バーチャルヒューマンの研究事例
FIST[2][3]は、バーチャルヒューマンの部位の中でも特に誘目性の高い手に注目し、その力感を表現するため、実際の骨格のCTデータに加えて、腱や筋肉、血管、皮膚のような内部組織を陰的にモデリングすることで、Leap Motionでキャプチャした手の姿勢に合わせ、典型的なPC環境でも対話的なフレームレートで、表面に浮き出る内部組織の構造を写実的に表現することに成功したシステムです。
[2]中田聖人, 藤代一成: 「FIST: 準解剖学的構造をもつ手の陰的モデリング」, 画像電子学会誌, 48巻4号506-515頁, 2019年10月
[3]Masato Nakada, Hélène Ballet, Issei Fujishiro: "FIST: A fast, implicit model of the human hand with semi-anatomical structures", in Proceedings of SIGGRAPH Asia 2018 Technical Briefs, Article No. 34, Tokyo, December 2018[DOI: 10.1145/3283254.3283280]
▲FIST(Fast, Implicit model with Semi-anatomical sTructures)による手の対話的アニメーションの様子
情報可視化の研究事例
TideGrapher[4]は、ラグビーの試合のながれを視覚的に分析し、勝敗の分かれ目となったキープレイを発見する情報可視化システムです。東京オリンピックを間近に控え、リアルスポーツの深部に誰もが切り込めるようなアプリはことさら魅力的に映るのではないでしょうか。
[4]Yusuke Ishikawa, Issei Fujishiro: "TideGrapher: Visual analytics of tactical situations for rugby matches", Journal of Visual Informatics, Vol. 2, No. 1, pp. 60-70, March 2018[DOI: 10.1016/j.visinf.2018.04.007]
▲ラグビーの試合のながれを視覚的に分析し、勝敗の分かれ目となったキープレイを発見するTideGrapherのインターフェイス
天文可視化の研究事例
aflak[5]は、大規模なマルチスペクトル観測データから銀河や天体の構造を視覚的に把握するため、新たに開発しているオープンソースの天文可視化環境です。こちらは、京都大学、広島大学、東京工科大学との共同研究開発プロジェクトで、コードはGitHubで無償公開されています(github.com/aflak-vis/aflak)。
[5]Malik Olivier Boussejra, Kazuya Matsubayashi, Yuriko Takeshima, Shunya Takekawa, Rikuo Uchiki, Makoto Uemura, Issei Fujishiro: "aflak: Visual programming environment enabling end-to-end provenance management for the analysis of astronomical datasets", Journal of Visual Informatics, Vol. 3, No. 1, pp. 1-8, March 2019[doi: 10.1016/j.visinf.2019.03.001]
▲aflak(Advanced Framework for Learning Astrophysical Knowledge/aflakはアラビア語で「天体」の意)によるビジュアルプログラミングの実行例
修了生・卒業生の約3割はゲーム系企業に毎年度就職
主要なプロジェクトは、公的資金、特に科学研究費補助金に頼るケースがほとんどです。この10年間に、私が代表者の研究課題に限っても、新学術領域計画研究1件、基盤研究(A)2件、基盤研究(B)1件、挑戦的研究(開拓)1件、挑戦的研究(萌芽)4件が採択され、山梨大学、会津大学、豊橋技術科学大学、東北大学などとも共同研究を推進してきました。また、Microsoft Research Asia COREプログラムにも2度採択されています(2011、2018)。
本研究室のユニークな試みとして、大学院生有志を、デジタル・フロンティア、J CUBE、スクウェア・エニックス、バンダイナムコスタジオなどの名だたる映像制作会社・ゲーム会社に長期インターンとして採用していただき、現場のニーズに合わせた技術開発の実際を体験させています。その甲斐もあり、修了生・卒業生は、有力IT・メディア系企業に加え、カプコン、コーエーテクモゲームス、Cygames、スクウェア・エニックス、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、任天堂、ハル研究所などのゲーム系企業にも約3割が毎年度就職しています。
過去10年間(2009~2018年度)の業績は、学術誌論文30編、国際会議録論文51編、国際会議ポスター論文15編、国内会議録論文(査読有)24編、国際会議発表24件、国内会議発表169件、書籍15冊、総説26編です。主な掲載雑誌は、IEEE TVCG、Computer Graphics Forum、Computers & Graphics、The Visual Computer、画像電子学会誌、芸術科学会論文誌、映像情報メディア学会誌、情報処理学会論文誌、電子情報通信学会論文誌(D)ならびに英文誌です。またSIGGRAPH、SIGGRAPH Asia、Eurographics、Cyberworlds、ACM VRCAI、CG International、IEEE VIS、IEEE PacificVis、EuroVis、IEVC、NICOGRAPH Internationalなどの国際会議でも発表を行なってきました。国内では、Visual Computing、NICOGRAPH、Expressive Japan(映像表現・芸術科学フォーラム)、情報処理学会CGVI研究会・全国大会などで恒常的に発表しています。
受賞歴は、学生と合わせ、国内外で計60件です。主要なものを列挙すれば、Cyberworlds 2015とVRCAI 2015でBest Paper Award(First Place)、Cyberworlds 2016でBest Short Paper Award、Asian Digital Modeling Contest 2017でGrand Prizeを受賞。国内では、芸術科学会国際CG大賞最優秀賞(2010)、画像電子学会最優秀論文賞(2016)、芸術科学会第16回CG Japan Award(2017)を受賞しています。