>   >  武蔵美が新卒TAを輩出!?>>スクウェア・エニックス、セガゲームス、バンダイナムコスタジオの開発者が、武蔵野美術大学でプロシージャル表現とTA育成について語り合う(後篇)
武蔵美が新卒TAを輩出!?>>スクウェア・エニックス、セガゲームス、バンダイナムコスタジオの開発者が、武蔵野美術大学でプロシージャル表現とTA育成について語り合う(後篇)

武蔵美が新卒TAを輩出!?>>スクウェア・エニックス、セガゲームス、バンダイナムコスタジオの開発者が、武蔵野美術大学でプロシージャル表現とTA育成について語り合う(後篇)

2020年2月5日(水)公開の前篇に続き、武蔵野美術大学 造形学部 デザイン情報学科の高山穣 准教授、スクウェア・エニックスの中村翔氏、セガゲームスの伊地知正治氏、バンダイナムコスタジオの池沢宇功氏による座談会の模様をお届けする。前篇で語られた高山氏の研究・教育活動と、中村氏の学生時代の経験談を踏まえ、座談会の後半では、ゲーム開発におけるプロシージャル表現の有効性や、アート表現とゲーム開発のちがい、テクニカルアーティスト(以下、TA)の育成方法について活発な意見交換が行われた。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

増大する工数に対して、プロシージャル技術はてきめんに効く

▲左から、高山穣氏(武蔵野美術大学)、池沢宇功氏(バンダイナムコスタジオ)、伊地知正治氏(セガゲームス)、中村翔氏(スクウェア・エニックス)


CGWORLD(以下、C):池沢さんは、先ほど「日本大学の芸術学部で普通に油絵を勉強した」と語っていましたが(前篇参照)、アルゴリズムやプロシージャル表現を意識し始めたのはいつ頃でしたか?

池沢宇功氏(以下、池沢):もともとゲームが大好きで「ゲーム会社に入るためには、油絵をやらなきゃいけない」と思っていたんです。今ふり返ると、絵の基礎力はつきましたが、少し遠回りだったかなぁと(笑)。その後、Mayaを覚えてからナムコ(現、バンダイナムコエンターテインメント)に入り、背景モデラーとして『フットボールキングダム』(2004)というPS2のサッカーゲームの開発に参加しました。『ACE COMBAT ZERO』(2006)や『ACE COMBAT 6』(2007)では、メカ班のリードアーティストとして質感設計やテクスチャ制作を担当し、その頃からアーティストがシェーダなどのパラメータをいじるようになってきたんです。

C:ゲームのハードが、PS2から、PS3やXbox 360に進化したタイミングですね。

池沢:そうです。表現力が上がり、全ての面で、より多くの情報量が求められるようになりました。それまでは感性だけでやっており、「なぜ、そう見えるのか」を考えたことがなかったんですが、ちゃんとCGのしくみを勉強したら、戦闘機の見た目が明らかによくなったんです。そういう経験をして「感性だけでは駄目だ」ってことにようやく気が付きました。

伊地知正治氏(以下、伊地知):全て感性に頼っていると、行き詰まりますよね。好き嫌いも出てきますし、何より万人に対する説得力がありません。現実に裏打ちされた説得力を技術で引き出し、デフォルメや様式化をしながら、コモンセンスを狙っていくというアプローチが必要になってくるように思います。ゲームのエフェクトであれば、爆発、炎、煙、滝や波など、自然現象の原理、性質が必ずバックボーンにあります。『龍が如く』シリーズの血しぶきの例で言うと、静脈であれば赤黒い、動脈であれば鮮血、体の表層にあるのは静脈だから勢いはない、首などの特定の部位には動脈があるから勢いがある、といった具合に表現を分けています。

池沢:自分の過去をふり返ってみると、アルゴリズムを理解して、自分の中に落とし込み、アウトプットできたときが、1番のブレークスルーだったように思います。仕上がりがよくなりましたし、作業の効率も上がりました。プログラマーにJavaScriptを教えてもらいながら、Photoshopのアクション機能などを組み合わせた自動生成ツールをつくり、ニヤニヤと悦に入っていましたね。それがきっかけで、TAの仕事って大事だなと思い始めたんです。私は皆さんのようにプログラムやスクリプトをバリバリ書くわけではないですが、「どうやったら、これを自動化できるかな?」といったことを考えるのは好きで、TEC(※)やエンジニアによく相談しています。

※ バンダイナムコスタジオでは、エンジニア寄りのTAのことを「TEC(テック)」と呼んでいる。

C『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(2018)では、池沢さんはリードアーティストとして3Dグラフィックスのマネジメントを担当したと伺っています(※)。それと同時に、アーティスト寄りのTAのような役割も兼任なさったのでしょうか?

