2024年10月よりTBS系列ほかにて放送中のアニメ『アオのハコ』。今回は制作に当たったテレコム・アニメーションフィルムのCGI制作部に詳しい話を聞くことができた。本作では長年の検証を経て、Houdiniを中核とした制作環境が構築、導入されている。こうした制作環境導入の詳しい経緯とねらいをCGI制作部メンバーへの取材を基に紹介したい。
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CopernicusとKineFXの強みを活かして実践で活用
本作ではHoudini20.5の新機能、Copernicusを登場数ヶ月で導入している点にも注目したい。簡易的に素材を合成し、ビューポートで軽快に最終結果に近いものを確認できる「Slap Comp」や、ドット積などを利用したNPR表現など、注目度は高く、バスケットボール、シャトルなど限定的な使用とはいえ非常に短期での導入は野心的だ。現状はベータ版なため不安定さもあったようだが「今まではFusion Studioを経由して合成作業をしていましたが、CopernicusのSlap Compにより高解像度レンダリング前に素早く結果を確認できました。合成までをひとつのツール内で完結させることができるのは、工程を横断することも多い我々の現場に合っています」(高野氏)。
また、アニメーションリードの新井龍二氏は、これまではMotionBuilderをメインに使用しておりHoudini歴は数ヶ月。KineFXではモーションキャプチャデータを扱ってきた経験をそのまま活かすことができ、大量のモブアニメーションを捌くことができたと語る。フルキー打ちのデータの場合、マシンスペックによるとはいえ、ほかのDCCツールでは20体も読み込めば再生に支障がでるところ、Houdiniでは100体超でも再生が可能だった。「KineFXはMotionBulderのSTORY機能と同じく動きのデータをひとつのノードで処理できます。なので、細かく意識せず全部読み込んでおき、必要に応じて時間制御のノードを組み替えて使えるのが大きかったです」と語る新井氏。ちなみに氏はバス釣り愛好家とのこと。
さらにプロシージャルリギングではKineFXとTOPネットワークを組み合わせて効率的にリグを生産。コードを入力できるノードとチャットAIを駆使して大幅な効率化を進めたという。「スクリプトを使用して望んだ処理をノード化できるHoudiniはチャットAIとの親和性が高いと感じます。コードのヒントをもらいつつ作業することでアイデアから実装まで格段に高速化できます。これをTOPに組み込むことで、数十体分のセットアップも大幅に時間短縮できました」(リードデジタルアーティスト・田中慎也氏)。
CopernicusによるNPR表現
昨年7月リリースのHoudini20.5に搭載されたばかりの画像処理フレームワーク「Copernicus」を本作ではいち早く導入。簡易な合成機能「Slap Comp」でのライブプレビューや素材管理がより柔軟になる点が注目された。
KineFXを使ったモブキャラクターのコントロール
Solarisと共にHoudini導入の契機となったKineFXは、アニメーションやリグをプロシージャルに扱うことができ、強力なリターゲティング機能を備える。プロシージャルモデリングと共に大量のモブを表現する際に力を発揮する。「数十、数百体を手作業で編集せず、ノードの値を変更するだけで済むなど、これまで1日かかっていた作業を大幅に短縮することができました」(新井氏)。
オリジナルカメラリグ「原図CAM」
Mayaでのレイアウト作業には通称「原図CAM」と呼ばれる、オリジナルのカメラリグを使用。パイプラインエンジニアの佐伯氏主導で開発が進められている。一見ひとつに見える原図CAMは、内部的には3つのカメラが含まれている。
さらに、作成したレイアウトを基に原図出しから組み上げを行うための別スクリプトも用意されているなど、細かく効率化が図られている。
CGWORLD 2025年1月号 vol.317
特集:韓国CGの今
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年12月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_岸本ひろゆき/ Hiroyuki Kishimoto
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada