「キャラクターをつくりたい」という動機から、3DCGやイラストレーションの制作に挑戦し、「これを仕事にしたい」と考えるようになる人は数多くいる。そんな人たちの自己分析と業界研究の足がかりにしてもらうため、本連載では様々なゲーム会社やCGプロダクションを訪問し、キャラクター制作に従事しているアーティストたちの仕事内容やキャリアパスを伺っていく。

第12回では、スマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』内にて公開しているAfterglowのMV「ツナグ、ソラモヨウ」を事例に、アニメーション制作を担当したサンジゲンにおけるアニメーターの仕事を紹介する。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

▲Afterglow 「ツナグ、ソラモヨウ」アニメMV(フルサイズver)。なお本作のアニメーションは、楽器の演奏シーンも含め全て手付けで表現されている。「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」は、Craft Eggが開発するiOS、Android対応のリズム&アドベンチャーゲームだ。『バンドリ!』はゲーム以外にも、アニメ、楽曲リリース、声優によるリアルライブなど様々なメディアミックス展開を行なっており、2017年にはアニメ『BanG Dream!』が放映された。さらに『BanG Dream! 2nd season』(2019年1月〜)、『BanG Dream! 3rd season』(2019年10月〜)をサンジゲンが制作することが発表されている
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「これは力を入れないとやばい」と思った

CGWORLD(以下、C):内田さんは2016年度入社の若手ながら、MV「ツナグ、ソラモヨウ」の冒頭カットのアニメーションを任されたそうですね。冒頭カットというのは視聴者の心を掴む大事なカットですから、誰にでも任せられるものではないと思います。

内田大樹氏(以下、内田):ボーカルの美竹蘭がフレームインして歌い始めてから、夜空に手を伸ばすまでの冒頭3カットを担当しました。「これは力を入れないとやばい」と思ったので、特に1カット目は本当に力を入れてつくりました。それほどリテイクが入ることもなく、結構すんなり終わったのでほっとしましたね。

  • 内田大樹
    日本電子専門学校 コンピュータグラフィックス科(2年制)を卒業。在学期間の後半、2016年2月からサンジゲン・クリエイティブ・サーキット(SCC)でサンジゲン流に特化したアニメCG制作の基礎を学び、同年6月に入社。『ブブキ・ブランキ 星の巨人』(2016)、『ID-0(アイディー・ゼロ)』(2017)、『モンストアニメ シリーズ2』(2017)などの制作に参加し、今にいたる。


C:こういうカットのアニメーションをつくる場合、どんな順番で進めるのですか?

内田:コンテを受け取ったら、まずは「レイアウト」という工程で、フレーム内のキャラクターの位置やカメラワークを調整します。今回は余裕があったので、静止画のレイアウトに加え、動画のレイアウト撮もつくりました。レイアウト工程でのOKが出たら、次に「アニマティクス」という工程で、キャラクターの身体のアニメーションをつくり込みます。アニマティクス工程でのOKが出たら、最後に「アニメーション」という工程で、フェイシャル(表情)と、髪やアクセサリーなどの揺れ物のアニメーションをつくり込みます。さらに、めり込み、シェーディング(セルルックの質感)などの修正も行います。

C:カット1の白い息も、内田さんがつくったのでしょうか?

内田:はい。エフェクトの仕込みもアニメーターが担います。この息は3ds Maxのパーティクル機能を使って表現しました。サンジゲンでは、3D制作に3ds Max、撮影にAfter Effectsを使っています。

C:カット1の制作期間はどのくらいですか?

内田:レイアウトの着手からアニメーションのOKが出るまでに、約1ヶ月といったところです。本作はMVなので、TVシリーズと比べると、結構時間を使ってクオリティを上げています。とはいえ、1ヶ月間このカットだけにかかりきりというわけではなく、複数カットを同時並行で進めます。あるカットの作業を終えたらチェックに出し、チェックが返ってくるまでの間に別のカットの作業をするといった具合です。

C:このカットは抑えめの感情芝居が求められるカットですが、もっとアクション性の高いカットを任されることもありますか?

