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No.13(前編)>>グラフィニカ

No.13(前編)>>グラフィニカ

「キャラクターをつくりたい」という動機から、3DCGやイラストレーションの制作に挑戦し、「これを仕事にしたい」と考えるようになる人は数多くいる。そんな人たちの自己分析と業界研究の足がかりにしてもらうため、本連載では様々なゲーム会社やCGプロダクションを訪問し、キャラクター制作に従事しているアーティストたちの仕事内容やキャリアパスを伺っていく。

第13回では、TVアニメシリーズ『SSSS.GRIDMAN』(2018)を事例に、本作の3DCG制作を担当したグラフィニカにおけるモデラーとアニメーターの仕事を全3回に分けて紹介する。以降の前編では、本作のキャラクターと背景モデリングを担当した若手モデラー2名の仕事と、両氏の学生時代や就活時のエピソードを紐解いていく。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_蟹 由香 / Yuka Kani

▲『SSSS.GRIDMAN』放送直前PV。本作は円谷プロの特撮ドラマ『電光超人グリッドマン』(1993〜1994)を原点とする全12回のTVアニメシリーズで、2018年10月〜12月に放送された。アニメーション制作はTRIGGER、3DCG制作はグラフィニカが手がけており、グリッドマンや怪獣によるバトルシーンでは3DCGが多用されている

モデリングでもアニメーションでも、キャリア4〜6年目の若手が尽力

CGWORLD(以下、C):『SSSS.GRIDMAN』の3DCG制作では、グラフィニカの若手が尽力したそうですね。まずは本作における3DCGチームの構成を教えていただけますか?

大島渓太郎氏(以下、大島):モデリングに関しては、モデリングディレクターの板橋紗綾香がディレクションを担い、当社のシニアモデラーと私、さらに協力会社のモデラーさん数名で、グリッドマンやアシストウェポン、怪獣などのCGモデル制作を分担しています。リギングについては、全キャラクターモデルを私が担当しましたが、本作では3ds Maxに加え、アニメーション制作にMotionBuilderも使ったので、MotionBuilderへのコンバートとセットアップはアニメーションも担当しているシニアスタッフに担当していただきました。


C:グラフィニカでは、リギングもモデラーの仕事なのでしょうか?

大島:全員ではありませんが、モデリングからリギングまで一貫して担当する人は多いです。私の場合は自分からやらせてほしいとお願いしたこともあって、本作に関わる以前からリギングまで担当しています。

田口 愛氏(以下、田口):ビルや電線、街路樹などの背景と、クルマなどのプロップ(小道具)のモデリングは、当社の若手モデラー数名と私とで分担しました。本作の背景の多くは美術スタッフが描いていますが、CGのグリッドマンと怪獣が戦うシーンの背景は、CGで美術ガイドをつくっています。また、グリッドマンや怪獣がビルを破壊するシーンでは、一部のビルを美術ではなくCGで表現したので、美術ガイド用のCGモデルをベースに、破壊用のビルも制作しました。

  • 田口 愛
    武蔵野美術大学で建築デザインを4年間学んだ後、さらにHAL東京で3DCG制作を2年間学び、2015年4月にグラフィニカへ入社。同社の3DCG部に所属し、背景やキャラクターのモデリングを担当。『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)、『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』(2016)などの3DCG制作に参加。『PERSONA5 the Animation』(2018)ではモデリングディレクターを担当。『SSSS.GRIDMAN』ではビルや電線、街路樹などの背景モデリングを担う。


長濵夏海氏(以下、長濵):アニメーションの方は3DCG監督の宮風慎一がディレクションを行い、当社のシニアアニメーターと若手アニメーター、さらに協力会社のアニメーターさんとで分担しています。私は第1回から本作に参加し、最終回(第12回)までコンスタントに関わってきました。

  • 長濵夏海
    鹿児島キャリアデザイン専門学校でデザイン全般を3年間学んだ後、都内のゲーム会社に勤務し、キャラクターのモーション制作を担当。2017年の夏頃にグラフィニカへ移籍し、3DCG部でアニメーションを担当。『ガールズ&パンツァー 最終章』(2017〜)、『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(2018)などの3DCG制作に参加。『SSSS.GRIDMAN』では第1回、第3回、第5回、第8回、第10回、第11回、第12回のCGカット制作を担う。


C:先ほど、アニメーション制作ではMotionBuilderも使ったと大島さんが語っていましたが、アニメCG、しかもモーションキャプチャを使わない案件でMotionBuilderを使うのは珍しいように思います。なぜ導入したのでしょうか?

