三社三様のイメージを理解し、その真ん中を提案する
C:服部さんの担当は、モデリングまでですか?
服部:はい。可動域の確認用として必要最低限のリグは設定しますが、TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』の制作にあたり、ほかのスタッフが組み直しています。アニメーション以降の工程は、完全にほかのスタッフにお任せしています。変形シーンでは各カットの担当アニメーターが小まめにモデルやリグを調整し、パーツ間の隙間を埋めるなどして、画面フレーム内でより見映えのするカットに仕上げています。
C:1体のロボットをつくるのに、デザインからモデリングまで含めて、どのくらいの期間を要しますか?
服部:2∼3ヶ月くらいですね。現状で15体ほどありますが、順繰りに新規の作業が発生するため、以降の工程はやりたくてもできないのが実情です。基本的にキービジュアルは任せてもらっているので、そこで欲求不満を晴らしています(笑)。
▲服部氏による「シンカリオン E5はやぶさ」の3Dモデル。 TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』で使用されている
▲同じく「シンカリオン E6こまち」の3Dモデル
▲同じく「シンカリオン E7かがやき」の3Dモデル
▲同じく「シンカリオン E5はやぶさ」のキービジュアル用画像
▲【左】同じく「シンカリオン E6こまち」のキービジュアル用画像/【右】「シンカリオン E7かがやき」のキービジュアル用画像
▲同じく新幹線のキービジュアル
C:2014年に提示したドラフトから、2018年のTVアニメ放送まで、デザインの方向性が首尾一貫しているのがすごいですね。
服部:今回の場合、実際の新幹線を運行するJR各社と、プラレールをつくるタカラトミーさんと、アニメをつくるSMDE社内の要望を理解し、それら3社が形づくる三角形の真ん中にあるデザインを提案するよう心がけました。
C:三社三様のイメージを理解し、その真ん中にある、三社が納得できるイメージを提案するということですか?
服部:はい。それがデザイナーの仕事の核心だと思っています。もっと有名なデザイナーさんであれば、依頼する側がそのデザイナーの作風を求めていくと思いますが、僕の場合、そういうことはあり得ません。「このデザインで行くぞー!」と自分のデザインを声高に主張したとしても、聞く耳をもってもらえないでしょう。
C:「僕の考えた最強のロボット」をつくるだけでは仕事にならないというわけですね。
服部:そうです。クライアントの意向、メーカーの事情、視聴者の気持ちなどに配慮して、折り合いを探っていくことがデザイナーの仕事だと思っています。これまでに色々な経験をして、しょっぱい思いもする中で、そういう結論に達しました。こう言うとドライすぎるかもしれませんが「シンカリオン」に関しては、JR各社やタカラトミーさんのものだと思っており、「僕がつくっている」というような高揚感はほとんどないんですよ(笑)。そうは言っても本作のアニメーションプロデューサーの1人は社内にいるので、SMDEから提案できる要素も多く、のびのびとやらせてもらっています。
C:色々とお話いただき有難うございました。今後の放送も楽しみにしています。