今年で7回目を数える、毎年恒例のCGプロダクションにおける制作環境のトレンド調査。マウスコンピューターの協力の下、回答社数は昨年の91社から96社へと増え、CG・映像業界全体の傾向を窺い知ることのできる重要なリサーチ企画となった。ここでは、CGWORLDアドバイザリーボードの委員でもあるコロッサスの澤田友明氏と共に、アンケート結果を見ていく。
アンケート実施概要
調査対象 「CGプロダクション年鑑 2023」掲載企業
調査期間 2023年6月21日(水)~7月5日(水)
調査方法 Webアンケート
回答社数 96社
過去実施調査記事
2022年度版 制作環境一斉調査
2021年度版 制作環境一斉調査
2020年度版 制作環境一斉調査
2019年度版 制作環境一斉調査
2018年度版 制作環境一斉調査
powered by マウスコンピューター
※アンケートの構成比は、小数点以下を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
制作現場のPCスペックから2023年前期のトレンドを分析
CGプロダクションにとってPCは最も重要な仕事の道具。日進月歩で高機能化するDCCツールはその動作に力強いCPUやGPUのパワーを必要とし、4K/8K映像の編集には大量のメモリ容量が求められる。
そして何より、Unreal Engineによるリアルタイム3DCGの拡がりである。今やUnreal Engineはゲーム開発に留まらず、バーチャルプロダクション、メタバース、デジタルツイン制作など、様々な業界を股にかけたCG制作の土台となっている。
2023年の初夏、そうした多種多様なコンテンツ制作を支えるCGプロダクション96社の制作環境をCGWORLDが一斉調査。今年のトレンドについて澤田氏はこう語る。
「AMDとNVIDIAが値上げしたことが大きかったですね。値段を据え置きしたインテルの新しい第13世代Core i7や、値段のこなれたNVIDIAの1世代前のGeForce RTX 3000番台を選択するプロダクションが多かったようです。一方で、もともとコストパフォーマンスが良いメモリは64GBが標準になって、ストレージも高速なNMVeタイプのM.2 SSDが主流になってきました」。
ここからは実際のアンケート結果と照らし合わせながら、CPUやGPUなど主要パーツの選択・導入傾向やメモリ、ストレージなどについて、昨年のデータと比較しながら解説。澤田氏には、各項目について、クリエイターの視点からコメントをいただいた。
Q1 現在、最も多く使用しているPCの価格帯(税込)は?
ボリュームゾーンは昨年同様20万円以上30万円未満だが、その構成比が34%から45%と11ポイントアップ。次ぐ30万円以上50万円未満が32%から27%へ5ポイントダウンしており、ミドルクラスのPCを選択した企業が多いようだ。
「いくつかの要因が重なっていると思いますが、パーツ単位で見ていくとAMD Ryzenの第5世代やNVIDIA GeForce RTX 4000番台が値上げとなっているので、値上げされたパーツを避けてBTOしたのかなと思います」(澤田氏)。
Q2 購入時に重視した構成部品は?
プロダクションの業務用PCでは、特にどの構成部品を重視しているのか。アンケートの集計結果は、昨年同様に1位がGPU、2位がCPU、3位がメモリ。ただし今年はメモリを最も重視した企業が8%から16%へと大きく増加した。
「Windows 11はメモリを要求するOSなのと、8Kなどの高解像度データを扱う機会が増えたこと、そもそもメモリは安いパーツであることが理由でしょうか。1位のGPUは、ゲームエンジンの需要が毎年加速していますし、Adobe Substance 3DやPhotoshopにもGPUでブーストできる機能があったりしますので、CPUと同じくらい大事なものですね」(澤田氏)。
Q3 CPUは?
CPUは1位のCore i7が31%から44%へと上昇し、2位のCore i9が37%から34%にダウン。AMDのCPUは9%と、昨年より採用率が下がる結果となった。
「インテルのCoreシリーズは、昨年出た第12世代Coreシリーズの最上位、Core i9-12900の性能と、今年出た第13世代のCore i7-13700の性能がほぼ同じなので、コストパフォーマンスの面でCore i7の採用率が増えたと言えるでしょう。ちなみに、ゲームエンジンはGPUに渡すデータをCPUが先に計算するので、CPUがボトルネックになるという考え方もあるようです」(澤田氏)。
Q4 メモリは?
今年はメモリを64GB搭載するPCが38%から52%と大幅に増加し、逆に32GBが36%から21%へと大幅ダウン。64GBが標準だと言えるような結果だ。
「メモリは価格が低下していて、アップグレードしやすいパーツです。3DCGツールとPhotoshopを行き来して作業したり、ブラウザ経由でWebアプリを利用したり、そういう状況なら軽く32GBを超えたりしますので、余裕をもっておいた方が良いですね。また、リモートワークが定着したことで、そこにSlackやTeams、Zoomの同時起動が加わったりするので、多め多めに積んでおきましょう」(澤田氏)。
Q5 ストレージ(システムドライブ)の種類は?