内田:自分は今回のようなカットを振っていただく機会も多いですが、『モンストアニメ シリーズ2』などのほか作品では、キャラクターが動くカットも担当しています。

学生時代には、ここまで繊細な仕事だと思っていなかった

▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のレイアウト(take 01)。レイアウト工程では、フレーム内のキャラクターの位置やカメラワークを調整する。身体、表情、髪やアクセサリーなどの揺れ物のアニメーションは、この後の工程でつくり込まれる。内田氏はパーティクルなどのアニメーション以外の要素も担当できるため、本カットを任された。「経験はまだ少ないですが、芝居もできているし、チェック時の理解力もあり、レイアウト(take 01)の段階から自分でイメージをつくってきてくれる姿勢に助けられました。今後はキーフレームを整理してつくるなど、アニメーション管理の感覚が身につければ、迷いの少ない、スピードに優れた、さらに良いアニメーターになれると思います」と本作のCGスーパーバイザーがコメントしてくれた


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のレイアウト撮(take 01)。前述のレイアウトを動画にしたものだが、レイアウト工程ではこのような動画をつくらない場合も多い


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のレイアウト(take 02)。take 01からカメラを少し引き、半目時の瞳の見え方、開け口の大きさなどを調整している。さらに前傾姿勢だった上半身を起こし、首のみを傾ける姿勢に変更している


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のレイアウト撮(take 02)。前述のレイアウトを動画にしたもの


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のレイアウト(take 03)。動きはtake 02から変わっていないが、カメラが20%ほど下に移動している


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のレイアウト撮(take 03)。前述のレイアウトを動画にしたもの


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のアニマティクス(take 01)。大きな動きはレイアウト撮(take 03)から変化していないが、表情、髪の揺れ方、白い息が調整されている


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のアニマティクス(take 02)。take 01から、フレームインのタイミングを6コマ遅らせている。首の影を調整し、首をふる際に上半身も連動するよう、上半身の動きを追加している


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のアニメーション(take 01)。目を閉じる際の目線をさらに下へ向け、首をふる際の髪の揺れ具合を大きくしている。眉の形も修正している


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1のアニメーション(take 02)。首をふる際の髪の揺れ具合をさらに大きくしている。左目のまつ毛の見え方を修正し、錠前のアクセサリーに揺れを追加している


▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1の本撮(take 02)。アニメーション工程でのOKが出たカットは、撮影の担当者に渡され、撮影処理が加えられる


C:レイアウト撮のtake 01とtake 02のちがいはわかりやすいですが、後半にいけばいくほど、ぱっと見でちがいを判別するのが難しくなりますね。アニマティクスのtake 02あたりで完成してるんじゃないかと素人目には思ってしまいますが、さらにそこから繊細な調整を行い、ようやく完成にいたる過程に驚きました。

内田:レイアウトとアニマティクス工程で動きは大体決まるので、アニメーション工程になると演出さんや監督さんの好みに合わせた髪の毛や影の細かな微調整がメインになります。「ここの髪の毛が目にかかるのは嫌だから、ちょっとだけ動かしてください」「髪の毛の揺れをちょっとだけ抑えてください」といった感じです。

C:学生さんが想像する「アニメーターの仕事」のクオリティラインとは、かなりちがうだろうなと思います。完成度80%くらいまでは比較的短時間でできるけど、そこから残り20%を詰めるのに、すごい時間と集中力と忍耐力を要するといった感じでしょうか?

内田:そんな感じです。僕自身、学生時代には、ここまで繊細な仕事だと思っていませんでした。やればやるほど目が肥えてきて、腕も上がっていくので、今だから言えることですね。

C:残り20%が腕の見せ所であり、表現力のちがいにつながるのでしょうね。

内田:そうだと思います。アニメーターごとの個性が出てくるのは、その20%の部分です。「このカットは誰それだな」というように、カットを見ただけで誰の仕事かわかる場合もあります。

C:手描きのアニメではよく聞く話ですが、アニメCGでもそうなんですね。

内田:だから最後の20%は、すごく大事な作業なんです。

C:カットに対するリテイクの回数は、どのくらいありますか?

内田:一概には言えないですね。すぐ終わるカットもあれば、なかなかOKが出ないカットもあります。社内のアニメーションディレクターと、社外の演出さんや監督さんとで意見が食い違うこともあるので、「動きを大きく!」と言われた直後に「やっぱり小さく!」と言われたりもします(笑)。

C:演出に「正解」はないでしょうから、試行錯誤は避けて通れないわけですね。

内田:はい。そこはしょうがないですね。監督さんが「ダメです」と言えば、自分やほかの人が「もう十分じゃないか」と思っても修正しなければいけません。最後の詰めの段階になると、本当に繊細な作業をしています。

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ひとつひとつの課題を
しっかり仕事を仕上げるつもりでやっていた

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ひとつひとつの課題を、しっかり仕事を仕上げるつもりでやっていた

C:学生時代や就職するまでの話も聞かせていただけますか?

