PCのスペックや価格帯、PCパーツ選定基準など、3DCG制作現場の環境を明らかにする一斉調査を、昨年に引き続きマウスコンピューターの協力の下、6度目として実施した。この一年は、外的要因によるパーツの供給不足や価格の高騰などが起きていたが、各社のPC環境にはどのような影響があったのか。91社の回答から、その動向を探っていく。
アンケート実施概要
調査対象:「CGプロダクション年鑑 2022」掲載企業
調査期間:2022年7月13日(水)~7月20日(水)
調査方法:Webアンケート
回答社数:91社
過去実施調査記事
2021年度版 制作環境一斉調査
2020年度版 制作環境一斉調査
2019年度版 制作環境一斉調査
2018年度版 制作環境一斉調査
2017年度版 制作環境一斉調査
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※アンケートの構成比は、小数点以下を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
CGプロダクションの回答から各パーツの動向とその要因を分析
『CGプロダクション年鑑2022』に掲載される企業を対象とした制作環境(ハードウェア)を調査する年に1度のこの企画。6度目となる今回は、幅広い業種の中から91社の回答が得られた。
DCCツールの高性能化や映像品質の向上によるデータ容量の増加、さらにはリアルタイム処理の台頭といった昨年と同様の潮流から、よりハイスペックなPC環境が求められている昨今。各種PCパーツの価格高騰も相まって、PCの購入価格に大きな変化があったのは注目すべきポイントだ。さらに、2021年に登場したRTX 3000シリーズが前年度に引き続きシェアを大きく伸ばしており、RTX 2000シリーズからの世代交代が進んでいることも見て取れた。また、CPUのメインストリームは完全にCore i9へと移り変わり、そのシェアをさらに広げる一方で、Xeonシリーズは大きくシェアを落とす結果に。コストパフォーマンスが重視されるなかで、アーリーアダプターによるAMD Ryzen Threadripperシリーズへの移行なども影響している。
以上のような点を踏まえつつ、ここからは実際のアンケート結果を確認しながら、主要パーツの導入傾向を分析。前年度データとの比較も交えて、アドバイザリーボードのコロッサス 澤田友明氏とともにその要因を探っていく。
Q1:現在、最も多く使用しているPCについてお聞きします。価格帯(税込)は?
PCの購入価格は、上位の順位変動こそなかったものの、シェアを見ると「20万円以上30万円未満」が43%から34%に大きく減少。逆に「30万円以上50万円未満」が27%から32%に、「50万円以上70万円未満」が6%から10%に増加し、前年度からの明確な価格上昇が見て取れた。この点について澤田氏は、昨年後半から今年前半に起きた“パーツ価格の高騰”を指摘し、「その影響が出たのではないか」と分析する。また、それら以外の価格帯では大きな変化は見られず、前年度とほぼ同様の結果となった。
Q2:購入時に、重視した構成部品は?
[最も重視]
[2番目に重視]
[3番目に重視]
購入時に重視する構成部品は、昨年と同様に1位がGPU、2位がCPU、3位がメモリとなった。ただ比率を見ると、GPUを「最も重視」する割合が42%から48%に大きく増加しており、澤田氏は「昨年のGPU不足が今年の結果に表れた」と考えるとともに、「それがPCの購入価格上昇にもつながった」と考察する。さらに、業務面で「リアルタイム系が増えている点も要因としてはある」と補足。また、コロナ禍によるリモートワークの増加によってローカルでの作業が増えたため、レンダリングの処理などに「GPUパワーが必要になった背景もある」と付け加えた。一方で、澤田氏が気になった点として挙げたのは「電源がほぼ重視されていない」こと。上位の各パーツが重視されるのは当然としても、電源の品質が悪いと「PCが安定して動作しなかったり、長持ちしなかったりするケースもある」ことから、「電源のスペックにも気を配ると良い」とアドバイスした。
Q3:CPUは?
前年度でCore i7とCore i9の比率が逆転したが、その流れは今年も継続。Core i9は37%まで増加し、その差をさらに広げる結果となった。逆に、Xeonシリーズが20%から10%にまで大きく減少した点について、澤田氏は「費用対効果の悪さ」を指摘。その解決策として「AMD Ryzen Threadripperシリーズが選ばれた部分もある」と考える。ちなみに、今回の調査タイミングでは、インテルの最新モデルである第12世代CPUはそれほど含まれていないと考えられるため、その影響がハッキリ出るのは来年になるだろう。例えば、一部で問題になっている発熱の影響で、ユーザーはマザーボードや筐体、冷却性能などにも注意する必要が出てくるため、メーカー選びなども含めて「慎重に動く可能性はある」との考えを、澤田氏は示した。
Q4:メモリは?
