モスバーガーを展開するモスフードサービスが「新とびきりトマト&レタス ~和風ジンジャーソース~」を5月中旬までの期間限定で発売中だ。それと同時に実施したのが、新商品をリアルに再現したアロマディフューザー「トマレタジンジャーアロマ」のプレゼントキャンペーン。予想以上に反響が大きかったからなのか、キャンペーン終了後にアロマディフューザーのSTLデータを無料で公開するというサプライズを披露した。クリエイターの遊び心を刺激するユニークな試みを概観する。

3Dモデルやモーションデータを無料で配布するプロモーションはコンスタントに見受けられる。最近では、TVアニメ『しかのこのこのここしたんたん』がOP『シカ色デイズ』のYouTube2,000万回再生突破を記念して、ツインエンジンのBOOTHでモーションデータの無料配布を実施したことが記憶に新しい。

そして、モスバーガーを展開するモスフードサービスが新商品の発売記念キャンペーンとして制作したノベルティ「トマレタジンジャーアロマ」(アロマディフューザー)のSTLデータを無料で公開したのは先述した通りだ。

民間企業による3Dプリントを用いたキャンペーンは、ひさしぶりではないだろうか。記憶に残っているものでは、無印良品とPARTYがコラボレーションした「mini to GO」(無印良品の旗艦店に設けられた特設ブースで購入者の3Dスキャンを行い、そのフィギュアをプレゼントする企画)や、Perfumeがメンバー3人の3Dデータ(.obj)を公式サイトで公開したことだが、どちらも2013〜2014年の実施という、当時盛り上がりをみせていた3Dプリンターブームを受けての企画だったと言える。もちろんその後も3Dプリンティングを絡めた企画は実施されていたはずだが、世間的にも注目をあつめたという意味では恐縮ながら筆者は思い浮かばなかった。

2013年にPerfumeが彼女たちのグローバルサイトで実施した3Dデータ無料配布キャンペーンとの連動で制作されたプロモーション映像。手がけたのは、小張秦洋氏(Triple Additional

CGWORLDはデジタルアーティストをはじめとするクリエイター向けメディアであり、小生もマーケティングのスペシャリストではないので今回のトマレタジンジャーアロマのSTLデータ公開の反響が大きかった理由については識者に委ねたいと思う。強いて挙げれば、ハンバーガー(のノベルティ)とSTLデータという意外性と、サプライズの企画だったことが、好意的に受け止められたのではないだろうか。

3Dプリンター立体造形出力サービスを提供する「立体造形工房」がYouTubeで公開した動画。フルカラーUV硬化インクジェット方式3Dプリンター「MIMAKI 3DUJ-553」を使って、バンズ9cmのリアルスケールとバンズ約4.8cmの1/4スケールで出力した過程を紹介している

今回のSTLデータ公開を受けて、多くのSNS投稿が行われているが印象的なものを紹介しよう。

縫い物やクラフト、デジタルファブリケーションに関するポストを行なっている「洋裁師アン✂創作研究家」のポストより。Bambu Lab P1Sで出力したそうだ
れんじ/Renji3D氏のポスト。コスプレ用途など、3Dプリンターで様々な造形制作を行なっているという


e1ght3のポスト。FBXに変換したデータをVRプラットフォーム「Resonite」に持ち込んでみたそうだ。ソーシャルVRが着実に浸透していることが大きな反響につながったのかもしれない


UTSUBOのCTO Renaud氏のポスト。流体シミュレーションをかけてみたそうだ
プロダクトデザイナーとして活動するMITSUKI氏のポスト。STLデータを使ってキャラクター化。さすがは本職である

CGWORLD関連情報

●シマエナガの愛らしさを、フォトグラメトリと3Dプリントで忠実に再現 累計1,000個販売されたフィギュアの制作裏話から考える、3Dプリンタの可能性

昨年東京・上野の国立科学博物館(以下、科博)にて開催された特別展「鳥」では、普段は一般公開されない貴重な標本を含めた全600点以上の鳥類の展示物が公開され、連日多くの来場者で賑わった。



そんな特別展「鳥」の「ウェルカムバード」を務めたのは、雪の妖精と称される白くて丸く小さな鳥、シマエナガの剥製標本だ。物販ではこのシマエナガを象ったフィギュアが大きな人気を博し、SNSでも話題を集めた。



実はこのシマエナガのフィギュアは、ウェルカムバードとして展示されていたシマエナガの剥製標本を3Dスキャンし、ミマキエンジニアリングのフルカラー3Dプリンタで出力されたものだ。この新たな試みがどのように実現したのか、特別展「鳥」およびシマエナガのフィギュアの制作に携わったメンバーに話を聞いた。
https://cgworld.jp/special-feature/2503-mimaki-shimaenaga.html

●日南クリエイティブベースが進める、工業デザイン分野での未来を見据えたAI活用

月刊 『CGWORLD + digital video』vol.314(2024年10月号)掲載の特集「3Dビジュアライゼーションの最前線」から、PART 02-1 日南クリエイティブベース[工業デザイン]を転載する。



日南クリエイティブベースでは2023年初頭からデザイン工程にAIを取り入れ始め、現在では進行中の全てのプロジェクトで画像・文章・音楽などの生成AIサービスを活用している。2024年9月には書籍『With AI』を上梓したデザイン本部長の猿渡義市氏に、AIの役割を語ってもらった。
https://cgworld.jp/article/202501-nichinan.html

●海洋堂 デジタル造形移行への挑戦(1)宮脇センム&宇野先生が語る挑戦の軌跡

2024年に設立60周年を迎える海洋堂は、国内フィギュア制作のパイオニアであり、世界トップレベルの造形師たちと共にフィギュア文化を社会に根付かせた。そんな同社の宮脇修一氏(通称:センム)は、2021年4月に宇野智浩氏(通称:宇野先生)を造形グループの番頭役として招き入れ、「全ての造形師を1年以内にデジタルへスイッチせよ!」と指示した。両氏はいつ出会い、センムはなぜ宇野先生に造形グループを任せたのか、変遷を語ってもらった。

https://cgworld.jp/article/202401-kaiyodo-1.html

TEXT_NUMAKURA Arihito