記事の目次

    「キャラクターをつくりたい」という動機から、3DCGやイラストレーションの制作に挑戦し、「これを仕事にしたい」と考えるようになる人は数多くいる。そんな人たちの自己分析と業界研究の足がかりにしてもらうため、本連載では様々なゲーム会社やCGプロダクションを訪問し、キャラクター制作に従事しているアーティストたちの仕事内容やキャリアパスを伺っていく。

    第13回では、TVアニメシリーズ『SSSS.GRIDMAN』(2018)を事例に、本作の3DCG制作を担当したグラフィニカにおけるモデラーとアニメーターの仕事を全3回に分けて紹介する。前編のモデラーの仕事に続き、以降の中編では、長濵夏海氏が担当した第1回のグリッドマンのキックや、及川恭平氏が担当した第7回の板野サーカスのカットなど、全5カットにおけるアニメーターの仕事と、両氏の学生時代や就活時のエピソードを紐解いていく。

    TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
    PHOTO_蟹 由香 / Yuka Kani

    「もっと格好悪く」というリテイクが出たグリッドマンのキック

    CGWORLD(以下、C):大島さん、田口さんに続き、本作における長濵さんの仕事の中からも、特に印象に残っているハイライトをお聞かせください。

    長濵夏海氏(以下、長濵):第1回、第3回、第10回から、お気に入りのカットをひとつずつ挙げていきます。第1回は、グリッドマンのキック(第1回 20:33あたり)です。

    C:グリッドマンの手刀によってグールギラスの首が切断された後のカットですね。一連のシーンでは、切断面の表現まで『電光超人グリッドマン』の特撮に忠実なのが良いですね。

    長濵:動きに関しても、特撮らしさが求められました。本カットのレイアウトのテイク1では、もっとタメツメのきいたキレのある動きを付けたのですが、雨宮 哲監督から「もっと格好悪くしてほしい」というリテイクをいただきました。特撮でこういうキックを撮影する場合は、アクターさんをワイヤーでつるしたり、踏み台を使ったりします。「ワイヤーが切れて、落ちた足がたまたま当たるような感じにしてください」というオーダーをいただいたので、テイク2では体勢を崩して落ちるような感じにしました。

    本カットの制作を通して監督のやりたいことがわかり始めたものの、単に失敗しているだけのように見られないか、本作が目指す表現が視聴者に理解されるだろうかと、放送されるまではすごく不安でした。


    • レイアウトのテイク1(13フレーム・1/1)

    • レイアウトのテイク2(13フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(38フレーム・1/1)

    • レイアウトのテイク2(34フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(41フレーム・1/1)

    • レイアウトのテイク2(39フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(78フレーム・1/1)

    • レイアウトのテイク2(78フレーム・1/1)

    ▲長濵氏が担当した、第1回のカット(第1回 20:33あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はレイアウトのテイク2。基本的に2コマ打ち(※1)で制作されている。「もっと格好悪くしてほしい」というリテイクを受け、跳ねるようなキレのあるキックが、体勢を崩して落ちるようなキックに変更されている。なお本作では、エフェクト制作やカメラワークも各カットの担当アニメーターが担っている

    ※1 アニメーションは1秒間に24フレームの画を連続再生することで動きを表現しており、異なる24枚の画を使う場合はフルアニメーション(フルコマ)と呼ぶ。2コマ打ちの場合は同じ画を2枚ずつ、3コマ打ちの場合は同じ画を3枚ずつ連続再生する。本作のアニメCG制作では、フルコマ、2コマ打ち、3コマ打ちが併用されており、同じカット内であっても、演出意図に応じた使い分けがなされている


    ▲レイアウトのテイク1の映像


    ▲レイアウトのテイク2の映像



    • モーションのテイク1(13フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(13フレーム・1/1)


    • モーションのテイク1(34フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(34フレーム・1/1)


    • モーションのテイク1(39フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(39フレーム・1/1)


    • モーションのテイク1(78フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(78フレーム・1/1)

    ▲【左列】同じく、モーションのテイク1/【右列】T撮のテイク。レイアウト、モーション、T撮の順番で、カットの完成度を高めていく。基本的な動きは先のレイアウトのテイク2と同様だが、火花もアニメーションも細かい調整が施されている


