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Question 3:What is Computer Animation Festival?(コンピューターアニメーションフェスティバルについて教えてください)

Question 3:What is Computer Animation Festival?(コンピューターアニメーションフェスティバルについて教えてください)

本連載では2018年12月4日(火)∼7日(金)に東京国際フォーラム(有楽町)で開催されるSIGGRAPH Asia 2018の価値を、SIGGRAPH Asiaを愛するキーマンたちに尋ねていく。2018年5月現在、公式サイトでは各プログラムの応募を受付中で、6月∼8月にかけて段階的に応募締め切りが設定されている。第3回ではComputer Animation Festival(以下、CAF)のChair(チェア)を務める塩田周三氏と、その運営を担当する谷 加奈子氏(共にポリゴン・ピクチュアズ)に話を伺った。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

SIGGRAPHは、最も密度の濃いネットワーキングができる

▲左から、谷 加奈子氏、塩田周三氏。谷氏はCAFの運営を担当し、塩田氏はCAFのチェア(審査委員長)を務める


CGWORLD(以下、C):神戸で開催されたSIGGRAPH Asia 2015に続き、塩田さんと谷さんはSIGGRAPH Asia 2018でもCAFを担当なさいますね。手始めにお2人がSIGGRAPHやSIGGRAPH Asiaとどう関わってきたか、お話いただけますか?

塩田周三氏(以下、塩田):僕の初参加はロサンゼルスで開催されたSIGGRAPH 97です。ドリーム・ピクチュアズ・スタジオ(※1)の立ち上げに合わせて人を集める必要があったので、リクルーティング目的で参加しました。そのときは会場にブースを出さず、ホテルのスイートルームを借りてひたすら候補者の面接をしていました。それ以前からポリゴン・ピクチュアズはCAFへの応募を行なっており、Electronic Theaterに選出された年もありました(※2)。SIGGRAPH 2006ではジョブフェアにブースを出したりもしましたね。そうこうするうちに業界関係者とのネットワークが構築され、SIGGRAPH 2004と2005、SIGGRAPH Asia 2012と2014ではCAFの審査員をやりました。SIGGRAPH Asia 2015の開催地が神戸に決まったとき、谷も僕も兵庫県出身ですから、「やらなあかんやろ」という思いで僕はCAFのチェアをやり、谷は運営をやったわけです。

※1 ナムコ、ソニー・コンピュータエンタテインメント、ポリゴン・ピクチュアズの出資によって1997年に設立された3DCG制作会社。1999年に解散。

※2 つぎの5作品がElectronic Theaterに選出されている。『シドニアの騎士』(SIGGRAPH ASIA 2014)、『Hifana プロモーションビデオ HANABEAM』(SIGGRAPH 2010)、『Polygon Family 2』(SIGGRAPH 2002)、『CROCOTIRES Traction AAA』(SIGGRAPH 2000)、『In Search of Performing Axis』(SIGGRAPH 92)

  • 塩田周三
    Computer Animation Festival
    Chair

    兵庫県出身。幼少期の9年間をアメリカで過ごし、上智大学法学部国際関係法学科を卒業。新日本製鐵を経た後、ビジネス・コンサルタントとしてポリゴン・ピクチュアズのコンテンツ企画を担当。1999年よりポリゴン・ピクチュアズに所属し、2003年に同社代表取締役に就任。神戸で開催されたSIGGRAPH Asia 2015に続き、SIGGRAPH Asia 2018でもCAFのチェアを務める。SIGGRAPH 2004、2005、2018、SIGGRAPH Asia 2012、2014ではCAFの審査員、SIGGRAPH Asia 2016ではコチェアを務めている。


谷 加奈子氏(以下、谷):「地元の神戸でやるなら、何か手伝わせてください」とお願いしました。そしたら意外とやらなきゃいけないことがあって、色々と関わらせていただきました。

  • 谷 加奈子
    Computer Animation Festival
    Producer

    兵庫県出身。ポリゴン・ピクチュアズでは制作支援室で制作支援グループリーダーおよびラインプロデューサーを務める。神戸で開催されたSIGGRAPH Asia 2015に続き、SIGGRAPH Asia 2018でもCAFの運営を担当。


塩田:神戸以降はSIGGRAPH Asia 2016でコチェアをやり、SIGGRAPH Asia 2017ではアドバイザーをやり、SIGGRAPH 2018では審査員をやっています。そしてSIGGRAPH Asia 2018で再びチェアをやることになりました。

:神戸の経験を通して色々なノウハウを得られたので「東京でも何かお手伝いしたい」とお願いしました。ポリゴン・ピクチュアズの部活動のような位置付けで、手を挙げてくれたほかの社員と一緒にCAFを運営しています。

C:塩田さんは20年近くSIGGRAPHと関わってきたわけですが、日本のCGプロダクションにとって、SIGGRAPHと関わることはどんなメリットがあるのでしょうか?