ストレージタイプはM.2のSATA SSD とNVMe の順位が今年入れ替わり、1位はNVMeに。この2者のスループットはSATAが600MB/s、NVMeが3,500MB/s(理論値)と、5倍以上の性能差となる。
「今新しくPCを買うとほとんどのストレージがNVMeM.2 SSDですから、新規購入分が比率を押し上げているのでしょう。HDDがまだ25票残っているのは、プロジェクトの進行中に、大きめの作業データなどをローカルに保存しておくためのサブドライブとしての需要かと思います」(澤田氏)。
Q6 ストレージ(システムドライブ)の容量は?
システムドライブの容量のスタンダードは昨年と変わらず1TB。その理由はやはり価格で、1TB SSDはかなり手に取りやすくなっており、2TBも徐々にこなれてきている。しかし4TBとなるとまだかなり高価だ。
「いろんなアプリケーションをまんべんなく入れていくとなると、やはり1TBぐらいはほしい。あとは各アプリケーションが作業中につくるキャッシュの場所としても、高速にアクセスできるNVMeM.2 SSDのシステムドライブがベスト。プロダクションワークでは大量のキャッシュをつくるツールが多いですから」(澤田氏)。
Q7 GPUは?
GPUは2021年にリリースされたGeForce RTX 3060が23%、全体の50%超がRTX 3000番台で占められた。一方、2022年秋から現在までリリースが続いているRTX 4000番台は11%と低調に推移。
「値段が上がったのが効いていますね。4000番台は今年はスルーする判断をした会社が多かったのかもしれません。RTX AシリーズはこれまでのQuadroと同等の立ち位置の製品ですが、5%程度とかなり少ないです。これはおそらくGeForce RTXの性能が活きるゲームエンジンをベースにした開発がトレンドだからでしょう」(澤田氏)。
インテル・AMD・NVIDIAの動きが 素直に反映されたPC構成
2022年の秋から年末にかけて、インテルは第13世代Coreシリーズを、AMDは第5世代のRyzenシリーズを、そしてNVIDIAはGeForce RTX 4000番台をリリースした。PCの重要パーツの新世代が相次いでリリースされ、約半年が経過した初夏のアンケート調査であったが、価格を据え置いたインテルCoreシリーズは置き換えが進む一方で、値上げを行なったAMDとNVIDIAはなかなか置き換えが進んでいないことが窺えた。
「 RTX 4000番台はスルーしてこなれた3000番台を載せて、コストパフォーマンスが高いインテルCore i7と64GBのメモリ、NMVe M.2 SSDが載った20~30万円のPC。こういう選択が主流となりました」(澤田氏)。
なぜマウスコンピューター製品が選ばれるのか?
Why mouse computer?
BTOメーカー各社が展開するクリエイター向けシリーズの中でも、年々その存在感を増しているマウスコンピューターの 「DAIV」シリーズ。今年は筐体デザインを一新し、ワークステーション市場にも参入するなど、攻めの姿勢を崩さない。 昨年に引き続き実施した同社に関するアンケートを、同社マーケティング本部 製品部 主任の井上洋一郎氏と共に読み解いていこう。
Q1 マウスコンピューターを知っていますか?
ブランド認知度は100%に達しており、導入経験のあるプロダクションと個人を合わせると約67%と高い実績を誇る。大きな構成は昨年やそれ以前とさほど変わらないことから、信頼を積み、新規ユーザーも着実に増えていることが窺える。
「個人的には昨年、知らないというご回答がありましたので、今年はゼロで良かったなと(笑)。少しずつでも認知が広がってきているのかなと嬉しいです」(井上氏)。
Q2 導入・購入したマウスコンピューター製品のブランドと所有台数は?
(導入経験ありと回答した方のみ)
トップシェアは昨年に引き続きクリエイター向けブランドの「DAIV」で、415台とダントツ。一方で今年はハイエンド向けの「MousePro」の導入台数も235台と大幅に伸びている。
「今年はDAIVのPCケースが変わったのと、DAIVブランドのワークステーションをリリースしました。そのあたりが素直に皆さんに届いたのかなと、こちらも嬉しく思います」(井上氏)。
Q3 構成以外で選んだ理由は?(導入経験ありと回答した方のみ)※複数回答可
今年は安定性を評価したユーザーが昨年の21%から29%に伸張。また、デザインを評価するユーザーも昨年の8%から14%に増えており、DAIVの新筐体が評価されたと考えられる。
「当社はかねてより安定性にはこだわっています。製品の開発段階から早期に問題を発見するしくみをつくり、工場での品質検査や出荷までのながれも念入りに整備しています。そうした細かい積み重ねが評価されているようでありがたいです」(井上氏)。
導入企業が語る、マウスコンピューター製品のお気に入りポイント
・コスパとすっきりした筐体デザイン
・パーツのカスタマイズができて、スペックと予算の折り合いがつけやすい
・導入から時間が経っても、安定して稼働している点
・国内生産&365日24時間日本語でのサポートが受けられる点
マウスコンピューターの2023年イチ押しモデルはこれ!