内田:サンジゲンが使っているのは3dss Maxですが、日本電子専門学校ではMayaを勉強していました。しかも在学中はアニメCGに特化した作品をつくっていなかったので、サンジゲン・クリエイティブ・サーキット(SCC)に応募はしたものの、選考を通過し、受講できると知ったときには驚きました。

C:こちら(下図)が学生時代の作品ですね。

▲【左】日本電子専門学校の進級制作として、内田氏が1年次につくったクルマのモデル/【右】同じく、卒業制作として2年次につくったアニメーション作品。「尺は数分で、シナリオ、デザイン、モデリング、アニメーションなど、全工程をひとりで担当しました。SCCの講義と並行してつくったので、中途半端な仕上がりになっています(苦笑)」(内田氏)


内田:すごい恥ずかしいですね。CGのCの字も知らない状態から始めたので「ド初心者」としか言いようがない作品をつくっていました。

C:今となっては封印したい過去かもしれませんが、だからこそ、ド初心者の学生さんたちに勇気を与えると思います(笑)。この作品をつくっていた学生さんが、2年とちょっとで先ほどのカットをつくるようになるとは......。すごい成長力ですね。一方で、学生さんの伸びしろや将来性を見極めることの難しさも感じます。そもそも、どうして3Dを勉強しようと思ったのでしょうか?

内田:父はアニメの背景美術の会社で絵を描いており、母もかつては同じ職種で働いていたので、小さい頃からアニメーションが身近にある環境で育ちました。

C:それなら、アニメやCGの業界で働くことにも理解があったわけですね。

内田:そうでもなくて、高校時代は3Dにまったく興味がなかったので、手描きのアニメーターになりたいという話をしました。そうしたら父が「たいへんだから、やめとけ」と......(笑)。

C:内情に通じているからこそ、止められたわけですね(笑)。

内田:実際、両親の働き方を見ていても「やばいんだろうな......」という気はしていました。そうしたら父が「これからは3Dの時代だから、3Dをやったらどうだ?」とすすめてきて、日本電子専門学校を紹介されたんです。その後、学校を見学しに行って、入学を決めました。

C:背景美術の世界も、絵の具が主流の時代は終わり、今では大半がデジタル化されています。3Dを併用して描く人も珍しくありません。そういう状況をよくご存じだから、3Dをすすめられたのでしょうね。

内田:ただ、1年次は進路をアニメ業界だけに絞っていたわけではないんです。ゲームとか映画のVFXとか選択肢は色々あるので、まずは3Dを勉強してみて、それから進路を決めようという感じでいました。だから進級制作では「とりあえず自分が好きなものをつくろう」と思ってクルマをつくりました。

C:この時点ではそれほどアニメCGに興味はなかったわけですね。

内田:2年次に進級してからも志望業界や職種をどうするか決めかねていましたが、それでも何社かの求人に応募しました。そんな折、担任の先生からSCCの存在を教えてもらったのです。でも「サンジゲンみたいな大手の会社に自分が入れるわけがない」と思っていたので、SCCの選考を通過したと聞いたときには心底びっくりしました。

  • 
SCCの講座風景。サンジゲンとギャラクシーグラフィックスでの映像制作を志す、新卒と、アニメ・映像制作業界未経験者に、サンジゲン流に特化したアニメCG制作の基礎を身に付けてもらう無料講座。教室はサンジゲンの東京本社内にある。カリキュラムは1年ごとに、サンジゲンの最新の作品制作のトレンドを取り入れたものに変更されている。ポートフォリオ・履歴書・職務経歴書などによる選考を通過した応募者は、3ヶ月間の全課程を修了した後、課題・面接選考を経て、サンジゲンやギャラクシーグラフィックスのスタッフとして採用される。詳しくは「サンジゲン・クリエイティブ・サーキットとは」を参照してほしい(写真提供_サンジゲン)


C:SCCの同期は何人くらいいましたか?