    ▲モーションのテイク1の映像


    ▲T撮のテイク1の映像。画面手前に配置された電柱と電線が遠近感を高めているのに加え、グリッドマンとグールギラスのスケール感も伝えている


    C:テイク1の跳ねるようなスタイリッシュなキックも、これはこれで良い感じですが、本作の目指す方向性ではなかったわけですね。つくり手としては不安だったでしょうが、第1回の放送直後から視聴者は大喜びでしたね。

    長濵:意外と皆さんわかってくださったので、嬉しかったです。

    ©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

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    必死に殴るアンチの横で
    クルマを可愛く跳ねさせる

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    必死に殴るアンチの横で、クルマを可愛く跳ねさせる

    C:第3回は馬乗りになったアンチによって、グリッドマンが何回もグーで殴られるカット(第3回 08:25あたり)ですね。

    長濵:ここではクルマを可愛く跳ねさせようとがんばりました。実際のクルマはこんな跳ね方をしないと思うのですが、ちょっとギャグっぽく、テンポ良く跳ねさせることを意識しました。


    • レイアウトのテイク1(21フレーム・1/1)

    • T撮のテイク2(21フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(23フレーム・1/1)

    • T撮のテイク2(23フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(25フレーム・1/1)

    • T撮のテイク2(25フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(29フレーム・1/1)

    • T撮のテイク2(29フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(36フレーム・1/1)

    • T撮のテイク2(36フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(43フレーム・1/1)

    • T撮のテイク2(43フレーム・1/1)

    ▲長濵氏が担当した、第3回のカット(第3回 08:25あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はT撮のテイク2。基本的に2コマ打ちで制作されている。画面左側の領域には、後工程で美術の歩道橋が追加された。レイアウトとT撮の23、25、29フレーム目を比較すると、アンチの拳がヒットするタイミングでグリッドマンが左手をもちあげる動きが追加されていることがわかる。この動きが加わったことで、視聴者の注意がグリッドマンにも向かいやすくなっている


    ▲レイアウトのテイク1の映像


    ▲T撮のテイク2の映像


    C:確かに可愛い仕上がりです。自家用車からトラックまで、10台以上ありますね。このカットのアンチはかなり必死なのに、いまいちシリアス成分に欠けるのは、クルマの動きによるところが大きいわけですね。加えて、振動に合わせて揺れる電線が良い仕事をしています。

    長濵:第1回のカット制作段階で、雨宮監督から「もっとクルマを増やしてほしい」というオーダーがあったので、第3回では最初から多めに配置していました。瓦礫や土煙は本作用につくられた汎用素材があるので、それらを3ds MaxやAfter Effects上で加工して配置しています。土煙は、殴られるグリッドマンがよく見えるように途中で若干薄くしました。

    脚のスケールを変え、重さや遠近感を強調

    C:第10回はグリッドナイトがビルの壁走りからジャンプして、ナナシBにフランケンシュタイナー(※2)を決めるカット(第10回 20:46あたり)ですね。よく見ると、田口さん制作(前編参照)のビルA〜ビルDがずらっと並んでいるのが面白いです。

    ※2 相手の頭部を自身の両太腿ではさんだまま回転し、マットに頭部を叩きつけるプロレスの投げ技。

    長濵:本カットではグリッドナイトの足がビルに接触しておりカメラも動くので、空と地面以外は3DCGで表現しています。ビルを配置する際には、向きを変えることでなるべく同じビルに見えないよう変化をつけました。制作途中で板野一郎さんにも動きをチェックしていただき、「カメラが脚をしっかりなめるように映した方が、重さも遠近感も出る」というアドバイスをもらったので、ジャンプするときの足の見せ方を変えました。


    • レイアウトのテイク1(48フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(48フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(50フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(50フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(52フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(52フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(54フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(54フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(56フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(56フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(58フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(58フレーム・1/2)

    ▲長濵氏が担当した、第10回のカット(第10回 20:46あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はT撮のテイク1。基本的に2コマ打ちで制作されている。レイアウトとT撮の50、52、54、56フレーム目を比較すると、脚のスケールが大きくなっており、グリッドナイトの重量感や、頭部との遠近感が強調されているのがわかる


