される本作の開発について、5回に分けて紹介していく。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 312(2024年8月号)からの転載となります。

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    PS5の恩恵を得てより詳細に描かれる『FFVII』のキャラクターたち〜『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(3)モーション編
    広大な世界を描き出す画づくりの粋〜『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(4)ワールドマップ・エフェクト編

    明るく開放的なロケーションに対応したライティング

    前作とは逆方向の引き算の画づくり

    閉鎖的な空間や暗めのロケーションが多かった前作と比べ、明るく解放的なロケーションが多い本作では、明るい場所でキャラクターをどのように見せていくかがライティングにおける大きなテーマとなった。

    「具体的には、前回は暗い中にライトをどんどん追加していって明るくしていくというつくり方。今回は逆に、昼間のロケーションにどう影をつくっていくか、という引き算の考え方でライティングしていきました」(ライティングディレクター・山口 威一郎氏)。

    山口 威一郎氏

    ライティングディレクター

    ワークフローについては、カットシーンのライティングは前作と大きく変わらず、まずはマスターショットとなる数カットを作成し、その後マスターから派生するサブカットにマスターのライトをコピーして仕上げていくというながれ。

    一方簡易イベントにあたるプランイベントでは、ライトの生成・管理をExcelベースで行なっていた前作から刷新、モーション編で紹介したDialogue Editor上での作業となった。ライトの調整も角度などをExcelに記入して行なっていたが、本作ではシーケンサーを使用し、修正が容易になったとのこと。

    『FINAL FANTASY VII REBIRTH』
    発売・開発:スクウェア・エニックス
    リリース:発売中
    価格:9,878円(通常版)
    Platform:PS5
    ジャンル:RPG
    www.jp.square-enix.com/ffvii_rebirth
    © SQUARE ENIX CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI LOGO ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO

    フィールドライティングでは、前作は背景にはライトマップ、キャラクターにはライトプローブと異なるライトベイク手法を用いていたが、本作のような広大なフィールドでライトマップをベイクするのは作業コスト的にもコンテンツ容量的にも現実的ではない。

    そこで、背景もキャラクターと同様ライトプローブでのベイクを採用することとなった。

    「全部プローブとなると、背景だと陰影がかなりフラットになってしまったり、壁の隙間から明るさが漏れてしまうライトリークと呼ばれる現象が起きたりと、いくつかの問題も予想されたのでライトプローブ周りの機能を大幅に強化した上で作業に臨みました」(山口氏)。

    鈴木 美菜子氏

    ライティングプロダクションマネージャー

    また、ENVパートで触れた描画のしくみの刷新に伴い、ライトの灯数に対する負荷が変化。これまでは最適化時にはシャドウONのライトが要点となっていたが、本作環境ではシャドウOFFのライトでもあまりにも広範囲を照らしている場合は要注意となった。

    これに対応したライティング最適化用のデバッグビューを用意してもらいつつ負荷確認を進め、ときにはロケーションの灯数を制限したり、ライトがない場所でも重さの原因がプローブであるケースもあったりと、前作と比べライティングの最適化には大きな労力を割くこととなった。

    ENV班との連携が光るゴールドソーサー

    原作の華々しさを表現することが最大のテーマとなったゴールドソーサー。

    「全体をゴージャスにするのではなく、例えばエントランス付近はコレルからのロープウェイで到着時はやや薄暗い感じで寂しさを出し、途中の通路でゴールドソーサーがチラッと見えたりして徐々に盛り上がっていく、という風に『雰囲気のコントラスト』を変化させています」(山口氏)。

    また、壁・床の多くが幾何学的で汚しのないデザインとなっており、ともするとCG然とした見た目に陥りうる。さらに照明の多くが照明器具ではなく間接照明や壁と一体化したスリット状となっており、当初からENV班とライティング班が密に連携しての制作となった。

    「通常なら背景を制作した上であるべきところに照明を設置していくというながれになりますが、ゴールドソーサーは最初からライティング班と共に『ここには照明を仕込みたいからスリットを入れましょう』などデザイン面も含めて相談して進めました」(エンバイロメントディレクター・三宅氏)。

