PCパーツの価格高騰や生成AIツールの進化により、CG制作に求められるハードウェアの仕様は大きく変化し、その選定は難しくなっている。
「CG年鑑2026」掲載企業を中心に実施した「制作環境一斉調査2026」では、151社から回答を得た。本稿では、その調査結果を基に、業界別・使用ツール別の傾向を分析。マウスコンピューターとともに、CG制作に最適なPC構成を探っていく。
アンケート実施概要
調査対象:「CG年鑑 2026」掲載企業を中心とした企業にメールにて案内
調査期間:2026年7月10日(金)~7月16日(木)
調査方法:メールアンケート
回答社数:151社
過去実施調査記事
2024年度版 制作環境一斉調査
2023年度版 制作環境一斉調査
2022年度版 制作環境一斉調査
2021年度版 制作環境一斉調査
2020年度版 制作環境一斉調査
2019年度版 制作環境一斉調査
2018年度版 制作環境一斉調査
powered by マウスコンピューター
プロフィール
小林俊一氏
株式会社マウスコンピューター
開発・購買本部 製品部 部長
アンケートに回答したCGプロダクションの基本情報
業種
事業領域(複数回答)は「アニメ」が81件で最多、僅差で「ゲーム」が75件、「実写VFX」が60件、「遊技機」が53件と続いた。
メインツール
回答はMayaが87件(58%)を占めて最多。次いで3ds Max(17%)、Blender(12%)、Cinema 4D(7%)と続き、Houdiniは3件・2%にとどまる。
※メインツールを択一で答える質問で、使用ツール全般についての質問とは異なる。参考までにCG年鑑2026年掲載企業全351社の使用ツール全般については下記。Maya:269社、Blender:222社、3ds Max:206社、 Houdini:145社、Cinema 4D:74社
PCの価格帯にはどんな変化が見られる?
cgworld.jp/special-feature/2024-cg2024-mouse.html
「30万円以上50万円未満」が50%と半数近くを占めて最多。2023年度は27%、2024年度は36%だったこの価格帯が、2026年度は50%まで拡大し、最大のボリュームゾーンとして定着した。一方、「20万円以上30万円未満」は45%→34%→19%と一貫して縮小し、3年でほぼ半分以下に。「50万円以上70万円未満」も16%までシェアを増やし、価格帯の裾野全体が上方向にスライドした。
マウスコンピューターのコメント
メモリ・SSDといった半導体の価格上昇に大きく影響を受けています。制作環境向けの製品は比較的大容量の構成が必要なことから、特に価格への影響が顕著に出ている状況です。
パーツごとの選択傾向
CPUの選択傾向は?
cgworld.jp/special-feature/2024-cg2024-mouse.html
「Core i7」が26%で最多、僅差で「Core i9」が24%。「Core Ultra 7」(15%)と「Core Ultra 9」(10%)を合わせると25%に達し、従来型のCore i7・i9合計50%に迫る規模となった。
2023年度から2024年度にかけては、Core iシリーズがほぼ横ばいの一方、AMD特にRyzenシリーズが明確に伸長していた。今回2026年度調査では、コストパフォーマンスに優れたRyzen 7が明確にシェアを伸ばしているが、2024年度時点ではCore Ultra 9が「その他」に埋もれるほど僅少(1%未満)だったCore Ultraシリーズが、7・9合計で25%まで急拡大した。NPU搭載の新世代Core Ultraへの期待感をのぞかせた。
マウスコンピューターのコメント
Core Ultraシリーズに搭載されるようなNPU搭載が高性能PCの新規導入時の標準になりつつあります。制作ソフト側でもNPU対応機能が徐々に導入されており、GPUによるレンダリング処理と並行してNPUでAI補助処理を実行することで、負荷分散や生産性向上に寄与していると考えます。
メモリの選択傾向は?