    ▲レイアウトのテイク1の映像


    ▲T撮のテイク1の映像


    C:コマ送りして比べてみると、脚の大きさが全然ちがいますね。

    長濵:レイアウトのテイク1ではあっさり跳んでいたので、脚のスケールを徐々に大きくして、頭の大きさとのちがいを強調しています。

    C:シルエットもT撮の方が格好良いですし、修正を経て、さらに良いカットに仕上がったことがわかります。とはいえ1秒にも満たない一瞬の表現なので、素人の動体視力だと初見で理解するのは難しいですね。さすが、アニメーターの見る力はすごいです。本作を通して、長濵さんはどのような学びがあったと思いますか?

    長濵:本作では撮影段階でのエフェクトや特殊効果まで任せてもらえる機会が多かったので、新しいことを色々と勉強できました。


    宮風慎一氏(3DCG監督)からのコメント

    • 長濵は特撮のお約束を当初から理解していたので話が通じやすく、特撮から3DCGアニメーションへの落とし込みが特に上手かったです。第10回のフランケンシュタイナーカットをはじめ、高難度の取っ組み合いを多数担当してくれました。エフェクトやコンポジットの経験が少ないとのことだったので、各カットの新作エフェクトなども積極的に制作してもらっています。今後はぜひディレクターを経験してもらい、より多彩なカットのつくり方を修得してほしいです。

    もともとアニメが好きで、お芝居にすごく興味があった

    C:学生時代の話もお聞かせください。長濵さんは、いつ頃からアニメーターを志したのでしょうか?

    長濵:母校の鹿児島キャリアデザイン専門学校では、PhotoshopやAfter Effectsなどのツールの使い方やWeb制作など、デザイン全般を幅広く勉強しました。入学前から「3DCGって面白そうだな」と思っていたので、Mayaの使い方を教える選択授業も履修し、3DCGの基礎も学びました。アニメーションに興味をもったのは、ゲーム制作のサークルでドット絵の格闘ゲームをつくったのがきっかけでした。学校にはCGアニメーションに特化した授業はありませんでしたが、サークル活動や自主制作を通してアニメーションの基礎を吸収していきました。

    C:最初にゲーム会社へ就職した時点で、既にアニメーター志望だったのですね。

    長濵:はい。アニメーターを志すようになってからは、YouTube上のチュートリアルや専門書を参考にしたり、学校の先生に教わったりしながら、デモリール用のアニメーション作品をつくりました。サークルでつくっていたゲームは薩摩剣士隼人という鹿児島県の特撮ローカルヒーローを扱ったものだったので、特撮に興味をもつきっかけにもなりました。

    C:当時の経験が、『SSSS.GRIDMAN』の特撮表現にも活かされたわけですね。ゲーム会社からグラフィニカに転職した理由も教えていただけますか? 同じCGアニメーションの仕事でも、ゲームとアニメCGとではちがう部分もありますよね。

    長濵:もともとアニメが好きで、お芝居に興味があったのですが、「CG=ゲーム」のイメージが強かったので、最初はゲーム会社を志望しました。会社にもよりますが、私の所属していたゲーム会社ではお芝居を必要とする案件が少なかったのに加え、ゲーム開発ではプログラミングとの兼ね合いも求められるので、どうしてもアニメーターの自由度に制限がかかってしまうと感じました。そのため、自分のやりたいことを色々考え直してアニメCGをつくれる会社に転職しようと思ったのです。グラフィニカはいろんなジャンルの作品に携わっていて、キャラクターの動きが作画と並べてもとても自然だったので興味があったものの、レベルが高いから自分には無理だと思っていました。でも仲介してくださった転職エージェントの方に背中を押していただき、応募することにしました。

    C:今だから言える、学生時代に勉強しておけば良かったと思うことはありますか?

