記事の目次

    ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は、いつもの1体に特化した造形ではなく、ストーリーを感じさせるワンシーンを造形します。

    TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)



    ストーリー性のある造形

    今回は1体を作るのではなく、ストーリー性のあるものにしました。まず最初に、全体のラフを作成して構図のイメージを定め、ディテールを加えていきます。基本的にラフから詳細への作業は、1体でも、複数体でも変わりません。いつもより可愛げのある作品に仕上がったと思います。

    主要な制作アプリケーション
    ・ZBrush 2019
    ・Adobe Photoshop CC 2019
    ・KeyShot 8

    STEP 01:簡単なスケッチを準備する

    今回はiPadではなくPhotoshopでデザイン画を用意します。スカルプトのイメージを固める程度なのでラフに仕上げます。

    STEP 02:猿を作成する

    ざっくりでいいのでまずは猿を作成します。何となくそれっぽいかな? というくらいのスカルプトで作成していきます。


    • 【1】いつものようにSphereを出します

    • 【2】体の形状を作ります


    • 【3】四肢、顔の作成をします

    • 【4】顔のスカルプトをします


    • 【5】目、鼻、口を作っていきます

    • 【6】帽子を作成します

    STEP 03:小物を作成する

    全体のパーツを揃えるために、岩や山などを作成します。ここでもディテールよりもまずはざっくりなバランスを決めることを意識します。


    • 【1】猿が座っている岩を作成します

    • 【2】湖を作成します


    【3】山々を作成します


    • 【4】猿が持つ竿を作成します

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    STEP 04:ウツボのような生き物を作成する

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    STEP 04:ウツボのような生き物を作成する

    猿が釣り上げているウツボのような巨大生物を作成します。Sphereを伸ばし、全体を一気に作成していきます。顔が猿の方を向いているところや、身体のねじれなど動きのバランスを意識します。


    • 【1】Sphereから全身を作成します

    • 【2】ざっくりと棘のイメージを付けます


    • 【3】ねじれ具合を確認します

    • 【4】湖から出ている植物を作成します

    STEP 05:全体を詳細に作り込む

    ここまで作成した全体のモデルのディテールを作成していきます。見える部分、見えない部分の必要性を考えながら効率良く進めます。


    • 【1】猿の上半身を詰めます

    • 【2】顔周りを細かくしていきます


    • 【3】正面からも確認します

    • 【4】下半身を詰めていきます


    • 【5】服を作成します

    • 【6】岩のディテールを付けます


    • 【7】巨魚の体の立体感を出していきます

    • 【8】巨魚の顔のディテールを作成します


    • 【9】背びれを作成します

    • 【10】植物のディテールを作成します


    • 【11】体表にディテールを入れていきます

    • 【12】より細かくしていきます


    【13】全体を表示して確認します

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    STEP 06:より細かいディテールを加える

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    STEP 06:より細かいディテールを加える

    全体を確認しながらより細かく作り込んでいきます。目に止まりやすい場所を重点的にスカルプトします。


    【1】より表情が分かりやすくなるようスカルプトします


    • 【2】側面も整えます

    • 【3】要所要所にエッジを立てて完了です


    • 【4】水の動きをブラッシュアップします

    • 【5】服もより細かく造形します


    【6】全体のディテール作成が完了です

    STEP 07:ポリペイントで色を加える

    ZBrushのマスク機能を使いながら、色味を加えていきます。メインカラーをまず決め、徐々に色幅を増やしていきます。


    • 【1】ざっくりと巨魚のメインの色味を作っていきます

    • 【2】キャビティマスク(MaskByCavity)を使って溝との色幅を増やします


    • 【3】猿の服と体を区別して色を塗ります

    • 【4】差し色として赤を加えながら確認していきます


    【5】最後に全体を確認して完了です

    STEP 08:KeyShotでレンダリング&Photoshopで調整

    今回少し可愛げのあるテイストということもあり、影を強めにすると全体が重々しくなってしまうため、全体的には明るめであっさりとした画づくりにしました。





    完成


    今回は、今までにないゆるい感じの作風にしてみました。次はいつものように厳つい作品を作ろうと思います。

    Profile.

    • 岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
      デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
      www.artstation.com/artist/yuzuki
      www.villard.co.jp