    「背景の中にライトが組み込まれて分離できないので、ライティング担当者はENV班のデータを触ることになり、作業のバッティングが起きないよう密な連携が求められました」(山口氏)

    ▲UEでのライトの表示。今作のロケーションの中でもおそらく最多の設置数とされる大量のライトで華々しさを演出
    • ▲イベントスクエア
    • ▲ゴーストスクエア
    ▲スピードスクエア。各エリアでライティングのテイストをガラッと変え、それぞれのアトラクションの特徴を引き出している

    コスモキャニオンの天球

    原作の夕景が印象的なコスモキャニオン。天球は増えるほど容量圧迫につながるが、ここは早い段階から分けたほうがいいと判断し、専用の夕方の天球を用意して差別化を図っている。

    ▲コスモキャニオンの夕景とその天球。プレイヤーの間でも印象的な夕日に目を惹かれたという声が多い
    ▲ジュノンの天球。「グラスランドやジュノンの夕暮れはイエロー寄りにして、雲のディテールも強めに出ていますが、コスモキャニオンは赤に寄せて、雲のディテール感よりは色彩に変化をつけて、情緒が出るような天気にしてみました」(山口氏)。一方で、見晴らしが良く遠くまで背景アセットが描画されるため、比較的負荷が高く、またライティングの要素としてもランタンや篝火など種類が限られるために変化をつけづらい面があるなかで、何度もプレイしてロケーションを歩きながら、最も印象的になるように根気強く配置調整がくり返されたという

    ニブルヘイム

    ▲ニブルヘイムのライティングのためのリファレンス。アートや原作資料、「やや彩度を下げて『寂しさ』『侘しさ』を出す」といったライティングに向けたメモ書きなどが集められている
    • ▲開発前半時点でのニブル魔晄炉。本作のストーリーのキーともなる重要ロケーションでありENV班らの作業も早い段階で進行。そのためライティングとしても最も率先して作業を進めたロケーションがニブルヘイムとなったとのこと。ルックについては緑を基調にしながら仕上げていった
    • ▲やや赤みに寄っていたため調整したもの
    ▲完成。「過去回想のニブルヘイムは陰鬱な感じを出すために専用カラコレを用意し、寒色になりすぎないよう彩度を下げて寂しさをみせつつ、原作での緊張感ある雰囲気も再現できるように画づくりをしました」(ライティングプロダクションマネージャー ・鈴木 美菜子氏)
    ▲UEでのライティング作業画面。あまり顔の周辺に光を当てずに情景を表現できないかと、フットライトを活用するなど様々な試みが行われた

    忘らるる都

    忘らるる都はニブルヘイムとは逆に進行上最後発のロケーションとなり、ENV班側の作業の進行に応じつつ段階的にライティングプランを練っていった。ライティングを担当した鈴木氏自身も思い入れが深いロケでもあり、最後までルックの調整をくり返したという。中でも、内部にある水の祭壇は作中屈指の重要イベントが描かれる場所であり、そこを目立たせるための工夫が凝らされている。

    • ▲水の祭壇のライティングイメージをレタッチ
    • ▲モックモデル。この段階で、上部から降り注ぐような光などラフなライティングでルックを模索し始める
    ▲完成した水の祭壇
    DaVinci Resolve上でカラーグレーディング。色の破綻がないようにしつつ、顔への影響・全体の画の締まりなどを意識しつつ調整。LUTを出力してポストプロセスに適用し、ルックを完成させる
    • ▲LUT適用前。「祭壇付近はゴッドレイも入れて一番強め、道中や天球などそれ以外は逆に明るさを落とし、コントラストがわずかに上がる程度に細かく調整しています」(鈴木氏)
    • ▲LUT適用後。ゴッドレイは遠方からも見える必要があり、VFX班と連携して実装している
    ▲水面から投射される光の揺らぎは、フィーラーの大群など処理が重い要素との兼ね合いなどからできるだけ負荷を抑えつつ、コースティクスの美しさを表現するための擬似的な手法を採用
    • ▲コースティクス用テクスチャをライトテクスチャとして設定
    • ▲数種類の深海を模したテクスチャを用いて水面の揺らぎを表現している
    • ▲カットシーンでのエアリスのライティング。忘らるる都の夜のロケーションを用いた、カットシーン用ライトを加えない状態
    • ▲フィットライト、リムライトを追加
    ▲アイキャッチなど仕上げ・微調整を加えて完成。このように、カットシーンではショットごとに最適な見映えになるよう細かく調整されている。「少しずつキーを足して、色々な部分の光や色味の見え方を細かく調整していきます。一番ショックなシーンだからこそ、一番幻想的で美しく見せたいと考えながらルックを探っていきました」(鈴木氏)

