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MVN Linkは17個の慣性センサーを搭載したフルボディスーツで、自社の会議室などでのモーションキャプチャも可能な手軽さが魅力だ。Wii UのRPGゲーム『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』では、約20km四方の広大なオープンワールドに点在する、多彩なキャラクターのアニメーション制作にMVNが活用されている。本作に携わったモノリスソフトに話を伺った。

一般的な人型のキャラクターはもちろん、様々な体型をもつ異星人のアニメーションにもMVNが活用されている

本作のアニメーター全員がMVNを着用

『XenobladeX』の制作時には、アニメーターやプランナー自身がMVNを着用し、社内にある会議室でモーション収録が行われた。役者や武道経験のあるプランナーの安藤氏は、上のようなアクション性の高い動きを中心に担当している

――『 XenobladeX』の開発は、いつ頃スタートしたのでしょうか?

高見典宏氏(以下、高見): 2011年です。その前年にMVNの存在を知り、試験導入を経て、購入を決定しました。現在は最新型のMVN Link 2台を所有していますが、本作の開発には旧型のMVNを使用しました。

藤田泰弘氏(以下、藤田):「 MVNなくして、本作は完成しなかった!」と断言できるくらいフル活用しました。とは言え、いくつか不満点もあったのです。MVN Linkでは、それらが見事に解消されていて驚きました(※注)。

注:2014年11月にXsens MVNはメジャーアップグレードし、最新のジャイロ(角速度)/地磁気/加速度センサーが搭載された。これによりさらなる精度と安定性の向上を実現。また、新たに気圧センサーも搭載されたため、高さ情報も取得できるようになった。
詳細はこちらhttp://cgworld.jp/feature/1412-0c7-newmvn.html

本部 徹氏(以下、本部): 新たに搭載された気圧センサーのおかげで、信頼できる高さ情報の計測が可能になりました。スーツのデザインが見直され、個々のセンサーの取り外しが簡単になった点も嬉しいです。

岡安暢彦氏(以下、岡安): おかげで洗濯が楽になりましたね。本作ではアニメーター全員がMVNを着用したので、"着る人が変わるたび洗濯する"ことをルールにしていました。アニメーターにとって、MVNは凄く良いオモチャのようなもので、収録はいつも楽しかったです。

【左写真】最新型のMVNには気圧センサーが搭載されており、信頼できる高さ情報の計測が可能になった【右写真】フルボディスーツのデザインも見直され、個々のセンサーを簡単に取り外せるようになった

――アニメーターに加え、安藤さんのようなプランナーもMVNを着用されたそうですね。

安藤 宏氏(以下、安藤): 私は役者や武道の経験があったので、アクション性の高いキャラクターを中心に担当しました。役者経験がない人でも、普段の動きが面白かったり、本人が興味を示せば、職種を問わず着用してもらいました。最終的には15人前後のスタッフが、"アクター(アクトレス)"になりましたね。

岡安:「 このキャラクターの中の人は自分だ(笑)」と言い合うのが、一時期社内で流行りました。ほかのアニメーターやプランナーと一緒に、その場でアイデアを出し合いながら動きをブラッシュアップしていくというプロセスが凄く新鮮で、ワクワクしました。

藤田:モニターに表示されたデータではなく、目の前で演じる人の動きに対して意見を出し合えたので、踏み込んだ意見のすり合わせができたのに加え、時間短縮にもなりました。

アニメーションリーダーの藤田氏が、プランナー兼アクターの安藤氏に演技指導をしている。このようにMVNなら、アニメーターやプランナーが実際に身体を動かしながらアイデアを出し合い、動きをブラッシュアップできる

最低限のクオリティのアニメーションなら半日で調達可能

――一方で、本作は光学式のモーションキャプチャも使用したそうですね。

高見:繊細なニュアンスの表現や、高い映像クオリティが求められるアニメーションの場合は、社外のモーションキャプチャスタジオを使い、プロのアクターを手配して収録しています。2回に分けて、合計で4日弱を要しました。

本部:光学式の場合、スタジオを予約して、アクターのスケジュールを確認して、収録計画をたて、リハーサルをして、本番収録をして、キャプチャデータのノイズを消して......といったプロセスが必要になります。時間はもちろん、相応のコストも要するので、気軽に何度も収録できるものではありません。

藤田:とは言え、本作には何百という膨大な数のキャラクターが登場すると開発当初から決まっていたので、なるべくモーションキャプチャを活用し、ゼロから手付けするキャラクターの数を減らすことが必須でした。

アニメーターの岡安氏がMVNを着用し、異星人の動きを演じている。「コミカルな動きを導入したかったので、モーションビルダーの典型的なポーズを真似ています」(岡安氏)

――アニメーションの内容に応じて、光学式、MVN、手付けを使い分けたということですね。

岡安:終わってみれば、"地球人"のキャラクターはもちろん"異星人"に対しても、人型であればプロポーションを問わずMVNのデータを適用できたので、かなりの効率化が実現しました。

安藤:自分で社内の会議室を予約し、MVNを着用し、データを収録するというシンプルな工程なので、最低限のクオリティのアニメーションなら、半日後にはMaya上で確認できました。

藤田:" 最低限のクオリティ"でも、手付けだとそれなりの時間が必要です。それを短時間のうちに調達できるようになったので、ゲームに組み込むまでの時間も短縮でき、開発の試行錯誤をする余裕が生まれました。

高見:まずは必要とされるだけの数を揃え、余裕があれば動きをブラッシュアップしたり、追加収録をしたりといった柔軟な体制がとれたのはMVNのおかげと言えるでしょう。

POINT 01
モーションを分割して収録しMaya上で補間




図は、剣を構えA、空中で連続回転斬りをしてB、着地するCまでの一連のモーションの収録風景だ。「Dのような実際に体現できないゲーム的な動きは、全体をいくつかに分割して収録します。それらを後ほどMaya上でつなげて補間し、Bの回転部分を手付けすることで、ゼロから手付けするよりも短時間で、説得力のあるアニメーションを表現できるのです」(安藤氏)

POINT 02
様々なプロモーションの"異星人"にモーションを適用



岡安氏は、様々なプロポーションの"異星人"の動きを、数多く担当したという。「プロポーションがちがったとしても、当社オリジナルのリグにより、ある程度は自動的に補正できるようにしました。画像左のように片足でバランスをとる動きを手付けで表現するのはすごく難しいのですが、MVNを使うことで自然な動きが短時間で収録できました」(岡安氏)

TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

  • 製品紹介 MVN
    社内の人員だけで対応可能なモーションキャプチャ

    MVNはカメラやスタジオを必要とせず、社内の会議室でも使用できる。アニメーターやプランナー自らが着用し、アイデアを出し合いながらアニメーションの細部を検討することも可能なシステムだ。

    ●お問い合わせ先
    ゼロシーセブン株式会社
    システムソリューション事業本部(担当:池田)
    〒107-0052 東京都港区赤坂7-9-7 Barbizon74 7F
    TEL:03-3560-7747 /FAX : 03-3560-7748
    E-MAIL:info@0c7.co.jp
    http://www.0c7.co.jp/

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