6月14日(金)公開の『数分間のエールを』は、“ぽぷりか” “おはじき” “まごつき” の3名で構成されるHurray!(フレイ)と、100studio(ワンダブルオースタジオ)が共同制作した68分のオリジナル劇場アニメーションだ。Blenderをメインツールにしたことでも注目を集めている本作の舞台裏を、全3回に分けてお届けする。
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INFORMATION
『数分間のエールを』
公開:6月14日(金)
監督:ぽぷりか
副監督:おはじき
アートディレクター:まごつき
脚本:花田十輝
アニメーション制作:Hurray!×100studio
配給:バンダイナムコフィルムワークス
yell-movie2024.com
©「数分間のエールを」製作委員会
作画アニメの後追いをせず、フルコマで綺麗な動きを付ける
アニメーションの多くはモーションキャプチャをベースとしており、ぽぷりか氏とおはじき氏は本作の制作にあたり、共同でPerception Neuronを購入した。この機器は全身に取り付けた小型センサーで人間の動きを読み取るしくみで、おはじき氏の自宅にキャプチャ環境をつくり、ぽぷりか氏がアクターを務めた。特に女性キャラクターは可愛らしい、女性らしい演技に苦労したという。長距離を走る動きなどは近所の公園でキャプチャしており、周囲の子どもたちが遠巻きに見物していたと両名は苦笑いした。
なお、モブの動きと、ライブシーンは100studio側でキャプチャしており、前者はiPhoneの撮影画像からAIが動きを生成するMove AI、後者は光学式モーションキャプチャを用いている。「100studioさんには、"キャプチャした動きを整理した上で、その演技を少し強調してください" とご依頼しました。作画アニメの2コマ打ち、3コマ打ちの動きは、3D映像の中だとカクついて見えるし、作画アニメの後追い表現にしかならないから、フルコマで綺麗に見える動きを目指しました。ただし一部の揺れものなどはコマを抜いた方が気持ちの良い動きになったので、例えば朝屋が全力で自転車をこぐシーンのシャツの袖は2コマ打ちにしています」(ぽぷりか氏)。
Perception Neuronによるモーションキャプチャ
画に感情を乗せるための、飽くなきブラッシュアップ
Hurray!のやり方は一般的なアニメ制作とは大きく異なっていたが、その表現力と技術力には圧倒されたと田中氏は語った。「特に納期直前の2ヶ月間の追い上げには目を見張りました。えぐいスピードで色味や背景、レイアウトが変わっていったので、"これは真似できない" と思いましたが、Blenderで1本の劇場アニメーションをつくるという挑戦に参加できたことは良い経験になりました」(田中氏)。100studioは今後もBlenderを使っていく計画なので、トップクラスの使い手であるぽぷりか氏との仕事は大きな糧になったと森氏も続けた。
Hurray!の3名にとっても、本作は新たな挑戦の場になった。「僕はこれまで2Dと3Dのアニメーションをメインにやってきて、「未明」MVでは従来通り3Dアニメーションをやりましたが、以降は主に背景モデリングを担当しました。納期直前には短時間で背景のクオリティを上げられるようになったので、本作を経験したことで、総合的な地力が上がったように思います」(おはじき氏)。
まごつき氏の場合は、膨大な数のレタッチを経験したことで、画を良くするための道筋を短時間で示せるようになった。「どこを引き算して、どこを強調すれば良いかの判断は、かなり速くなったと思います」(まごつき氏)。
そしてぽぷりか氏は、映像制作に対する認識が一変したと語った。「これまで経験してきた映像制作の世界が、いかに狭かったかを実感した作品となりました。僕の知らない、もっと広くて深い世界があるんだろうという先行きも見えたような気がして、それがすごく楽しかったです」(ぽぷりか氏)。
INFORMATION
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特集:『パルワールド』
定価:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年7月10日
TEXT&EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)
文字起こし_大上陽一郎/Yoichiro Oue