cgworld.jp/special-feature/2024-cg2024-mouse.html
「64GB」が47%で最多。2024年度調査の55%からはシェアを落とし、「32GB」(20%)「128GB」(26%)の両端が増える結果となった。過去傾向でいえば、年々メモリサイズは大きくなる傾向にあったが、メモリ価格の高騰が原因して、32GBにとどまる層が増えた。一方で、128GB、256GBとメモリを積み増す層も一定層増えた。この層を個別に分析すると業種別では実写VFX回答者60件のうち29件(48%)が128GB以上を選択し、アニメ(28%)やゲーム(20%)を大きく上回った。選定理由として、「レンダリング」(62%、全体49%)や「エフェクト・シミュレーション」(51%、全体40%)を挙げるユーザーが全体傾向よりも多く、負荷の高い工程を担うユーザーほど大容量メモリを選ぶ傾向が出ている。
マウスコンピューターのコメント
32GBはPCコストに占めるメモリ比重の大きさから、導入コストを抑えて選ぶケースが増加。当初は32GBで導入し将来増設で対応する例もあります。一方、複数アプリ運用やデータ増加への対応から、速度と安定性を重視して128GBを選ぶ動きも強まっています。
グラフィックスボード(GPU)の選択傾向は?
「RTX 5060 Ti/5060」が17%で最多、「RTX 5070 Ti/5070」(16%)、「RTX 4070 Ti/4070」(15%)が僅差で続く。RTX 40番台からRTX 50番台への世代交代が進行中で、最上位のRTX 4090/5090も合わせて13%と、ハイエンド層は堅調だ。
GPUを性能帯で「ハイエンド」(RTX 4090/5090/5080/4080等、30%)「ミドル」(RTX 4070 Ti/4070/5070 Ti/5070等、36%)「エントリー」(RTX 4060 Ti/4060/5060 Ti/5060等、34%)の3層に分けて集計すると、明確な相関が見える。
ゲームエンジン利用者はハイエンド比率36%に対し非利用者は15%と2倍以上の差があり、リアルタイムレンダリングの有無がGPU投資額を左右する。業種別では建築(75%)・プロダクト/製造(63%)・実写VFX(43%)が上位、アニメ(23%)・ゲーム(20%)は控えめで、ビジュアライズの精度が求められる領域ほど高価格帯GPUへ投資する傾向が明確だ。ツール別ではCinema 4D(60%)、Maya(25%)に対しBlender(22%)が最も低い結果となった。
AI活用率もGPU階層と強く連動する。ハイエンドGPU使用者のAI活用率は93%に達し、ミドル(74%)・エントリー(59%)と段階的に低下。「AIを活用していない」と回答した13件の中にハイエンドGPU使用者は一件もなく、AI活用の広がりが高性能GPUへの投資と表裏一体であることがうかがえる。
マウスコンピューターのコメント
RTX50番台は純粋な処理性能よりAI処理性能の拡張が大きく、AIを前提としたワークフロー導入の需要が牽引しています。AI活用でVRAM容量が要求仕様として重視されるようになったことも、上位クラスへの移行を加速していると想定します。
RTX 5060 Ti搭載のミニタワー:DAIV KM-I7G6T
- CPU
Core i7 14700F
- GPU
GeForce RTX 5060 Ti/16GB
- メモリ
64GB(カスタマイズ)
AIの活用状況
「はい」が74%、「検討中」の17%を合わせると9割超がAI活用に前向き。ツールはChatGPT・Gemini・Claudeが上位、用途は「補助」「自動化」「生成」の順に多い。
マウスコンピューターのコメント
生成・アップスケールなどのAI処理をローカル実行する前提では、少なくともVRAM16GB以上、可能であればGeForce RTX 5090が搭載する32GB以上のグラフィックスを選べば、パフォーマンスも期待できます。
まとめ:制作環境のトレンド
1.価格帯は「30〜50万円」がメイン
2.CPUはCore i7/i9からCore Ultraシリーズへの世代交代が進行
3.GPUはRTX 40番台からRTX 50番台への移行期
4.メモリは64GB一強から32GB・128GBへの二極化
2026年度版 マウスコンピューター ツール別/業種別 おすすめPCは?
CPU、GPU、メモリの投資はCGツールの種類そのものよりも「何をするか」に強く左右される。同じMayaユーザーでも、モデリングやアニメーションが中心か、シミュレーションやリアルタイムエンジンとの連携を伴うかで、最適な構成は大きく変わる。
記事の後半では、回答データをもとに、「Mayaユーザー向けのPCは?」「実写VFX業界におけるオススメの構成は?」といった切り口で、ツール軸・ジャンル軸それぞれで最適なスペックのPCについて探っていく。
TEXT_CGWORLD編集部