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No.13(中編)>>グラフィニカ

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必死に殴るアンチの横で、クルマを可愛く跳ねさせる

C:第3回は馬乗りになったアンチによって、グリッドマンが何回もグーで殴られるカット(第3回 08:25あたり)ですね。

長濵:ここではクルマを可愛く跳ねさせようとがんばりました。実際のクルマはこんな跳ね方をしないと思うのですが、ちょっとギャグっぽく、テンポ良く跳ねさせることを意識しました。


  • レイアウトのテイク1(21フレーム・1/1)

  • T撮のテイク2(21フレーム・1/1)


  • レイアウトのテイク1(23フレーム・1/1)

  • T撮のテイク2(23フレーム・1/1)


  • レイアウトのテイク1(25フレーム・1/1)

  • T撮のテイク2(25フレーム・1/1)


  • レイアウトのテイク1(29フレーム・1/1)

  • T撮のテイク2(29フレーム・1/1)


  • レイアウトのテイク1(36フレーム・1/1)

  • T撮のテイク2(36フレーム・1/1)


  • レイアウトのテイク1(43フレーム・1/1)

  • T撮のテイク2(43フレーム・1/1)

▲長濵氏が担当した、第3回のカット(第3回 08:25あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はT撮のテイク2。基本的に2コマ打ちで制作されている。画面左側の領域には、後工程で美術の歩道橋が追加された。レイアウトとT撮の23、25、29フレーム目を比較すると、アンチの拳がヒットするタイミングでグリッドマンが左手をもちあげる動きが追加されていることがわかる。この動きが加わったことで、視聴者の注意がグリッドマンにも向かいやすくなっている


▲レイアウトのテイク1の映像


▲T撮のテイク2の映像


C:確かに可愛い仕上がりです。自家用車からトラックまで、10台以上ありますね。このカットのアンチはかなり必死なのに、いまいちシリアス成分に欠けるのは、クルマの動きによるところが大きいわけですね。加えて、振動に合わせて揺れる電線が良い仕事をしています。

長濵:第1回のカット制作段階で、雨宮監督から「もっとクルマを増やしてほしい」というオーダーがあったので、第3回では最初から多めに配置していました。瓦礫や土煙は本作用につくられた汎用素材があるので、それらを3ds MaxやAfter Effects上で加工して配置しています。土煙は、殴られるグリッドマンがよく見えるように途中で若干薄くしました。

脚のスケールを変え、重さや遠近感を強調

C:第10回はグリッドナイトがビルの壁走りからジャンプして、ナナシBにフランケンシュタイナー(※2)を決めるカット(第10回 20:46あたり)ですね。よく見ると、田口さん制作(前編参照)のビルA〜ビルDがずらっと並んでいるのが面白いです。

※2 相手の頭部を自身の両太腿ではさんだまま回転し、マットに頭部を叩きつけるプロレスの投げ技。

長濵:本カットではグリッドナイトの足がビルに接触しておりカメラも動くので、空と地面以外は3DCGで表現しています。ビルを配置する際には、向きを変えることでなるべく同じビルに見えないよう変化をつけました。制作途中で板野一郎さんにも動きをチェックしていただき、「カメラが脚をしっかりなめるように映した方が、重さも遠近感も出る」というアドバイスをもらったので、ジャンプするときの足の見せ方を変えました。


  • レイアウトのテイク1(48フレーム・1/2)

  • T撮のテイク1(48フレーム・1/2)


  • レイアウトのテイク1(50フレーム・1/2)

  • T撮のテイク1(50フレーム・1/2)


  • レイアウトのテイク1(52フレーム・1/2)

  • T撮のテイク1(52フレーム・1/2)


  • レイアウトのテイク1(54フレーム・1/2)

  • T撮のテイク1(54フレーム・1/2)


  • レイアウトのテイク1(56フレーム・1/2)

  • T撮のテイク1(56フレーム・1/2)


  • レイアウトのテイク1(58フレーム・1/2)

  • T撮のテイク1(58フレーム・1/2)

▲長濵氏が担当した、第10回のカット(第10回 20:46あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はT撮のテイク1。基本的に2コマ打ちで制作されている。レイアウトとT撮の50、52、54、56フレーム目を比較すると、脚のスケールが大きくなっており、グリッドナイトの重量感や、頭部との遠近感が強調されているのがわかる


