2月14日(木)からXFLAG ANIME公式YouTubeチャンネルにて配信スタートとなったアニメ『ファイトリーグ ギア・ガジェット・ジェネレーターズ』(以下、『ファイトリーグアニメ』)。本作のバトルシーンは3Dで表現しており、迫力あるキャラクターアクションやエフェクトが作品を盛り上げている。3Dパートの制作を担うサンライズD.I.D.スタジオを取材した。前編のレンチとクリナの3Dモデル、中編のクロームのガジェットや巨大ロボット バールの3Dモデルに続き、以降の後編ではエフェクトや第1話・第2話カットのメイキングを中心にお届けする。

※本記事は月刊『CGWORLD + digital video』vol. 247(2019年3月号)掲載の「モデル班とカット班、シンプルな2班体制で撮影までカバー ファイトリーグ ギア・ガジェット・ジェネレーターズ」に加筆したものです。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota


▲左から、CGディレクター・赤塚慎一氏、CGプロデューサー・井上喜一郎氏、CGディレクター・佐藤光裕氏(以上、サンライズ D.I.D.スタジオ)


なるべく3ds Max上で設定し、撮影段階の作業負荷を減らす

社内のカット班は7名で、ほかにCG制作管理が2名、CG制作進行が5名おり、多数の外部協力会社と連携しつつカット制作を進めている。第1話の総カット数は159で、その中の84がCGカット。第2話の総カット数は142で、その中の89がCGカットだった。話数によって差はあるが、1話あたりのCGカットの平均は87になる。

前編で解説した通り、カット制作ではCGアニメーターがレイアウトから撮影まで一貫して担当するため、質感もエフェクトも、なるべく3ds Max上で設定し、撮影段階の作業負荷を減らす方針をとっている。「例えば髪やコスチュームのグラデーションはマテリアルで設定し、CG段階でなるべく最終形に近づけるよう心がけています。エフェクトの場合は、矢印・火花・空気砲など、様々なベースのデータをライブラリ化しておき、CGアニメーターが担当カットに合わせて加工したり組み合わせたりできるようにしています」(佐藤氏)。ライブラリ化することで、効率化と、表現の方向性やクオリティの統一化を図っている。また、改変しやすく扱いやすいデータにするため、極力オブジェクトベースで制作し、Particle Flowやテクスチャアニメーションの使用は控えるというルールを敷いているそうだ。

矢印エフェクト

▲矢印エフェクトを作成中の3ds Maxの画面。キャラクターから射出された矢印エフェクトは、軌跡を描いてガジェットや味方に吸収される。この矢印は本作を代表する重要な演出で、原作にも登場する。矢印はオブジェクトで表現しており、アニメーションはPathDeform、消失時の動きはMorpherで制御している。軌跡はパーティクルシステムのSuper Sprayで生成後、Mesherに変換したものをPathDeformで制御し、矢印に追従させている。矢印消失時の粒子は、矢印自体をエミッタにしてPArrayで生成している


▲撮影用素材。【左】は矢印、【右】は軌跡


▲同じく撮影用素材。【左】は消失時の粒子、【右】は先の3つの素材を合成したもの


▲撮影時のAfter Effectsの画面。先の素材と、F's Plugins、Trapcode Starglow、Optical Flaresなどのプラグインの機能を組み合わせ、矢印エフェクトを表現している。矢印のデザインや色はキャラクターごとに異なっており、粒子の色も異なるため、色味の系統ごとにベースコンポを準備している


▲第1話 カット35のマチの矢印エフェクト


▲第2話 カット70のクロームの矢印エフェクト。先のマチとは、矢印のデザインも色も異なる

HITエフェクト

▲弾丸などが当たった際のダメージを表現するHITエフェクトは、作画で描かれた参考イメージを基に制作された。HITエフェクトを作成中の3ds Maxの画面。PArrayでつくった5種類のオブジェクトを組み合わせ、以下のエフェクト素材を制作している

HIT衝撃A:HIT時に出る光衝撃A(PArrayで放射状に飛ばしたオブジェクトに、ForcesのWindをバインドして形状を整え、制御している)
HIT衝撃B:HIT時に出る光衝撃B(HIT衝撃Aのバリエーションちがい)
HIT光線:HIT時に放出された後、収束する線状の粒子(PArrayで生成。ターゲットが異なるだけで、基本的なしくみはHIT衝撃と共通。PArrayの減衰基準を大きめに設定し、縮小アニメーションが認識できるようにしている)
HIT粒子A:着弾点から放射状に広がる粒子(PArrayで生成。ForcesのWindとGravityをバインドして形状を整え、制御している)
HIT粒子B:着弾点から放射状に広がる粒子(HIT粒子Aのバリエーションちがい)