マウスコンピューター
マーケティング本部 製品部
井上 洋一郎 氏
CGWORLD(以下、CGW):アンケート全体を見て、昨今のBTOパソコンのオーダーの傾向はいかがですか?
井上氏(以下、井上):やはりGPUへの注目度の高さを感じますね。Unreal EngineやOmniverse、AI関連などで、お客様からのお問い合わせが増えています。パーツ単位ではお買い得感のあるインテルの13世代CPUやGeForceRTX 3000番台がよく売れていますね。RTX4000番台のメインストリームモデルはまだ流通が本格化していないので、今のうちに3000番台を売りたいという売る側の思惑もありそうです。
CGW:今年のトレンドを受けて、クリエイター向けに今どんな製品をオススメしますか?
井上:まずはGeForce RTX 3050 Laptop GPUが載ったノート型のDAIV Z6-I7G50SR-Aです。こちらはエントリーモデルで一番売れているものですが、業界全体としてはハイエンドのGPUが載るノートPCも増えてきていまして、今後売上が伸びそうです。ほどほどのリアルタイムレンダリングコンテンツであれば、クライアント先に持っていって、その場で見せるという使い方ができます。
CGW:もう1製品、ノート型のオススメがあるのですよね?
井上:はい。GeForce RTX 4090 Laptop GPUを積んで、さらに外付けの水冷ユニットをセットにしたDAIV N6-I9G90BK-Aです。
CGW:これはすごい! 攻めてますね。
井上:はい、昨年のインタビューで「守りに入るべきではない」というコメントを出しましたので、攻めているノートをラインアップしました。クライアント先に持っていけるように、水冷ユニットはW75×H204×D187mm、約1.1kgと軽くコンパクトにしました。水冷ユニットは差し込めばすぐ使えるという簡単なものです。
CGW:なるほど! 4090が載った水冷のノート、面白いコンセプトです。次のオススメはデスクトップですね。
井上:はい、次は筐体を一新したDAIV のデスクトップのCore i9モデル、DAIV FX-I9G90です。GPUはGeForce RTX 4090、メモリは64GBが標準ですが128GBを選ぶお客様がかなり増えています。高級感のある筐体に、クリエイターの業務に必要なIOポートも取り揃えた一台です。
CGW:最後のオススメはワークステーションですね。
井上:Xeon w5-2455Xと48GBのVRAMを載せたRTX A6000 Ada 世代という組み合わせの、現時点で最上級のワークステーション、DAIV FW-X5N60です。前モデルのRTXA6000搭載機では、CADやAI、VR関係など、特にVRAMが大量に必要な研究や業務で指名買いをいただいています。
CGW:DAIV の次の展開はいかがですか?
井上:実はDAIV にはグラフィックスカードを2枚搭載できるモデルがないんです。お客様からお問い合わせをいただいたこともあるので、対応に向けて社内で話を進めています。
CGW:最後に、マウスコンピューターの製品を検討中の方へメッセージを。
井上:DAIVを中心に当社を認知していただき、安定性などのご評価ありがとうございます。これからも製品とサービスを充実させていきます。ご購入後の5年保証や24時間365日のサポートを提供しておりますので、購入前、ご使用中どちらの場合も、お気軽にご相談ください。
マウスコンピューターが2023年にオススメするマシン構成
DAIV Z6-I7G50SR-A
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- CPU
インテル Core™ i7-12650H プロセッサー
- グラフィックス
GeForce RTX™ 3050 Laptop GPU
- メモリ標準容量
16GB(8GB×2/デュアルチャネル)
- ストレージ
M.2 SSD 500GB(NVMe Gen4×4)
DAIV FW-X5N60
- OS
Windows 11 Pro for Workstations 64ビット(DSP)
- CPU
インテル Xeon w5-2455Xプロセッサー
- グラフィックス
NVIDIA RTX™ A6000 Ada 世代
- メモリ標準容量
64GB(16GB×4 / クアッドチャネル)
- ストレージ
M.2 SSD 1TB(NVMe Gen4×4)
DAIV FX-I9G90
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- CPU
インテル Core™ i9-13900KF プロセッサー
- グラフィックス
GeForce RTX™ 4090
- メモリ標準容量
64GB(32GB×2/デュアルチャネル)
- ストレージ
M.2 SSD 2TB(NVMe Gen4×4)
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
COMMENTARY_澤田友明(コロッサス)
TEXT_kagaya(ハリんち)