▲レイアウトのテイク1の映像


▲T撮のテイク1の映像


C:コマ送りして比べてみると、脚の大きさが全然ちがいますね。

長濵:レイアウトのテイク1ではあっさり跳んでいたので、脚のスケールを徐々に大きくして、頭の大きさとのちがいを強調しています。

C:シルエットもT撮の方が格好良いですし、修正を経て、さらに良いカットに仕上がったことがわかります。とはいえ1秒にも満たない一瞬の表現なので、素人の動体視力だと初見で理解するのは難しいですね。さすが、アニメーターの見る力はすごいです。本作を通して、長濵さんはどのような学びがあったと思いますか?

長濵:本作では撮影段階でのエフェクトや特殊効果まで任せてもらえる機会が多かったので、新しいことを色々と勉強できました。


宮風慎一氏(3DCG監督)からのコメント

  • 長濵は特撮のお約束を当初から理解していたので話が通じやすく、特撮から3DCGアニメーションへの落とし込みが特に上手かったです。第10回のフランケンシュタイナーカットをはじめ、高難度の取っ組み合いを多数担当してくれました。エフェクトやコンポジットの経験が少ないとのことだったので、各カットの新作エフェクトなども積極的に制作してもらっています。今後はぜひディレクターを経験してもらい、より多彩なカットのつくり方を修得してほしいです。

もともとアニメが好きで、お芝居にすごく興味があった

C:学生時代の話もお聞かせください。長濵さんは、いつ頃からアニメーターを志したのでしょうか?

長濵:母校の鹿児島キャリアデザイン専門学校では、PhotoshopやAfter Effectsなどのツールの使い方やWeb制作など、デザイン全般を幅広く勉強しました。入学前から「3DCGって面白そうだな」と思っていたので、Mayaの使い方を教える選択授業も履修し、3DCGの基礎も学びました。アニメーションに興味をもったのは、ゲーム制作のサークルでドット絵の格闘ゲームをつくったのがきっかけでした。学校にはCGアニメーションに特化した授業はありませんでしたが、サークル活動や自主制作を通してアニメーションの基礎を吸収していきました。

C:最初にゲーム会社へ就職した時点で、既にアニメーター志望だったのですね。

長濵:はい。アニメーターを志すようになってからは、YouTube上のチュートリアルや専門書を参考にしたり、学校の先生に教わったりしながら、デモリール用のアニメーション作品をつくりました。サークルでつくっていたゲームは薩摩剣士隼人という鹿児島県の特撮ローカルヒーローを扱ったものだったので、特撮に興味をもつきっかけにもなりました。

C:当時の経験が、『SSSS.GRIDMAN』の特撮表現にも活かされたわけですね。ゲーム会社からグラフィニカに転職した理由も教えていただけますか? 同じCGアニメーションの仕事でも、ゲームとアニメCGとではちがう部分もありますよね。

長濵:もともとアニメが好きで、お芝居に興味があったのですが、「CG=ゲーム」のイメージが強かったので、最初はゲーム会社を志望しました。会社にもよりますが、私の所属していたゲーム会社ではお芝居を必要とする案件が少なかったのに加え、ゲーム開発ではプログラミングとの兼ね合いも求められるので、どうしてもアニメーターの自由度に制限がかかってしまうと感じました。そのため、自分のやりたいことを色々考え直してアニメCGをつくれる会社に転職しようと思ったのです。グラフィニカはいろんなジャンルの作品に携わっていて、キャラクターの動きが作画と並べてもとても自然だったので興味があったものの、レベルが高いから自分には無理だと思っていました。でも仲介してくださった転職エージェントの方に背中を押していただき、応募することにしました。

C:今だから言える、学生時代に勉強しておけば良かったと思うことはありますか?

長濵:私も、画づくりやデッサンの勉強をしておけば良かったなと思います。加えて、グラフィニカに入社するまでコンポジットの経験がほとんどなかったので、学生時代にもう少しコンポジットを勉強しておけば良かったとも思いますね。当時は、Mayaでアニメーションを付け、レンダリングをして、After EffectsやPremiereでカットをつないだら完成というつくり方しか経験していなかったのですが、アニメCGだとアニメーターが撮影処理(コンポジット)まで担当するケースがよくありますから。

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

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