塩田:SIGGRAPHは世界最大のCGの学会であり、作品発表の場でもあり、展示会でもあります。だから世界中のインダストリーとアカデミックの関係者が集まります。超ベテランもいれば、学生もいますから、最も密度の濃いネットワーキングができます。そこで何らかのプレゼンスを出し続けていれば、人材誘致の面でも、認知度向上の面でも効率がいいんですよ。

▲バンコクで開催されたSIGGRAPH Asia 2017CAFのオープニングセレモニーの様子。【左】チェアのJuck Somsaman氏(The Monk Studios)(写真左)と、コチェアのPrashant Buyyala氏(Oriental DreamWorks(現、Pearl Studios))(写真右)/【右】SIGGRAPH Asia 2018の紹介をする塩田氏
image courtesy of ACM SIGGRAPH


C:「常に何らかのプレゼンスを出す」ことを意識的になさっているわけですね。

塩田:はい。CG業界はそれほど広い世界ではありませんから、続けていれば多くの人に認知されます。今では一定年齢以上のベテランにはポリゴン・ピクチュアズの名が浸透していると思います。

「業界関係者への売り込みの場」として、CAFを活用してほしい

C:SIGGRAPH Asia 2018のCAFの応募締切(7月15日(日)23:59)が迫ってきましたが、日本からの応募は増えると思いますか?

塩田: Screenings(※3)の応募は例年400件くらいありますが、SIGGRAPH Asiaと言いつつ、欧米からの応募が半数以上を占める状況が続いています。日本はもちろん、アジアからの応募が増えることを願っています。

※3 審査を経て選出された作品はAnimation Theaterで上映される。また上位の作品(例年25作品程度)は2時間のパッケージにまとめられ、Electronic Theaterで上映される。さらにその中の優秀作品には、Best in Show、Jury Award、Best Student Filmなどのアワードが贈られる。

▲SIGGRAPH Asia 2017 - Computer Animation Festival Trailer


▲【左】「Best in Show」に選ばれた『AFTERWORK』の授賞式の様子。本作はMATTE CGUSON STUDIOが手がけたショートフィルムで、スペイン、エクアドル、ペルーのアーティストの協力を得て、約3年がかりで制作された/【右】受賞者を称えるSomsaman氏とBuyyala氏
image courtesy of ACM SIGGRAPH


▲【左】受賞者によるスピーチの様子/【右】観客席の様子
image courtesy of ACM SIGGRAPH


:特に最近はフランスやドイツの学生作品が存在感を増していますね。

C:確かにSIGGRAPH Asia 2017のAnimation Theaterでは、学生作品の上映枠である「Rising Stars - Student Films」をほぼその2国が独占(※4)していましたね。

※4 「Rising Stars - Student Films」に選出された21作品のうち、16作品はフランス、4作品はドイツ、1作品はアメリカからの応募だった。

塩田:ほかの国からの応募もあるのですが、フランスとドイツの学生作品のクオリティが抜きん出ていますね。ともすればBest in Showにもなりかねないレベルの高さです。実際、SIGGRAPH Asia 2017のBest Student Filmに選ばれた『Garden Party』は、アカデミー賞にもノミネートされています。彼らが所属する学校の多くは大学院的な位置付けなので、どこかのCGプロダクションで仕事をした人が、「学生」として学び直しに来ているケースが多いです。しかも時間をかけて、5∼6人のチームでつくるので、彼らと真っ向勝負をするのは結構厳しいと思います。

▲【左】「Best Student Film」に選ばれた『Garden Party』の授賞式の様子。本作はMoPA(フランスのCGアニメーションスクール)に通う6人の学生が、約9ヶ月をかけて制作した。詳しくは本作のWebサイトを参照してほしい/【右】受賞者を称えるSomsaman氏とBuyyala氏
image courtesy of ACM SIGGRAPH


▲【左】受賞者によるスピーチの様子/【右】スピーチを見守るSomsaman氏とBuyyala氏
image courtesy of ACM SIGGRAPH


:この傾向はSIGGRAPH Asiaだけでなく、SIGGRAPHでも共通しています。その背景には自校の学生を業界関係者に売り込むため、各学校が組織的に応募を奨励しているという実情もあります。日本の学校でも「業界関係者への売り込みの場」として、CAFを活用いただければと思います。

塩田:もちろん学校に限らず、日本のスタジオや会社にとってもCAFはいい売り込みの場だと思います。国内外の業界関係者が一堂に会しますから、自社の技術力や表現力をアピールするいい機会になるでしょう。「このスタジオとコラボしたい!」と思わせるような作品の応募を期待しています。SIGGRAPH AsiaはSIGGRAPH以上に2Dライクなデジタルアニメーション作品が選出されやすい傾向にあるので、日本のCGプロダクションにとっては有利だとも思います。僕は両方のCAFで審査に関わってきましたが、SIGGRAPH Asiaの審査員の方が2D表現に対する理解があるように感じています。

若手の作家たちは「レトロ」なCGの再利用を始めている

C:Screeningsの審査員はどのような方々で構成されているのでしょうか?