    長濵:私も、画づくりやデッサンの勉強をしておけば良かったなと思います。加えて、グラフィニカに入社するまでコンポジットの経験がほとんどなかったので、学生時代にもう少しコンポジットを勉強しておけば良かったとも思いますね。当時は、Mayaでアニメーションを付け、レンダリングをして、After EffectsやPremiereでカットをつないだら完成というつくり方しか経験していなかったのですが、アニメCGだとアニメーターが撮影処理(コンポジット)まで担当するケースがよくありますから。

    ©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

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    入社して以来
    一番苦労した板野サーカスのカット

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    入社して以来、一番苦労した板野サーカスのカット

    C:続いて、及川さんのハイライトを教えてください。

    及川恭平氏(以下、及川):参加した第7回と第10回から、担当カットをひとつずつ挙げていきます。第7回は、アシストウェポンのスカイヴィッターが、アンチに向かってアンプレーザーサーカスでトドメを刺すカット(第7回 20:06あたり)です。いわゆる板野サーカスのカットだったので、絵コンテにも「大変なカットですが、何卒よろしく」と書いてありました。ちょうど新宿スタジオに出張したタイミングで打ち合わせがあったので、雨宮監督から直々に「よろしく」とも言われましたね。

    C:かなり重たい一言ですね。第7回の登場怪獣のヂリバーは板野さんがデザインなさっていましたし、ここぞというタイミングでの板野サーカスでしたね。『楽園追放 -Expelled From Paradise- 』をはじめ、板野サーカス的なカットは様々な作品に登場していますが、本カット以前につくった経験はありましたか?

    及川:今回が初めてでした。尺も物量もあったので、かなり大変でした。まちがいなく、グラフィニカに入社して以来、一番苦労したカットでしたね。宮風も特に慎重にチェックしてくれたし、板野さんにも見ていただいたので、レイアウトのテイク1の段階でそれなりの完成度になっていると思います。社内チェック前のテイク1はもっと酷かったので、もう見たくないです(苦笑)。

    C:社外に出すテイク1の前に、社内でそれなりの数のリテイクがあったわけですね。

    及川:はい。中途半端なものを社外の方にお見せしたくなかったので、社内でしっかり詰めました。スピード感や格好良さを大事にする一方で、画面をごちゃごちゃさせないよう、空間や隙間のもたせ方に注意しています。


    • レイアウトのテイク1(64フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(64フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(65フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(65フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(66フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(66フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(67フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(67フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(68フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(68フレーム・1/2)


    • レイアウトのテイク1(69フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(69フレーム・1/2)

    ▲及川氏が担当した、第7回のカット(第7回 20:06あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はT撮のテイク1。基本的にフルコマで制作されているが、画面手前の広範囲にビームが映る瞬間は2コマ(65フレームと66フレーム)を使い、次の1コマ(67フレーム)で一気に画面の奥へ飛ばすことで、気持ちの良いスピード感と遠近感を表現している。レイアウトとT撮の67フレーム目を比較すると、奥へ飛んだ後のビームの面積が減らされており、空間が整理されている点も面白い


    ▲レイアウトのテイク1の映像


    ▲T撮のテイク1の映像


    C:どのビームもすごく複雑な動きをしていますが、どんなプロセスでつくっているのでしょうか?

    及川:最初に3ds Max上で3本くらいのメインのビームの動きを付け、ちょっとずつサブ的なビームを足していきました。最初・真ん中・最後という感じで全体のキーフレームをざっくりと打ってから、段階的に間を詰めています。絵コンテには大枠のながれだけが描いてあったので、細かい軌道は自分で考えながらつくりました。

    板野さんが「ビームにも1人1人ちがう性格があって、相手に真っ直ぐ飛んでいくやつもいれば、くねくね曲がっていくやつもいる」という話をよくなさっているので、ひとつひとつの個性を考えながら、面白い動きをさせるように気を付けました。最終的には、After Effects上で描き足したビームもあります。着手してから、レイアウトのテイク1までに1週間半、トータルだと2週間半くらいかかりましたね。


    • T撮のテイク1(96フレーム・1/2)

    • T撮のテイク1(99フレーム・1/2)

    ▲96フレーム、99フレームあたりになると、個々のビームの軌道がかなり個性的になっている

    背景の小道具も併用し、怪獣の重量感を表現

    C:第10回は、怪獣のナナシBがアンチに向かって一直線に突進するカット(第10回 19:43あたり)ですね。

    及川:怪獣が突進するだけの何てことはないカットですが、ナナシBの気持ち悪さがよく表現できたと思うので気に入っています。本カットでも電線を盛大に揺らしたし、街路樹の葉も揺らしました。キャラクターの動きだけで重量感を表現するのは難しいので、こういった背景の小道具も併用できるのは有り難いです。