    制作を円滑にする各種ツール

    ▲指定したキャラクターを中心に、プリセットしたライトを配置する「3点照明」ツール。作成した段階ではまだ実データではないが、各ライトの位置・強さを個別に編集しながらリアルタイムに結果を確認
    ▲[Create]することで実際のデータとしてシーケンサーに登録される
    モーション編でも紹介したプランイベント作成ツール、Dialogue Editor。カメラと被写体の距離に応じて情報をプリセットしておくことで、ライトが自動作成される。全ショット一括作成のほか、設定を変更しての個別作成も可能。作成したライトは同エディタ内でプレビューし編集できる
    • ▲「MasterShotCreater」ではカットシーンのサムネイルを一覧で表示する
    • ▲カットシーンロード後に同ツールを開くと自動で全ショットのサムネイルキャプチャが始まり、そこからマスターショット・サブショットを指定。全て指定すると1枚の画像が作成され、これを提出してライティング作業に移っていく

    前作ではフィールドの広さが限定されていたこともあり背景はライトマップ、キャラクターはライトプローブを用いてベイクしていたが、本作からはどちらもライトプローブとなった。そこでライトプローブ周りの機能を大幅に強化。

    前作準拠の均等配置だとプローブ数が約27万になるところ、本作仕様ではアセットのディテールに応じてプローブ密度を変更、明るさの変化が少ない箇所は少なく、変化が多い箇所には多く配置することでプローブ数を約4万まで低減。

    さらには分割用ボリュームを追加することで部分的にプローブを増加、または分割を抑える、プローブを削除するといった編集も可能。なおプローブの間隔はおおまかに、街中で約2m、開けたフィールドでは10mほどにすることも。

    • ▲前作準拠の均等配置
    • ▲本作仕様の配置
    ▲分割用ボリューム
    ▲リフレクションの管理手法も変更。前作ではボリュームで範囲を管理していたが、本作ではリフレクション用アクタを用意し、そこからレイキャストしてプローブとコネクション。壁にヒットしたらその先へはつながらないため、室内と室外でのリフレクションの使い分けが容易になった

    現実に合わせた露出

    前作は暗めの室内や人工照明、日中屋外であっても上空はプレートで覆われていたりと、晴天・自然光の多い本作とは真逆であった。本作では太陽光の強さなど現実に準拠した数値を使用し、カメラのEV値も晴天時は14~15、室内なら4~8を目安としている。

    「EVのレンジが広いとライトリークや白飛びを引き起こしやすく調整は大変ですが、ここを偽ってしまうと日陰や室内のGIからのバウンス感が減ってしまい、日中のロケーションが多い本作としては好ましくありません」(山口氏)とのことで、可能な限り現実に即した露出で作業を進めたのこと。

    ただその場合は屋外から屋内を見た場合は真っ暗に、逆の場合には真っ白に飛んでしまうということが起きがちだ。これらが過度な場合にはディレクター要望で露出を調整することもあった。

    ▲屋外から屋内を見た場合
    ▲屋内から屋外を見た場合

    Flow Production Trackingによる管理

    本作でのShotGrid(現・Flow Production Tracking)運用については、これまでの運用に加えて作業に応じたステータスを追加し、現在どのカットがどこまで終わっているかをより明確化。前作よりも効率良くスケジュールを決めていくことができたという。