内田:15人くらいですね。土日コースと平日コースがあり、自分は平日コースに通っていました。講座がない時間も「フリータイム」として教室が開放されるので、自分のペースで自由に課題をやることができました。並行して学校にも通っていましたが「就職しなきゃ」という気持ちが強かったので、SCCの方を優先していました。学校の授業を途中で抜け出して、SCCに来ることもありました(笑)。

C:当時は、学校でMayaを使って卒業制作をつくり、SCCで3ds Maxを使って課題をやり......という日々だったわけですね。

内田:そうなんです。だから頭の中がごちゃごちゃになりました。微妙にショートカットキーがちがったりするので(笑)。SCCでは、モデリングからアニメーション、素材の合成まで、アニメCGのつくり方を一通り勉強しました。その中でアニメーションが1番楽しかったので、アニメーターを志望することにしたんです。ただ、SCCの同期にはすごい人がいっぱいいたので「講座が終わっても、まず採用されないだろうな」と思っていました。それでも講座は楽しかったし、すごく濃密な内容だったので、この経験は次に生かせると思っていました。

C:そんな予想に反し、採用されて今にいたるわけですが、採用の要因はどこにあったと感じていますか?

内田:ひとつひとつの課題を、しっかり仕事を仕上げるつもりでやっていました。だから全部ではなく、自分で「できた」と思う課題だけを提出したのですが、量ではなく、質というか、完成度の面で評価してもらえたんだろうと思います。SCCの課題は、実際の仕事と全く同じながれで納品データをつくることが求められたので、勉強になったし緊張感もありました。実際の仕事だと、データの名前の付け方がちがうだけでエラーが発生したりしますから。

CGを理解した演出や監督を、CGチームの中から輩出したい

C:採用されてから今日までの間に、仕事の内容はどのように変化しましたか?

内田:最初に任された仕事は、先輩が担当したカットを引き継いで、髪の毛を揺らしたり、めり込みを修正したりというものでした。誰にどんなカットを割り振るかはアニメーションディレクターが決めるのですが、徐々に難しいカットを任せてもらえるようになりました。入社から2ヶ月くらいで簡単なカットを丸ごと任せてもらえるようになり、半年くらいでキャラクターが動き回るカットも渡されるようになりました。

C:今までやってきて、辞めたくなったことはありますか?

内田:今のところはないですね。両親から聞いていたよりも休みはあるし、基本的に毎日家に帰れますし、楽しくやってます。

▲【左】社内にて、アニメーションを制作中の内田氏(写真提供_サンジゲン)/【右】社内に展示してあるギター「ESP×バンドリ!コラボレーションモデル」の前で、CGWORLD取材陣からの「背景に合わせたポーズを決めてください!!」という無茶ぶりに快く応じてくれた内田氏


C:最後に、今後の抱負を聞かせていただけますか?

内田:今はアニメーションだけを担当していますが、いずれはモデリングやリギングも覚えたいです。その経験をアニメーションに反映すれば、さらにいい仕事ができるようになると思います。例えばちょっとしたモデルやリグの変更を自分でできるようになれば、制作時間の短縮につながります。

C:アニメCGの場合は、カット単位でモデルの形を変えたり、リグを追加したりするという話をよく聞きますからね。

内田:実際、MV「ツナグ、ソラモヨウ」の制作でも、結構モデルの形を変えています。それを見越して当社のリガーさんは色々なリグを仕込んでくれていますが、それでも足りない部分が出てくるので、そういう場合は自分で調整したりもします。

▲「ツナグ、ソラモヨウ」カット1内の1フレーム。通常の3Dモデルを横から映してもこのような口の見映えにはならないため、カメラ位置に合わせて口の位置や形を調整している


C:より広範囲に映像を見ていくCGディレクターや、作品全体のCGの方向性を導いていくCGスーパーバイザーになりたいといった思いはありますか?

内田:今の段階では、このままアニメーターに特化したいという気持ちはないので、CGディレクターやCGスーパーバイザーを目指してスキルアップしていきたいです。会社としては、CGの利点や特徴、欠点を理解した演出や監督をCGチームの中から輩出したいという考えがあると聞いているので、そういう分野にも興味があります。CGに理解のない方の中には「CGなら何でもできるだろう」と思って提案してくる人もいますが、手描きの方が早い場合もあります。CGを理解している人の方が話をしやすいし、色々な挑戦もしやすいと思います。

C:お話いただき、ありがとうございました。2019年1月からの『BanG Dream! 2nd season』にも期待しています。

本連載のバックナンバー

No.01>>フロム・ソフトウェア(前編)(後編)
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No.04>>コナミデジタルエンタテインメント
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