トップの64GBと2位の32GBのシェアに大きな変動はなかったが、128GBが前年度の13%から18%へと急増。「64GB以上」で考えると前年度の時点でも50%を超えていたが、そのシェアがさらに増えた形だ。BTOでのメモリ増設でも128GBはそれなりに高額になるが、製造系や映像系の企業が128GBを選んでいる傾向にあったことから、澤田氏は「その方が余裕を持って作業できるという判断だろう」と推察した。
Q5:ストレージ(システムドライブ)の種類は?
今回は複数利用も回答に反映されているため、単純に前年度と比較できないが、SATA SSDとNVMe SSDの差が縮まる結果となった。澤田氏によれば、最近だと「NVMe SSDは1TBで1万円を切っている」ことから、SATA SSDと比較してコスパ面で「そん色ない」とのこと。そのため、通常であれば「SATA SSDを選ぶメリットはほぼない」という。ただし、現状だとNVMe SSDは1つのPCに最大2基までしか搭載できないため、それ以上のSSDを搭載したいのであれば、「SATA SSDを選ぶ理由はある」と補足した。
Q6:ストレージ(システムドライブ)の容量は?
ストレージ容量はわかりやすい増加傾向にあり、512GBが12%も減った一方で、1TBは8%、2TBは3%、4TBは4%増加した。BTOでCドライブを選ぶ際は、5000円程度で512TBから1TBへアップグレードできるようになったほか、Unreal Engineなどを利用している場合はすぐに1TBは使ってしまうため、「最初から1TB以上を選ぶ企業が増えているのだろう」と澤田氏は考察した。
Q7:GPUは?
前年度と比較して、RTX 3000シリーズが大きく増加し、40%以上を占める結果となった。また、RTX 3080とRTX 3060に比べてRTX 3070の割合が少ない点について、澤田氏は「メモリ容量の違い」を指摘。RTX 3080は10GB、RTX 3060は12GBだが、RTX 3070はそれより少ない8GBとなるため、「そこが理由で敬遠された」と考える。またRTX 3090は、単純に「コスパが低いから」と付け加えた。
前年度の傾向が継続されたが、来年度は違う可能性もあり
今回は、それぞれにちょっとした動きはあったものの、全体的としては前年度の動きをそのまま踏襲した結果となっており、傾向や格差が前年度以上に大きくなった印象だった。その中で、PCの購入価格が上がったのは、注目すべきポイントの1つ。GPUの重要度が上がっている状況にあって、RTX 3000シリーズの供給不足が少なからず解消されてやっと購入できる環境が整ってきたことが、PCの購入価格の上昇につながったと分析できる。また澤田氏いわく、全体的なスペックアップの傾向は「潤沢な予算でハイクオリティな作品を作る流れが出ているわけはなく、作業の効率化が目的だろう」とのこと。そういった点なども踏まえると、「来年度ではまた違った結果が出る可能性は十分にある」と結論付けた。
なぜマウスコンピューター製品が選ばれるのか? Why mouse computer?
クリエイター向けの「DAIV」シリーズや一般向けの「mouse」シリーズから、ゲーム向けの「G-Tune」まで、多彩なラインナップを取りそろえるマウスコンピューター。昨今のコロナ禍の拡大やリモートワークの増加などは、メーカーと消費者にどんな影響をもたらしているのか。アンケートから、その傾向を読み解いていく。
Q1:マウスコンピューターを知っていますか?
ブランド認知度は、「個人または家族・ご友人で既に導入・購入経験あり」が14%から9%と減少した一方で、「名前、ブランドのみ知っている」は4%、「購入検討経験あるが未導入である」は1%ほど増加。「会社またはオフィスで既に導入・購入経験あり」は62%と変わらないことから、全体としての導入はそのままに、認知度の広がりが見て取れた。
Q2:(導入経験ありと回答した方のみ)導入・購入したマウスコンピューター製品のブランドと所有台数は?
調査対象にもっともマッチするクリエイター向けの「DAIV」シリーズが274台と、2位に約2.5倍の差をつけて圧倒的なシェアに。明確な特徴を打ち出してメディア等に露出できる強みが、結果に反映された形だ。続けて、サポート面が充実し、ワークステーションなども展開する法人向けの「MousePro」シリーズが109台で2位となった。また全体比で見ると、ラインナップが拡充されている「mouse」シリーズの伸びがうかがえた。
Q3:(導入経験ありと回答した方のみ)構成以外で選んだ理由は? ※複数回答可
昨年と同様に「コストパフォーマンス」が84%と最も高く、「マウスコンピューター=高コスパ」のイメージが定着しつつある印象だ。一方で、リモートワークの増加もあって「納期」が33%(昨年25%)、「サポート」が25%(昨年11%)と、大きく躍進する結果となった。
導入企業が語る、マウスコンピューター製品のお気に入りポイント
・コストと性能のバランスがいい
・特に故障がなく、安定して稼働している点が気に入っています
・安心の国内生産とコストパフォーマンス、さらにアフターサポートがしっかりしているところが良いです
・拡張性が高く、筐体のサイズも使いやすい。あと、デザインも何気に気に入っています
自社の予測が上手く合致し、各種取り組みも評価された結果に
CGWORLD(以下、CGW):今回の調査結果を見てどんな印象を持ちましたか?