    ▲カット管理ページの例。ライトのプライオリティを記入する欄(画像中のオレンジ色ヘッダー)を設け、カット数や内容、難易度に応じておおまかに作業日数を割り振り、作業量をランクづけ。プライオリティをあらかじめ設定しておくことで、アサイン計画を立てやすくなり、前作よりもスムーズにカット制作を進めることができたとのこと
    ▲いわゆるフィールドアクションもののギミックもShotGrid上で管理し、ENV班のアセット設定が済めばすぐ把握できるよう通知設定を整備。それを受けての作業やチェックバックなどがスムーズに行えた

    原作の物語を現代風に魅せるカットシーン

    外部スタッフに演出から完成までを委ねる制作フロー

    『FF』シリーズの伝統とも言えるボリューム感のあるカットシーンは、本作でも受け継がれている。一方で、これを担当するカットシーン班では、物量が多いためにこなせない・削ってほしいといった対応はできる限り避け、クオリティを担保しつつ物量もこなすバランスの取れた制作体制を目指してきた。

    また画的なコンセプトとしては、『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』(2005)のルックをリアルタイムで再現するという大目標を設定。さらに、原作を現代風につくり変えるにあたっての配慮も肝となった。

    「原作はポリゴンのカクカクしたキャラクターで演技していて、動きにリアリティがなくても伝わるような作品でしたが、それを現代風にするとき、どのような動きにすればリアルなグラフィックの中で受け取りやすい表現に仕上げられるか、また時代を加味してつくり変えるとどうなるか、といったところを意識して、アクターさんと相談しながら動きをつくっていきました」(カットシーンディレクター・三宅秀和氏)。

    三宅秀和氏

    カットシーンディレクター

    制作体制としては、膨大なカットシーンをつくりきるために外部スタッフの比率が非常に大きくなっており、CG映像制作会社にも協力を仰ぐためゲーム特有の作業が極力不要になるよう技術面を整備。さらに、絵コンテが必要と分類されたシーン以外は演出から担当者に委ね、ひとつのシーンを最初から最後まで同じ担当者で完結できるよう徹底されている。

    「大きなプロダクションやベテランの方ほど、自由ですと言うと戸惑われます。特殊ではありますが、この10年ほど積み重ねてきて有効なやり方だと思っています」(三宅氏)。

    一方で、長らく取り組んできたやり方だけに、変えられるところがあれば変えたいという思いもあるとのこと。今作ではごく一部ながら試験的にBlenderとの連携を実施。熟練のスキルが求められるアクションシーンの絵コンテを、最初からコンテマン自身がBlenderで3Dシーンとして作成、そのままMBに読み込むというフローを試してみたところ、演出内容を絵コンテに落とし込む・絵コンテを読み解いて3Dシーンにレイアウトするという工程なしに素早く進行することができた。

    「素晴らしい才能をもった方がまだまだいると思うので、こういうかたちでより外部パートナーさんの間口を広げて一緒に働くことができる柔軟なフローが組めたら、非常にメリットが大きいなと思っています」(カットシーンCoディレクター・林 淳一氏)。

    林 淳一氏

    カットシーンCoディレクター

    カットシーンの種類

    本シリーズ制作において、ノンプレイアブルなイベントシーンは「ムービー」「カットシーン」「プランナーイベント」に大別される。

    ▲「ムービー」は同社イメージ・スタジオ部が担当。プリレンダリング映像であり、ライト、エフェクトをはじめリアルタイムな処理負荷に左右されない密度感・物量感で表現される一方、武器や装備品などプレイ状況を反映した表現には対応できない
    ▲「カットシーン」はカットシーン班が担当し、リアルタイムで描画される。「ムービー」とは逆に、プレイ状況を反映した表現が可能。本項で解説する
    ▲「プランナーイベント」はクエストなどで採用される会話中心の演出。前号で取り上げたように企画班・モーション班が担当する。簡易的なカットシーンと位置づけられるが、本作では制作フローの改善により一部ではカットシーンに近い仕上がりとなった