※ 『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』における3Dグラフィックスの絵作りについてはこちらの記事を参照。

▲『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(Nintendo Switch)参戦ファイター紹介映像


池沢:そうです。本作の開発では、アーティストがそれなりにいて、グラフィックスのエンジニアが何人かいて、TECと、私以外にもアーティスト寄りのTA的な人が数人いて、もちろんキャラクター・背景・エフェクトなどのパートごとにリードアーティストもいました。当然ながら、それぞれが、それぞれの立場でものを言うので、そこをうまいこと調整する役回りでした。

TAは、アーティストとエンジニアの仲を取りもつ「翻訳者」のような立場だと、多くの人が語っており、その通りだなと思います。ただ、最近はそれだけじゃないとも感じ始めています。相談を受けてから動くのではなく、テクニカルディレクターのような視点に立ち、プロジェクトに関与していくケースが増えてきました。「こうすればアウトプットの質が上がる」、あるいは「効率がよくなる」といった提案を積極的にしていくことが求められており、TAの意義や必要性が高まってきたように感じます。

伊地知:そうですね。そこにたどり着けるのは、かなり優秀な人か、それなりの経験を詰んだ人だと思いますが、1人でもいると相当強いですね。エンジニア寄りのTAと、アーティスト寄りのTAの比率はどのくらいですか?

池沢:2対1くらいで、エンジニア寄りのTAの方が多いですね。あえてそうしたかったわけではなく、結果としてそうなっています。どのくらいの比率がベストなのかは、私にはまだわからないです。ただ、エンジニア寄りのTAとアーティスト寄りのTAとで話し合いをすると、たいていの問題はスッと解決するように思います。

C:以前の座談会のとき、沼上さん(TECの沼上広志氏)は「TAの数を増やしたい」と語っていましたが、池沢さんもそう思いますか?

池沢:それはもう。どこのプロジェクトでも必要としています。本当に足りていません。

C:増やす手段として、かつての中村さんのような適性のある学生を新卒TAとして採用するという選択肢と、社内の適性のある人にTA的な素養を伸ばしてもらうという選択肢があると思いますが。

池沢:どちらの選択肢も、力を入れていきたいです。特にHoudiniなどを活用したプロシージャルなデータ生成は、TA的な視点でもってどんどん推進していく必要があります。アーティストが、1個1個、ワンオフでデータを作成するやり方はキリがなくて、残業時間がいくらあっても足りません。多分、どこの会社も状況は一緒だと思います。


伊地知:増大する工数に対して、プロシージャル技術はてきめんに効きますよね。

池沢:そうですね。実現できるクオリティと物量が、劇的に変わります。

伊地知:特にオープンワールドのゲームは、本当に物量がすごいから。働き方改革が進み、労働基準監督署の目も厳しくなってきた昨今、昔みたいな長時間労働でゲーム開発の現場を支えることは難しくなりました。学生にはいい時代になったとも言えますし、厳しい時代になったとも言えます。手でゴリゴリつくっていたら間に合いませんし、残業もできないので、速く上手く大量につくる技術はこれから確実に必要です。

私は1分1秒でも働きたくない、寝ないと体力がもたないという人間だったので、楽してすごいものを大量につくることに心血を注いできました。一方で、寝ずにがんばっていた人もいたのですが、30歳半ばを過ぎた辺りから体力が激減し、若い頃の無理がたたって50歳で亡くなってしまいました。

C:学生も、開発者も、寝ることをおろそかにしてほしくはないですね。海外はもちろん、国内でも『ファイナルファンタジーXV』(2016)や『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017)など、オープンワールドゲームが増えていますから、プロシージャル技術はますます必要になると思います。ワンオフでデータをつくってきたアーティストに、プロシージャルへの理解を深めてもらう場合にも、高山先生のような教え方(前篇参照)は有効なように思いますが、如何でしょうか?

池沢:有効だと思います。いろんなところで「TAってどうやったら育つんでしょう?」と聞かれるんですが、「こうやればいいんだな」と思いながら、すごく興味深くお話を聞いていました。TAに転向しなくても、アルゴリズムや法則性を見いだせる力が育てば、TAやエンジニアに相談しつつ、今以上のクオリティアップや効率化が図れるようになると思います。

伊地知:ゲーム開発者に向けた、公開講座の需要もありそうに思いますね。

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プロダクトは具象じゃないといけない

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