北マケドニア共和国のデジタルマットペインター&イラストレーター、Sara Stanoeska氏は5月25日(土)、自身のArtStationページにパーソナルワークのマットペイント作品「Omen」を投稿。さらに本作でアートコンテスト「The Rookies 2024」にエントリーし、ブレイクダウンを紹介した。
本作は、Photoshopによるデジタルマットペイントと、Nukeによるカメラトラッキング、カラーグレーディング、キーイング、空の置き換え、プロジェクション、エフェクトを駆使したアニメーション作品。ここからは、コンテストページに投稿されたブレイクダウンの内容を紹介していこう。
Stanoeska氏はまず、「荒波」、「ゴツゴツした岩の海岸」、「嵐の空」をプロジェクトのコンセプトに決定し、イメージのライブラリを集めた。
そしてベースフッテージとしてストックフォトサイト「Pexels」から動画を選択。
ここで、当該動画にはカメラやレンズ情報の記載がなかったため、Nukeでの3Dカメラトラッキングは手動でのトライ&エラーを重ねた。トラッキングエラーが少ない設定を見つけてからは、さらなる改善のため、2Dトラッカーからユーザートラックを6つインポート。それでも残ったズレは、プロジェクションノードツリーの最後にあるトランスフォームノード群で修正したという。
続いて、元動画から空をキーイングし、スカイドームのプロジェクションと置き換えた。デジタルマットペイントの要素はPhotoshopで描き、EXR形式でエクスポートし、Nukeに組み込んだ。
Stanoeska氏は、本作で最もチャレンジングかつ楽しんだ部分について「このプロジェクトを進めながらやり方を学んだ、稲妻とフォグのエフェクト」と話す。稲妻はキーアウトした雲のハイライト部分にアニメーションを付けたGradeノードをプラグインし、RotoノードとShuffleノードでエリアを分け、交互に動かした。フォグは、Noiseノードを重ねたカードに投影し、作成した全てのプリコンプの上に加えたという。
その他、投稿ページにはNukeによる静止画マットペイントの習作も掲載。
また、昼間の写真をPhotoshopで夜間のライティングに変更したショットも掲載されている。
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