    カットシーン制作のながれ

    ▲カットシーン制作フローの大きな枠組みは図のようになる。約700シーンあり、全てに同じ労力を割くのは難しいため5段階にランク分け
    ▲上位ランクのカットシーンは絵コンテを作成し、より高いクオリティが目指される。絵コンテが用意されるのは全体の約3割ほどで、アニメ業界で活躍中のコンテマンが担当する場合もある。絵コンテを描かないシーンは演出から担当者に委ねられ、必要ならカット割や尺の追加など自由度高く仕上げていくことができる
    ▲モーションキャプチャ(MC)後にそれをプリレイアウトする。開発はコロナ禍と重なり、MC収録にはキャプチャスタジオと各スタッフがリモートでやり取りできる環境を構築して対応した。プリレイアウトはMCデータをキャラクターアセットにながし込み、カメラは定点のままセリフがながれる状態にしたもの。この状態でまずゲームに組み込み、ディレクターの浜口直樹氏やレベル班含めゲームプレイとのつなぎや尺感などを確認する。テンポ感を精査した結果セリフが別の場所に移されるといった対応も
    • ▲レイアウト。構成や尺、カメラワーク、セリフのタイミングなどを固め、ゲームへ実装する。またVFX、ライティング、フェイシャル、サウンドなど他セクションとの連携が始まる。実装まではMBMayaなどで作業が進められ、外部協力会社でもこのワークフローを完結できるよう後述するツール化が行われている
    • ▲ここまでで各セクションがUE上で同時並行で作業できる環境が整っており、モーションの仕上げなどを経てカットシーンが完成する

    カットシーン制作ツール

    • ▲本作のカットシーン数は膨大で、確認するだけでも非常にコストが高い。特に開発後期は全セクションが同時並行でクオリティアップに取り組むが、その過程で発生する細々とした問題を早期に発見する必要があり、確認コストの削減が大きな課題となった。アセットビューアは全てのムービー・カットシーン・プランイベントが一覧でき、実機での通しプレイキャプチャも1~2日おきに投稿されるツール。UE上での確認と異なり読み込み待ちもなく、最新の状況を手軽に確認できることからスタッフのモチベーションアップにも貢献した
    • ▲「EdgeCamera」。カメラ制御の補助や、シーン内に複数存在するカメラの管理を効率化
    ▲レイアウト後の実装に使われる「ExportSceneData」。実装以前のレイアウト工程まではMCデータや背景もFBXで用意され、ほとんどのスタッフはSVNに触れずに済むよう整備されている。これにより外部協力会社であってもカットシーンの制作開始からUEへの実装までを、ゲーム開発特有の作業を含まず一般的なCG映像制作と同じように進めることができる。「技術的なところはこちらで引き取りつつ、画的なところは外部スタッフさんで全て完結できる環境を整えています」(三宅氏)
    ▲担当者ごとの作業データはFileManagerで管理される。開発環境とは別にサーバが立っており、MB上から過去ファイルなど作業履歴をたどることができる

    Blenderを活用したアクションシーン

    好感度イベント「LOVELESS」では短い中に3度のアクションシーンがあり、制作コストを下げられないかと模索された。

    「絵コンテを担当したのはアニメ業界の方で、最近Blenderを少し使っていると言っていて。まずはアクションのアイデアをいくつか挙げて採否を整理してから、Blenderで絵コンテの代わりにシーンを組んでもらいました」(林氏)。

    ▲Blenderでの3Dコンテ
    ▲Blender側でキャラクタライズを済ませておくことで、MB側ではそのままキャラクターインプット可能。「Blenderでの3Dコンテにはコンテマンの方が手付けでモーションを入れてくれていて、絵コンテを描いてもらいレイアウトスタッフに3Dのシーンに起こしてもらうのとちがって、演出をダイレクトに3Dデータとして得ることができました。特にアクションでは絵コンテから3Dに起こす際にも尺感やタメツメなど力量が求められるので、かなりの時間短縮かつクオリティアップにつながりました」(林氏)
    ▲MB作業を経て完成したカットシーン。「最近はカメラワークやレイアウトなどアニメでの3D利用も増えて、3Dとアニメとは全然つながらなかった昔とのちがいを感じます」(三宅氏)。「アニメ業界の技術・才能を直接フローに取り入れることができるとわかり、より柔軟で新しい制作フローを組める可能性を感じました」(林氏)

    CGWORLD 2024年8月号 vol.312

    特集:パルワールド
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2024年7月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada