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No.009:中京大学 工学部 宮崎研究室

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RESEARCH 2:学生の奇抜なアイデアから生まれた「流鏑馬VR」

・研究はサーベイが一番大事

以降では、本学の学生たちの奇抜なアイデアから生まれた『流鏑馬VR「馬の名は。」』[1]というコンテンツの開発についてご紹介します。なお、本研究は6名の学生が共同で考え、学内の学生向けプロジェクトに応募し、自分たちで資金を獲得して成し遂げました。

私が学生の頃は「研究はサーベイ(調査)が一番大事なんだ」と先人からよく聞かされました。どんな研究をやるにせよ、まずは先行研究を調査し、未開拓の領域、新規性を打ち出せる領域を見出すことが不可欠というわけです。ごもっともな意見ではありますが、当時は「世界のどこかでやられていたとしても、マイナーな文献にしか載っていなかったら、調べようがないじゃないか」と内心で思っていました。

しかしインターネットが普及した今では、知りたくなくても簡単にわかってしまいます。例えば、流鏑馬(やぶさめ)を体感できるVRシミュレータの先行研究を調べたければ、検索サイトに「流鏑馬」「VR」というキーワードを入力するだけで簡単に目的の情報へたどり着けます。こういった情報を得てしまうと、私は「先行研究よりもすごいもの、もっと注目されるものをつくらなきゃ」と気負ってしまう傾向にありますが、学生たちはおかまいなしのようです。


・ジョーバとHTC Viveを併用

流鏑馬のVRシミュレータの先行研究には、奈良先端科学技術大学院大学の井村氏らのグループが開発したバーチャル流鏑馬[2]があります。バーチャル流鏑馬では、馬の代わりにロッキングチェアが使われていました。一方で、ハシラスが開発した『Hashilus Race』という乗馬レースを体感できるVRアトラクションでは、馬の代わりにパナソニックの健康器具の『ジョーバ』を利用しています。

いずれの事例も、視覚情報と体感ハードウェアを組み合わせることで、プレイヤーに高い没入感を与えることに成功しています。学生たちはこれら2つの事例にインスパイアされ、ジョーバとHTC Viveを併用した流鏑馬のVRシミュレータを制作することを思いつきました。


・ジョーバの制御方法

本研究では、ジョーバの制御回路とArduinoという基板を接続することで、PCからジョーバのON/OFFを制御しています。また、リレーシールドを使うことで、高電圧・高電流器具の扱いを可能にしました。HTC Viveに表示する映像はUnityで生成しており、UNIDUINOを使うことで、Unity上のスクリプトからのArduinoの制御を容易にしています。

▲【左】プラグインのUNIDUINOを使い、UnityからArduinoを制御。またリレーシールドを介し、Arduinoからジョーバの開始・終了・速度の変更信号のON/OFFを制御しています/【右】写真内の上がリレーシールド、下がArduino


弓はVRTK(VRデベロッパーのためのフリーオープンソースツール)に付属しているものを使用し、HTC Viveのコントローラのバイブレーション機能で弓を射る感覚を再現しました。

流鏑馬VRを開始すると、流鏑馬のフィールドシーンが移動しはじめ、ジョーバも動き出します。進行方向左側には、流鏑馬の的と、現在のスコアが表示され、両手に持ったコントローラで弓で矢を射る操作を実行できます。矢が的に上手く命中するとスコアが加算され、的中音がスピーカーから出力されます。

前述の通り、ジョーバはUnityで生成される馬の動きに同期するように制御しているのに加え、左右の足元に設置した手づくりの枕型のデバイスを両足で蹴る動作をすると、圧力センサがそれを感知し、ジョーバのスピードが一段上がるようにもなっています。デバイスの外側にはクッションがついており、プレイヤーが足で蹴ったときのジョーバ、およびプレイヤーへの衝撃を和らげる役割を果たしています。また安全上、デバイスを蹴らずに時間が経つと、自動的に一段階ずつ減速していくようにしてあります。

▲【左】VR空間内に表示された、流鏑馬のフィールドと弓矢/【右】流鏑馬VRを体験中のプレイヤー。両手にHTC Viveのコントローラを持ち、ジョーバに乗っています。弓で矢を射る操作はコントローラで行います。また、両足の内側には枕型のデバイスが設置してあり、これを両足で蹴る動作をすると、ジョーバの速度が一段上がります


・今後の展望

流鏑馬VRの完成後、オープンキャンパスにて体験会を行い、プレイヤーへのアンケートを実施しました。当初の想定通り、全てのプレイヤーが「乗馬映像(視覚情報)だけの体験より、ジョーバ(体感ハードウェア)を組み合わせた体験の方が、高い没入感を得られる」と回答してくれた一方で、「矢の挙動にリアリティがほしいと思った」「的が動くと、よりおもしろくなる」「ゲーム性を意識した改善を行うといいのでは」といった意見も聞かれました。

今後は、さらに没入感を高めるためのフィードバックの追加、プレイヤーと体感ハードウェアとのインタラクションの強化、流鏑馬以外のVRシミュレータの開発などにも挑戦したいと考えています。


・参考文献

[1]加藤達也, 鈴木崇, 中貴俊, 山田雅之, 宮崎慎也:HTC Viveを利用したインタラクティブコンテンツ-流鏑馬VRの開発-, 第9回社会情報学会中部支部, 第4回芸術科学会中部支部合同研究会, SSICJ2018-1, pp.25-29, 2018
[2]井村誠孝, 小塚淳, 南広一, 田畑慶人, 守随辰也, 千原國宏:バーチャル流鏑馬:騎馬弐武者弐, 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 7, 4, pp.481-486, 2002



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