Epic Games社は11月13日(水)、ゲームエンジン「Unreal Engine 5.5」をリリースした。アニメーションオーサリングとモバイルゲーム開発についての機能強化を中心に、レンダリング、バーチャルプロダクション(インカメラVFX)、デベロッパーイテレーションなど、多岐にわたる新機能や機能改善が盛り込まれている。
ここでは、上記「Unreal Engine 5.5 機能ハイライト」動画のコメントを引用しながら、新機能の一部を紹介する。
インエディタでのアニメーション&リギング
インエディタのアニメーションオーサリングツールでは、さらに強力かつ直感的な操作が可能になり、DCCツールに切り替える手間が減りました。シーケンサーにも多数のアップデートが施され、インターフェイスはコントロールしやすくなり、フィルタリングやプロパティも利用しやすくなりました。
非破壊のアニメーションレイヤーも追加され、アニメート可能なウェイティングが利用できます。
さらに、シーケンサーのキャラクターに対して、コントロールリグからアニメーションデフォーマーを作成し、ワンクリックで適用できます。
MetaHuman Animator用の音声によるアニメーション
昨年リリースされたMetaHuman Animatorでは、俳優の演技からフェイシャルアニメーションを作成できます。今回はそこからさらに拡張を行い、音声だけでMetaHumanにアニメーションを付けて、リアルかつ簡単に仕上げられるようになりました。
録音しておいた音声を選択し、「Process(処理)」ボタンを押せばフェイシャルアニメーションが生成されます。音声さえあればリップシンクまで正確に仕上がります。
様々な言語を使うことができ、フランス語の「bonjour je m'appelle Daryl」は当然のこと、言語以外(咳払いなどの音声)にも対応します。
バッチ処理機能も備えているため、フェイシャルアニメーションを複数言語で作成でき、ローカライズも数クリックで完了します。
アニメーションゲームプレイ
ゲームプレイの面では、Mutableキャラクターカスタマイズシステムを導入し、動的なスケルタルメッシュやマテリアルテクスチャをランタイム時に生成し、メモリ利用も最適化してシェーダ負荷を抑え、ドローコール数を低減しました。
チューザーでは、ゲームのコンテキストに基づいて再生するアニメーションを変更できますが、今回のリリースでプロダクション対応となり、ほぼどのようなアセットも利用可能になりました。
レンダリング
Unreal Engine 5.5では、ハードウェアレイトレーシングなど、レンダリングパフォーマンスの改善に注力しました。Lumenはハードウェアサポートのあるプラットフォーム上で60Hzで実行可能になり、パストレーサーやライトのベイクも活用できます。
プロダクション対応になったパストレーサーはLinuxにも対応し、空の大気やボリュメトリッククラウドなども利用可能です。
ムービーレンダリンググラフは多くのユーザーの要望によりベータに移行しました。あらゆるアセットタイプに対応しています。
そして今回、先取りしてお届けする実験的機能が「MegaLights」です。MegaLightsでは、動的シャドウをキャストする数百ものライトを制限なく追加できます。コンソールとPCで自由にテクスチャを適用したエリアライトに、ソフトシャドウやLight関数、メディアテクスチャの再生、ボリュメトリックシャドウを利用できます。言わば「ライトのNanite」です。
バーチャルプロダクション
このリリースで、インカメラVFXツールセットは完全なプロダクション対応となり、SMPTE 2110やカメラキャリブレーションソルバーなどが利用可能になりました。
バーチャルスカウティングもプロダクション対応となり、OpenXR HMDを活用する、強力ですぐに利用可能な機能を提供するほか、広範囲に対応するAPIで新たなカスタマイズの機会がもたらされます。
一方、カラーグレーディングパネルではポストプロセスボリュームやシネカメラ、色補正範囲をサポートしています。Unreal Editorで一般用途に利用できます。nDisplayだけではありません。
モバイルゲーム開発
プラットフォーム面では引き続きモバイルに注力し、モバイルとクロスプラットフォームのAAAタイトル開発で最高のエンジンとすべく取り組んでいます。
Mobile Forward Rendererの視覚的忠実度が向上しています。Mobile Previewerにも複数の改善が施されています。キャプチャ機能や特定のAndroidデバイスプロファイルのプレビュー、半精度(16)浮動小数点数シェーダのエミュレーションなど、アーティファクトが処理しやすくなっています。
開発向けイテレーションツール
最後に、今回のリリースで開発向けのイテレーションツールがプロダクション対応となりました。Unreal Zen Serverを使用して、共有DDCやUnreal Zen Loaderのほか、Unreal Build AcceleratorやUnreal Hordeをデプロイできます。同時に、新たな実験的機能では、Zen Serverからクックされたデータをコンソールからモバイルまでストリーミングできます。
その他、全更新内容はこちら。
■Unreal Engine 5.5 がリリースされました(公式ブログ)
https://www.unrealengine.com/ja/blog/unreal-engine-5-5-is-now-available
■Unreal Engine 5.5 リリース ノート
https://dev.epicgames.com/documentation/ja-jp/unreal-engine/unreal-engine-5.5-release-notes
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●シリコンスタジオ、Unreal Engine 5用の高品質なレンズ効果表現プラグイン『YEBIS Biz』の提供を開始
シリコンスタジオ株式会社はUnreal Engine 5による3DCGアニメーションコンテンツで高品質なレンズ効果を表現できるプラグインツール『YEBIS Biz(エビス ビズ)』の提供を開始。動作環境はWindows版Unreal Engine 5.3、DirectX 12。価格は年間50万円(税別)、5端末のライセンス契約となる。
https://cgworld.jp/flashnews/202410-YebisBiz.html