マウスコンピューター 井上氏(以下、井上):第一印象としては「予想通りだったかな」という感じでした。とくにCPUやメモリは、営業担当などからの意見を取り入れる形でPCの構成を変えていったのですが、それが調査結果と連動していたと感じました。逆に言えば、ユーザーからのフィードバックをしっかりと反映できたということ。その意味では、とても嬉しく感じます。またCPUの販売率も、マウスコンピューターの購入比率と非常に近いです。
CGW:ブランド認知度の調査では、導入の傾向が従来通りだったのに対して、認知度は前年度よりも広がりを見せている印象でした。
井上:これはテレビCMの効果が大きく、これまでPCに興味がなかった層への認知度が高まったと実感しています。顧客からの同様のフィードバックが営業担当にあったことからも、その傾向はうかがえます。また、メディアへの露出によって各企業の経営層への認知度も上がっており、それが機材導入にもつながっていると感じています。
CGW:構成以外で選んだ理由としては、「コストパフォーマンス」が前年度と同様に多かった一方で、「納期」や「サポート」、「安定性」などが増える結果となりました。この点についてはどう感じていますか?
井上:サポートに関しては毎年、前年度の結果を超える目標を掲げているので、それが良い結果として反映されたことは嬉しく思います。また納期については、正直に言えば弊社でも流通が止まってしまった部分もあったので、それでも評価いただけたということは、「他社と比較して頑張れた証なのかな」と胸を張れますね。そもそも、納期は現場の状況から遅れる前提で考えてはいましたが、それを踏まえても「いかに短くできるか」という点には努めました。各部署との連携によって、納期を短くする取り組みを着実に実現ことが好印象につながったのであれば、それは本当に嬉しいです。
CGW: CGプロダクションからの期待や要望の声については、どのように捉えましたか?
マウスコンピューター 新海氏(以下、新海):「コスパが良い」や「幅広いスペックが選べる」といった声は、非常にありがたく感じています。一方で、「サポートを充実させてほしい」や「Webで購入しづらい」といった声もありましたので、ユーザーの声に応じたよりよい提案がもっとできればと思う限りです。
井上:そのほかにも、AMD RyzenやQuadroなど、少し尖った製品を期待する声も多く届いていますので、そういった声にマッチする製品も上手く選定していきたいと考えています。例えば最近では、外付け水冷ユニットに対応したノートPCなどもラインナップしました。そういった取り組みは、今後も続けていたいですね。
CGW:最後に、マウスコンピューターをご検討の方にメッセージをお願いします。
新海:DAIVブランドでは7月に発表したばかりのノートPC「DAIV 6」シリーズのように、クリエイターが求める“スペック”に加えて、実際の現場にフィットした“使いやすさ”にもこだわって展開を進めていきます。また、購入のしやすさという点では、例えば各ソフトメーカーとの検証結果をホームページで公開したり、検証済みの推奨モデルの展開したりするなど、これからCGを始めるようなユーザーをしっかり支援していくための取り組みも進めています。
また、製品のラインナップについては「守りに入るべきではない」とも思っています。高額製品やニッチな製品にも一定のニーズはあるので、可能な範囲でそういった領域にもチャレンジしていきたいです。
マウスコンピューター マーケティング本部 製品部 井上 氏
マウスコンピューター マーケティング本部 マーケティング部 新海 氏
マウスコンピューターが2022年にオススメするマシン構成
●DAIV Z9(プレミアムモデル)
最新世代CPU+RTX3000番台搭載
コストパフォーマンス機
価格:389,800円~(税込、送料別)
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- CPU
インテル Core i9-12900 プロセッサー
- グラフィックス
GeForce RTX 3070
- メモリ
64GB
- ストレージ
M.2 SSD 1TB(NVMe Gen4×4)+HDD 2TB
●DAIV X10-A6
Core i9とNVIDIA RTX A6000搭載
ハイエンドモデル
価格:1,009,800円~(税込、送料別)
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- CPU
インテル Core i9-10900X プロセッサー
- グラフィックス
NVIDIA RTX A6000
- メモリ
64GB
- ストレージ
M.2 SSD 1TB(NVMe)
●MousePro-W997DA6
Xeon Silver 4216×2基+RTX A6000搭載
ウルトラハイエンドモデル
価格:1,594,780円~(税込、送料別)
- OS
Windows 10 Pro for Workstations 64ビット (DSP)
- CPU
インテル Xeon Silver 4216 プロセッサー×2基
- グラフィックス
NVIDIA RTX A6000
- メモリ
32GB
- ストレージ
M.2 SSD 512GB(NVMe/SAMSUNG PM9A1)
問い合わせ先
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)