今年で8回目を数える、毎年恒例のCGプロダクションにおける制作環境のトレンド調査。クリエイター向けPC「DAIV」シリーズを提供するマウスコンピューターの協力の下、回答社数は昨年の96社から99社へと増え、CG・映像業界全体の傾向を窺い知ることのできる重要なリサーチ企画となった。また昨年に引き続き、マウスコンピューター開発・購買本部製品部主任の井上洋一郎氏をお招きし、2024年現在のCPU、GPU、メモリといったパーツ毎のトレンド分析、さらにはマウスコンピューターが推薦するPCまで、幅広くお話をうかがった。
アンケート実施概要
調査対象 「CG年鑑 2024」掲載企業
調査期間 2024年7月12日(金)~7月19(金)
調査方法 Webアンケート
回答社数 99社
過去実施調査記事
2023年度版 制作環境一斉調査
2022年度版 制作環境一斉調査
2021年度版 制作環境一斉調査
2020年度版 制作環境一斉調査
2019年度版 制作環境一斉調査
2018年度版 制作環境一斉調査
powered by マウスコンピューター
※アンケートの構成比は、小数点以下を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
制作現場のPCスペックから2024年前期のトレンドを分析
CGプロダクションにとって、仕事道具であるPCの重要性は言うまでもない。リアルタイム3DCG、バーチャルプロダクション、メタバース、デジタルツイン等々、コンテンツ制作において高いマシンスペックが求められるジャンルが次々と拡大を続け、特に近年では生成AIという一大ジャンルの登場がさらなる大きな変化をもたらしつつある。その一方で、円安の影響によるパーツ価格の高騰から、よりコストパフォーマンスに優れたマシンの需要も高まっている。
クリエイターが最も多く使用しているデスクトップパソコンの価格は?
CGWORLD(以下、CGW):各プロダクションのCPU・GPU・メモリの選考状況をどのようにご覧になりましたか?
井上洋一郎氏(以下、井上):価格の面で言いますと、本年度は10万円未満、10万円~15万円といった低価格帯が少なく、全体として価格帯が上方に遷移しているように見受けられます。昨年は20万円~30万円のシェアが45%だったところ、今年は32%と減少しているのですが、その代わりに30万円~50万円のシェアが27%から36%に増えているので、全体的に見てミドル~ハイミドルクラスの価格帯のシェアが増加しているように感じられます。
井上洋一郎氏
マウスコンピューター開発・購買本部 製品部 主任
クリエイターが最も多く使用しているPCのCPU
CGW:各パーツごとに詳しい分析をうかがいたいと思います。選択されたCPUの傾向としては、昨年と比較するとCore i7、Core i9いずれも微減していて、その代わりにAMDのRyzenシリーズが大きくシェアを伸ばしています。この変化についてはどうお考えでしょうか?
井上:昨年に比べてCPUの優先順位は下がっていることが読み取れますが、それはPCのどこにお金を掛けるかという意識の変化が根底にあると考えています。つまりプロダクションの方々は、今はCPUよりもグラフィックスの性能に重きを置いてPCを選んでいるということが明確に言えると思います 。AIやリアルタイムCGの需要が増加している中で、CPUよりもメモリの搭載量が大きいグラフィックボードを優先していくといった傾向があるようです。そういった状況の中で、CPUの選択はコスパの良いRyzenシリーズにシェアが移っているのではないでしょうか。とは言え大きく下のレンジに移行するということもなく、一ランク下のCPUにシェアが移っていったという印象です。
クリエイターが最も多く使用しているPCのメモリ
CGW:メモリは32GBが15%、64GBが55%、128GBが25%という結果でしたが、こちらについてはいかがでしょうか?
井上:昨年と比較しても順当に増えているという印象ですね。64GBが過半数を超え、128GBも当たり前になってきたようです。やはりコンテンツ制作において、メモリを要求するものが多くなっているということは感じますので、CPUやGPUはコスパを優先して選択しても、メモリにはちゃんとお金を掛けようという考えがあるのでしょう。そもそもメモリはそこまで大きな価格になることはないので、パーツの中でも比較的スペックを上げやすいものですから。
クリエイターが最も多く使用しているPCのグラフィックボード
CGW:グラフィックボードについてはいかがでしょう?
井上:昨年時点のデータでは、まだなかなかGeForce RTX 3000番台から4000番台への切り替えが進んでいないという状況だったのですが、今年に入ってそれが大きく進んだという印象です。最近では4060がエントリーモデルになっているような状況で、マウスコンピュータでも4070~4080あたりの構成を選ばれるお客様が多くなっています。また4070より安く、かつメモリが多くてコストパフォーマンスの高い3080Tiも人気です。昨今のトレンドであるAIを使う上でメモリは重要な要素ですので、そこが人気の要因であると思います。またハイエンドである4090のシェアも10%となかなか高いですが、グラフィックスを強化することで削減できる人件費のことを考えると、4090の導入は良い投資という考え方になるんでしょうね。その点はCG業界ならではだと思います。
CGW:NVIDIA RTXとGeForce RTXの違いについてはどう捉えていらっしゃいますか?