長濵:グリッドマンにしろ、怪獣にしろ、本作のキャラクターは情報量が多いのに加え、かなりダイナミックなアクションが求められたので、アニメーターのストレスを減らすため、動作が軽快なMotionBuilderを導入することになりました。実際、MotionBuilderを使わなければ、あそこまでのアクションは実現できなかったと思います。とはいえ、MotionBuilderの使用経験がある社内のアニメーターは限られていたので、本作を機に覚えた人もいましたね。今回のインタビューに参加しているアニメーターの中だと、近藤と私は使用経験がありましたが、及川は未経験でした。

及川恭平氏(以下、及川):アニメーターの中には、札幌スタジオ所属のスタッフも含まれています。私は、今日は出張で新宿スタジオに来ていますが、普段は札幌スタジオで作業をしています。本作では第7回と第10回のCGカット制作に参加しました。

  • 及川恭平
    札幌マンガ・アニメ学院(現、札幌マンガ・アニメ&声優専門学校)でアナログのイラスト制作を2年間学んだ後、2012年4月に新卒としてグラフィニカへ入社。同社の札幌スタジオにて3DCG部に所属し、アニメーションを担当。『楽園追放 -Expelled From Paradise- 』(2014)、『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)、『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』(2017)などの3DCG制作に参加。『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(2018)では3DCGIアニメーションディレクターを担当。『SSSS.GRIDMAN』では第7回、第10回のCGカット制作を担う。


C:東京と札幌のスタジオ間のやり取りは、今日の近藤さんのように、TV会議システムを使うのでしょうか?

▲TV会議システムにて取材対応する、札幌スタジオの近藤菜津美氏


近藤菜津美氏(以下、近藤):そうですね。メールやコミュニケーションツールも使いますが、打ち合わせや講習の際には、このシステムを使います。私の場合は、本作では第2回から参加し、最終回まで関わってきました。


  • 写真提供:グラフィニカ
  • 近藤菜津美
    吉田学園情報ビジネス専門学校で3DCG制作を2年間学んだ後、2015年4月に新卒としてグラフィニカへ入社。同社の札幌スタジオにて3DCG部に所属し、アニメーションを担当。『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』(2017)、『ガールズ&パンツァー 最終章』(2018)、『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(2018)などの3DCG制作に参加。『SSSS.GRIDMAN』では第2回、第3回、第4回、第9回、第10回、第11回、第12回のCGカット制作を担う。


「特撮らしさ」が求められた、グリッドマン&グールギラス

C:ここからは、本作における皆さんの仕事の中から、特に印象に残っているハイライトを伺っていきたいと思います。大島さんの場合は、やはりグリッドマンでしょうか?

大島:そうですね。グリッドマンと怪獣のグールギラス(第1回、第11回登場)は、本作で最初につくったCGモデルということもあり、特に時間をかけました。

▲後藤正行氏によるグリッドマンのデザイン画。ハイパーエージェントと名乗るエネルギー体で、主人公の響裕太と合体することで実体・巨大化する


▲西川伸司氏によるグールギラスのデザイン画。新条アカネが制作したフィギュアから生み出された怪獣で、フィギュアの骨組みに使われた針金が、角や尻尾の先端から突出している


C:どちらのデザイン画も一般的なアニメ用の設定画ではないので、線が多いですし、影やハイライトの表現にグラデーションが使われていますね。これを基に、アニメ用のCGモデルを制作したのでしょうか?

大島:そうです。このデザイン画に加え、雨宮 哲監督やアニメーターさんの描いたアクションの参考画も送っていただいたので、イメージはつかみやすかったです。少し遅れて第1回の絵コンテも届いたので、それも参考にしながらモデリングを進めました。例えば第1回では足が大きく映っていたので、足のディテールもちゃんとつくる必要があるなど、指針になる情報は数多くありましたね。

C:雨宮監督やほかのスタッフから、具体的なオーダーはありましたか?

大島:デザイン画の情報を省略し、セル調のルックに変更する必要があったので、省略の方向性は監督やディレクターの板橋に確認しました。「クリーチャーではなく、特撮のスーツアクターや着ぐるみをつくっていると思ってください」という指示は、打ち合わせやチェックのたびに繰り返し強調されました。

▲先のデザイン画を基に大島氏が制作したCGモデルに対する修正指示の一例。「デザイン画に合わせつつ、3DCGとしての格好良さを意識しながらモデリングしました。特にシルエット調整にはすごく時間をかけています。ブラッシュアップを続ける中で、当初の形状よりもスマートになっていったように思います」(大島氏)


C:グールギラスは、終始合っていない目の焦点や、骨組みの針金がそのまま突出したような爪の造形などが「着ぐるみのお約束をちゃんと再現している!」と放送直後から話題になっていましたね。

大島:カメラワークによっては調整が必要かもしれないと思い、目の焦点を合わせるリグも付けはしたのですが、再三にわたって「いらない」と言われてしまいました(笑)。

C:言われはしても、念のために付けておきたくなる気持ちはわかります(笑)。

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

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