10月13日(月)、Blender 5.0がベータバージョンとしてリリースされ、公式サイトの「Daily Builds」からダウンロード可能となった。UI改善にはじまり、モデリングからアニメーションまで各種機能の拡充はもちろん、プロの映像制作パイプラインにかかわるカラーマネジメントやポスプロワークフローの進化まで、更新は多岐にわたる。

ここでは、BlenderのシニアプロダクトデザイナーPablo Vazquez氏による10月15日(水)の公式YouTubeライブ配信(上記)から、重要な新機能や更新をピックアップして紹介する。

VSEとコンポジターのシームレスな統合

VSE(Video Sequence Editor)のクリップに対して、コンポジターのノードツリーを直接モディファイアーとして適用可能になった。これにより、VSEのタイムライン上で、クリップ単位で高度なカラーコレクションやエフェクトを適用し、リアルタイムで結果を確認しながら編集できるようになる。Blender内でのポストプロダクションワークフローが大きく強化された。

ジオメトリノードベースの強力な新モディファイアー群

▲配列(Array)
▲Scatter on Surface
▲カーブのチューブ化(Curve to Tube)

ジオメトリノードベースの新しい「配列(Array)」、「Scatter on Surface」、「カーブのチューブ化(Curve to Tube)」などがモディファイアーとして追加。これらは「ジオメトリノードアセット(Geometry Nodes assets)」として提供され、従来は複雑なノード設定が必要だったところ、モディファイアーの適用だけで構築済みのノードが簡単に適用できる。

ボリューム関連ノードが正式機能に

これまで実験的機能だったOpenVDBなどのボリュームを扱うジオメトリノード群が正式機能として統合された。SDF(符号付き距離関数)グリッドへの変換や各種演算ノードが追加され、プロシージャルなボリュームモデリングやエフェクト作成が本格的に可能になる。

UV同期選択の抜本的な改善

▲UV同期選択(面選択)

長年の課題となっていたUVエディタと3Dビューポート間の選択同期機能(UV Sync Selection)が根本的につくり直された。面ごと(Face Corner)の選択と直感的な操作感を実現し、デフォルトで有効化。UV編集作業の効率向上に大きく貢献する。

新コンストレイント「ジオメトリアトリビュート」追加

▲頂点に保存された名前付きアトリビュート値を読み取り、それを利用してカメラのトランスフォームを制御する例

ジオメトリノードで作成したアトリビュートを読み取り、オブジェクトやボーンのトランスフォームを制御できる強力な新コンストレイント「ジオメトリアトリビュート(Geometry Attribute)」が追加。これにより、ジオメトリノードでの計算結果からリグを動かすなど、従来は不可能だった高度なプロシージャルリギングが可能となる。

ACESカラーマネジメントのネイティブサポート

映像業界標準のカラーマネジメントシステム「ACES(Academy Color Encoding System)」にネイティブ対応。プロジェクト全体で使用する「作業カラースペース(Working Space)」をACEScgなどで定義可能になり、スタジオ環境や他のVFXツール間の色のちがいを吸収した、色の一貫性を保った作業が可能になる。

Cyclesレンダリング品質の向上

▲新しいランダムウォーク方式によるSSSの正確なマルチバウンス計算。レンダリング時間は多少増加するものの、不自然に暗くなるアーティファクトは軽減される

Cyclesには、サブサーフェス・スキャタリング(SSS)のより正確なマルチバウンス計算、プリンシプルBSDFに対する金属薄膜による虹色効果(Metallic Thin Film)追加といった更新が施された。また、ボリュームレンダリングについては、アーティファクトを抑える新しい「Null Scattering」アルゴリズムがデフォルトになった。

コンポジターに高品質なエフェクトアセットが標準搭載

▲アセットシェルフがコンポジターノードエディタに追加され、コンポジットエフェクト群がビルトインアセットとして搭載

Blender Studioのアーティストが作成した高品質なコンポジットエフェクト群が、ノードグループアセットとして標準搭載。ビネット やフィルムグレイン、色収差など、現場で多用されるエフェクトを、ドラッグ&ドロップだけで手軽に利用できる。

Matcapが刷新され表現力豊かに

スカルプトやモデリングで使用するMatcapが全面的に見直され、コントラスト向上やディテール視認性改善が施された。さらに、スペキュラ成分の表示オンオフが切り替え可能になり、シルエット確認などが容易になった。

アニメーション作業を効率化する改善

▲「差分で時間をジャンプ(Jump Time by Delta)」オペレータ

指定時間だけ再生ヘッドを移動する「差分で時間をジャンプ(Jump Time by Delta)」オペレータの追加、アドオンだった「Copy Global Transform」の標準機能化、アーマチュアインスタンス間でのボーン選択状態の分離など、アニメーション制作を効率化する複数の改善が施されている。





Blender 5.0ベータには、他にも多数の新機能と改善が盛り込まれている。詳細は上記のVazquez氏によるライブ配信動画や、下記リリースノートを参照してほしい。

■Blender Daily Buildsダウンロード
https://builder.blender.org/download/daily/

■Blender 5.0 Release Notes
https://developer.blender.org/docs/release_notes/5.0/

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