井上:やはりプロフェッショナル向けとしてはNVIDIA RTXを推奨していますが、両者の垣根は徐々に少なくなっているという印象です。建築系など正確な数値計算を必要とするお客様、大きなメモリ量を必要とされるお客様にはNVIDIA RTXをお勧めしますが、コストパフォーマンスを求められるお客様であれば、GeForce RTXでも十分ニーズに応えられると考えています。
Why DAIV ?〜なぜ「DAIV」シリーズが選ばれるのか〜
コスパの良さ、適切な機材構成、 短納期、国内生産が選ばれる理由
CGW:それでは次に、マウスコンピューターの製品を導入された企業へのアンケート結果についてうかがいたいと思います。導入理由の結果についてどうお考えでしょうか?
井上:1位がコストパフォーマンス、2位がパフォーマンスの高い機材構成、3位が納期、国内生産という結果になりましたね。以前も1位はコストパフォーマンスでしたが、若干割合が下がっているのは、やはり円安等の要因による価格の高騰が影響しているのかなと思います。
CGW:パフォーマンスの高い機材構成という項目は今年から新設したのですが、約半数の企業から評価されていますね。「コストパフォーマンスが良く、スペックと予算の折り合いがつけやすい」「必要スペックをカスタマイズでき、さらに2週間程度での納品が可能であった」との回答がありました。
井上:その点を評価していただけているのは、やはりパーツ単位で注目されるお客様が増えたのかなという印象です。また弊社としても、需要に基づいた適切な構成選択ができているとお客様から評価していただけているのかなと感じました。それに弊社はコロナ禍以降、パーツの供給が安定しない中で、できるだけ短納期でお届けする企業努力を続けて参りましたので、納期の速さを評価していただけているのも嬉しいです。
CGW:次回以降、ここをもっと評価されたいという項目はありますか?
井上:「ハイスペックマシンが必要となった際に短納期で導入。現在もフル活用している」「これまで個人、法人で購入。故障もなく安定動作している」という嬉しいお言葉を頂きましたが、安定性や故障の少なさという項目は、昨年より上昇しているものの23%にとどまりまっています。ここをさらに延ばしていきたいですね。サポートの充実についても、お客様からのフィードバックを拾い上げつつ強化していきたいと考えています。
マウスコンピューターの2024年イチ押しモデルはこれ!
CGW:今回のアンケート調査を通じて得られたトレンドや要望を踏まえて、今年はどのような機材がお勧めですか?
井上:まずはGeForce RTX 4070 Laptop GPUが搭載されたノート型の「DAIV Z6-I9G70SR-A」です。CPUはCore i9、メモリは32GBです。その上、1.6kgと非常に軽量なので、持ち運びを前提にお使いいただけます。
CGW:その軽さのノートPCでGeForce RTX 4070、Core i9搭載は凄いスペックですね!
井上:次はデスクトップPC「DAIV FX-I7G90」です。GPUはNVIDIA GeForce RTX 4090、CPUはCore i7、メモリは64GBです。
CGW:GPU特化の尖ったスペックですね、面白い!
井上:そして「DAIV FW-P9N60」です。AMD Ryzen Threadripper PRO 7995WXプロセッサ搭載のハイエンドマシンです。GPUはNVIDIA RTX 6000 Ada世代です。
CGW:これはモンスターマシンですね(笑)。
井上:これは今後の方針となりますが、日本の代理店に協力いただきまして、ソフト付きモデルの展開も進めていく予定です。Vectorworks付属モデルはすでに販売を開始しています。
CGW:ちゃんとソフトが動作するかテスト済みのモデルというわけですね。
井上:ソフトが付属していないものでも、NVIDIA StudioやUnreal Engineなど、動作テストの評価済みモデルを出しています。やはりお客様はソフトがちゃんと動くかどうかを気にされますので、こういったモデルの取り組みをもっと頑張っていきたいです。
CGW:顧客からの幅広い需要に対応しつつ、新たな提案も続けていくというのは素晴らしいですね。マウスコンピューターの人気の理由がわかりました。今回はありがとうございました。
マウスコンピューターが2024年にオススメするマシン構成(PC・モニター)
DAIV Z6-I9G70SR-A
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- CPU
インテル®Core™ i9-13900H プロセッサー
- グラフィックス
GeForce RTX™ 4070 Laptop GPU
- メモリ標準容量
32GB(16GB×2/デュアルチャネル)
- ストレージ
M.2 SSD 1TB(NVMe Gen4×4)
DAIV FX-I7G90
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- CPU
インテル®Core™ i7-14700KF プロセッサー
- グラフィックス
NVIDIA® GeForce RTX™ 4090
- メモリ標準容量
64GB(32GB×2/デュアルチャネル)
- ストレージ
M.2 SSD 2TB(NVMe Gen4×4)
DAIV FW-P9N60
- OS
Windows 11 Pro for Workstations 64ビット(DSP)
- CPU
AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 7995WX プロセッサ
- グラフィックス
NVIDIA RTX™ 6000 Ada 世代
- メモリ標準容量
64GB(16GB×4/クアッドチャネル)
- ストレージ
M.2 SSD 4TB(NVMe Gen4×4/Western Digital WD_BLACK SN850X)
ProLite XUB2792UHSU-B6
- パネル種類
IPS方式パネル(ノングレア)
- サイズ
対角:68.5cm(27型) 16:9
- 信号入力コネクタ(デジタル)
HDMI × 1 / DisplayPort × 1
- 昇降機能(高さ調整)
可動範囲 上下150mm
- ピボット機能(画面縦回転)
左右回転各90°
問い合わせ
マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_オムライス駆
EDIT_中川裕介(CGWORLD)