塩田:審査員はまだ公表していませんが、全部で7人おり、女性4人、男性3人で構成されています。今回はジェンダーや年齢のバランスをとることを意識しました。1番若い審査員はまだ20代で、過去のSIGGRAPH Asiaに複数回選出されている人です。少し話が逸れますが、Ars Electronica Festival 2017のAnimation Festivalで審査員をやった際、結構ショックなことがありました。その審査の席で、20代の若手と、30代の中堅や40代のベテラン審査員の意見が驚くほどちがったのです。そのとき初めて知ったのですが、CGの世界にさえ「レトロ」というカテゴリが生まれているようなのです。例えばファッションの世界だと、60年代、70年代のスタイルをクールだと捉える風潮がありますよね。CGにおいても、僕らから見れば「ださっ」と思うような80年代、90年代のカクカクした表現が、若手には「クールだ」と思われているのです。

C:つまり『Polygon Family 2』(2002)はクールだと(笑)。

:そうなりますね(笑)。

塩田:今までのCGは、新たな技術、新たな表現というように、常に新しいものを良しとしてきました。しかし最近は技術でもって人々を「あっ」と驚かせることが難しくなっています。CAFなどの審査においても、僕らはそれを痛感しています。だからストーリーテリングなどにもフォーカスし始めて久しいわけですが、ここに来て、若手の作家たちは80年代、90年代の「レトロ」なCGの再利用を始めているのです。僕らから見れば2秒で「アウト」だと思うような作品に対し、若手の審査員が「この作家はこういう人で、この表現にはこういう背景があり、この技術をこのように利用している」といった解説をするのを目の当たりにして、「いかんな」と思いました。

C:30代、40代の審査員だけでは、若手作家の作品を評価しきれないと......。

塩田:そうです。だからSIGGRAPH Asia 2018では受賞歴のある20代の審査員も入れ、若手の意見が反映されるようにしました。CAFではその時代、その年の最もイケてるCG作品を選ぶべきだと思いますが、CGの技術が成熟すればするほど、「何がイケてるのか」という評価が一筋縄ではいかくなってきています。

▲【左】SIGGRAPH Asia 2015Electronic Theaterの待機列/【右】Electronic Theaterの様子。日本からは『Blue Eyes -In HARBOR TALE-』『Flaw』『TOKYO COSMO』の3作が選出された
image courtesy of ACM SIGGRAPH


▲【左】SIGGRAPH Asia 2015のElectronic TheaterのPre Showの様子。真鍋大度氏(Rhizomatiks)が演出を担当し、ダンスカンパニー elevenplayとドローンの共演が披露された
image courtesy of ACM SIGGRAPH


▲SIGGRAPH Asia 2015のAnimation Theaterの様子。「Rising Stars - Student Films」「Shorts & Features」「Game, Science, Music & Visual Effects」など、いくつかのカテゴリに分けて上映された
image courtesy of ACM SIGGRAPH


C:Screeningsの応募時には、作品のコンセプトなども記述するのでしょうか?

塩田:はい。加えて、作者は誰か、学生作品か否か、どんなツールを使ったか、どんなストーリーか、どんな手法でつくったかなども記述いただきます。僕の場合はそれを読んでから作品を視聴します。審査員の中には、先に作品を見る人もいます。Electronic Theaterの場合は、VFX、コンピューターアニメーション、サイエンティフィック・ビジュアライゼーションなどの多彩なジャンルの映像作品を2時間のパッケージにまとめるので、物語性、リズム、表現の面白さ、技術などを通して、人々の心が動くかどうかを見ています。さらに何らかの面白い試みをしている場合は、それも考慮します。ただ、最近は制作手法がすごく多様化しており、例えば全編リアルタイムCGでつくっていたとしても、言われなければわからないというケースが多々あります。特筆すべき制作背景がある場合は、応募書類の中でしっかりアピールした方がいいと思います。

:SIGGRAPH Asia 2015でBest in Showに選ばれた作品は、まず3DCGでシーンをつくり、それを3Dプリンターで出力し、ストップモーションのアニメーション作品として仕上げたものでした。物語やリズムの素晴らしさに加え、一般に普及し始めたばかりの3Dプリンターを個人作家が活用したという背景や、3DCGとストップモーションの融合による独自の表現力も評価されての受賞となりました。

C:そういう複雑な制作背景の場合は、説明してもらわなければ汲み取りきれないですね。

塩田:SIGGRAPH AsiaはCGの学会ですから、どういうテクノロジーが駆使されているかという点は必ず見ています。

C:作品の尺はどの程度が望ましいですか?

塩田:10分以内が望ましくはありますね。長い作品だと、どんなに良くてもElectronic Theaterというパッケージの中に収めきれません。

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