    • レイアウトのテイク1(1フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(1フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(30フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(30フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(51フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(51フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(56フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(56フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(60フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(60フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(64フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(64フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(68フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(68フレーム・1/1)


    • レイアウトのテイク1(71フレーム・1/1)

    • T撮のテイク1(71フレーム・1/1)

    ▲及川氏が担当した、第10回のカット(第10回 19:43あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はT撮のテイク1。基本的に2コマ打ちで制作されている。レイアウトとT撮とでナナシBの動きに大きな変化はないが、土煙・瓦礫・跳ねるクルマなどが加わったことで、重量感や迫力が増している


    ▲レイアウトのテイク1の映像


    ▲T撮のテイク1の映像


    C:本作を通して、及川さんはどんな学びがあったと思いますか?

    及川:長濵も言っていたように、本作ではこれまで以上にエフェクトを多用したので、最初からエフェクトを盛る前提でシーンの組み立て方を考える習慣が身に付きました。


    宮風慎一氏(3DCG監督)からのコメント

    • 及川は、アニメーションから、エフェクト、コンポジットまで満遍なくこなせるので、どこに配置しても確実に成果を上げられる、アサインする側が安心して任せられる存在に成長しています。本作では、第7回の板野サーカスカットの仕事が特に印象的でした。既にディレクションもほかの作品で経験しているので、今後は打ち合わせ段階で画面設計などを提案できるようになると、さらにカット発注時の精度が上がっていくと思います。

    アナログ作品だけのポートフォリオでグラフィニカに応募

    C:及川さんは、3DCG未経験の状態でグラフィニカに入社したそうですね。入社までの経緯も教えていただけますか?

    及川:母校の札幌マンガ・アニメ学院(現、札幌マンガ・アニメ&声優専門学校)ではアナログのイラスト制作を勉強していたので、イラストやデザイン分野での就職を目指したものの、なかなか上手くいきませんでした。そんな折、当社の社長(伊藤暢啓氏)が学校に来て、会社説明をしてくれたのです。「3DCG未経験でも選考対象になる」「イラスト制作を通して学んだことは、3DCG制作にも活かせる」という話を聞き、だったら応募してみようと思いました。応募時のポートフォリオは全部アナログ作品だったのですが、無事に採用されて今にいたります。

    C:アナログからデジタル、おまけに2Dから3Dへの転向となると、勉強することだらけだったでしょうね。

    及川:そうですね。しかも1年目から『楽園追放』のカット制作を担当したので「僕なんかがやって良いのかな?」と思っていました。3DCGのことは入社後に教えてもらいましたが、専門学校でちゃんと勉強してきた周囲の人たちとの間には大きな差があって、今も全然追いつけていないと思います。

    C:板野サーカスのカットをつくっても、まだそう思うとは(苦笑)。及川さんが謙虚なのか、周りがすごいのか、両方なのか......。とはいえ『楽園追放』を見て入社した大島さんや田口さんと一緒に『SSSS.GRIDMAN』をつくったわけですから、素敵な巡り合わせですね。近い将来、『SSSS.GRIDMAN』を見た人が、新たな若手として入ってくるかもしれません。かれこれ約6年この仕事を続けてきて、学校で学んだことは活かされていると感じますか?

    及川:はい。学校ではクロッキー、デッサン、イラストなど、ずっと絵を描いていましたが、そこで身に付けたことはCGアニメーションをつくる上でも重要だと思います。

    C:イラストだけでなく、クロッキーやデッサンも描いていたんですね。

    及川:結構な時間がカリキュラムに組み込まれていましたね。石膏像を描いたり、学生同士でお互いを描き合ったり、自分の手や靴を描いたりと、色々やっていました。CGアニメーションをつくるときには、参考用の動画を見たり、写真を見たりするんですが、観察力が弱いと、見たものと全然ちがうものをつくってしまうんです。動画や写真のどこが重要なのかを読み取る力は、学生時代にたくさん絵を描くことで身に付いたように思います。

    C:クロッキーやデッサンは、観察・理解・表現の反復練習とも言えますからね。



    中編は以上です。 後編はこちらでご覧いただけます。

    ©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

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