これらのエフェクト素材をMesherに変換し、時間オフセットで調整したものをカットに応じて加工している


▲撮影用素材。【左】はカラー、【右】はライン


▲【左】先の2つの素材を合成したもの/【右】撮影時のAfter Effectsの画面。先の素材と、Optical Flaresなどのプラグインの機能を組み合わせ、HITエフェクトを表現している


▲第1話 カット16のHITエフェクトと、レンチの矢印エフェクト


▲火花・空気砲・矢印・HITなど、様々なエフェクトのベースデータをライブラリ化し、SHOTGUNで管理している

©XFLAG Animation©BNP

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第1話・第2話のカット制作

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第1話 カット12の制作

▲レンチとライバルチームのスモーキースネークシーシャが戦う第1話 カット12の絵コンテ。本作のバトルシーン制作では、絵コンテを基に中島大輔監督らと打ち合わせを行なった後、CGアニメーターがレイアウトから撮影まで一貫して担当するワークフローを採用している。「中島監督が詳細な絵コンテを描いてくださったので、完成形をイメージしやすかったです。打ち合わせの際、CGならではのカメラワークにしたいという話をなさっていたので、カメラがぐるりと回り込むカットにしています。エフェクトも盛りだくさんで、CGの強みを活かした画づくりができました」(佐藤氏)


▲第1話 カット12のアニメーションチェック


▲同じく撮影チェック


▲同じく完成カット。CGアニメーターが最初から良いアクションを付けてくれたので、大きな修正は発生しなかったという


▲【左】カットのチェックは全てSHOTGUNで行なっている。関連動画や画像はノートに添付し、レイアウトから完成までのテイクだけを下から上へ順番に並べるルールにすることで一覧性を高めている/【右】リテイク内容を記したノート。本カットはプロジェクトの最初期に上がっていたが、納品直前の段階でシーシャの口内のマテリアル設定にミスが見つかり、修正することになった


▲XFLAG ANIME公式YouTubeチャンネルで配信中の第1話

第2話 カット48の制作

  • 
レンチとクロームが共闘する第2話 カット46〜48の絵コンテ。「カット48は、絵コンテだとレンチとクロームが真横からのカメラワークで描かれていましたが、真横からだとフェイシャルアニメーションの調整が難しいため、中島監督に相談し、少し斜めから映すカメラワークに変更させていただきました。おかげで表情がよく見えるようになり、画面の奥行きも出せたと思います。さらに撮影段階で画ブレなどを加え、作画に近づける工夫をしています」(佐藤氏)


▲第2話 カット48のアニメーションチェック。この段階では、絵コンテに忠実なカメラワークで表現している


▲同じく撮影チェック。レンチとクロームの顔を少し斜めから映すカメラワークに変更している


▲同じく完成カット。画ブレなどの撮影処理が加わり、より作画に近い画面になっている

第2話 カット65の制作

  • 
フリックコマンダーPH-1による攻撃を、クロームがガジェットで迎え撃つ第2話 カット65の絵コンテ。「残り少ない時間の中で、CGアニメーターが良い仕事をしてくれました。わずかな修正のみでOKまでもっていけたカットです」(佐藤氏)


▲第2話 カット65のアニメーションチェック


▲同じく撮影チェック。先行していた音声に合わせ、カットの最後までクロームの攻撃が続いているように見せるリテイクが出された


▲同じく完成カット


▲XFLAG ANIME公式YouTubeチャンネルで配信中の第2話


インタビューの最後、佐藤氏は今後の抱負をつぎのように語ってくれた。「絵コンテをしっかり読み解き、中島監督や演出さんの意図を理解し、作画に馴染む画づくりをすることが目下の課題であり、抱負でもあります。作画カットとCGカットをなるべく違和感なくつなげ、どんどん本作を盛り上げていきたいです」(佐藤氏)。

本作の制作は第3話以降も着々と進行しており、個性豊かなキャラクターと意欲的なカットが多数登場する。ぜひ、続けて視聴いただきたい。

©XFLAG Animation©BNP

info.

  • 『ファイトリーグ ギア・ガジェット・ジェネレーターズ』
    原作・製作:XFLAG
    監督:中島大輔
    シリーズ構成:冨岡淳広
    キャラクターデザイン:石田智子/鈴木幸江/西村 聡
    美術監督:中村典史
    色彩設計:柴田亜紀子
    撮影監督:貞松寿幸
    3DCG:サンライズ D.I.D.スタジオ
    サウンドプロデューサー:TeddyLoid
    制作:BN Pictures

    毎週木曜日夜8時よりXFLAG ANIME公式YouTubeチャンネルで2019年2月14日配信スタート
    anime.fight-league.com



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.247(2019年3月号)
    第1特集:第1特集:『ReVdol!』(リブドル!)
    第2特集:第2特集:3Dエフェクト最新事情
    定価:1,512円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2019年2月9日