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No.09(後編)>>プラネッタ

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KeyShotを使い始めて以降、光沢表現がレベルアップ

五十嵐:最後に「ユニコーンガンダム(サイコシャード)」の事例をご紹介します。

C:これまた手間のかかりそうな、情報量の多いモビルスーツですね(汗)。

▲【左】「ユニコーンガンダム(サイコシャード)」のためのラフ。このモビルスーツは『機動戦士ガンダムUC(ガンダムユニコーン)』に登場する。本作では、サイコシャードと呼ばれる光の結晶体を全身にまとう劇中シーンを再現している/【右】クライアントからの修正指示。「自分の体内からあふれ出てくる力を押さえ込もうとするシーンなので、腕や脚を内旋気味にしてほしいという要望をいただきました」(五十嵐氏)
© 創通・サンライズ


五十嵐:この機体も『ガンダムトライエイジ』の中では初登場でした。クライアントから「ユニコーンガンダム」の3DCGモデルをご提供いただき、Maya上でつくった結晶体を追加していきました。複数の結晶からなるグループをつくり、それを複製、配置しています。この結晶の配置にも設定があり、完全なシンメトリーではないので、ひとつひとつ確認しながら慎重に配置しました。本作の場合、この配置に一番時間がかかりましたね。

C:たいへんそうですね......。

五十嵐:多分、今後も結晶体付きの「ユニコーンガンダム」を描く機会があるだろうと思い、丁寧につくりました。3DCGモデルの場合、一度つくってしまえばポージングやカメラワークを変えて何度でも再利用できます。

▲Mayaの画面に表示した「ユニコーンガンダム(サイコシャード)」の3DCGモデル。結晶体は五十嵐氏が制作している
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▲同じく「ユニコーンガンダム(サイコシャード)」の3DCGモデル
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▲【左】「ユニコーンガンダム(サイコシャード)」のレンダリング画像(カラー)/【右】同じくレンダリング画像(アンビエントオクルージョン)
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▲【左】同じくレンダリング画像(ノーマルマップ)。先に紹介した「パーフェクトストライクガンダム」と同様、アンビエントオクルージョンやノーマルマップはライティングを調整するための素材として使用する/【右】KeyShotでレンダリングされた、結晶体の光沢を表現するための画像
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  • 同じくレンダリング画像(マスク)。先のKeyShotでつくった画像と組み合わせることで、結晶体の光沢だけを調整できる
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▲【左】Mayaの画面に表示した本作の背景用3DCGモデル/【右】同じくレンダリング画像
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▲【左】完成画像。「結晶体の出現により多少は機体が損傷するだろうと思ったので、軽いひび割れを加筆しています」(五十嵐氏)/【右】RGBからCMYKに変換した完成画像。カードは印刷物なのでCMYKに変換して使用する必要がある。しかし変換すると結晶体の鮮やかな色味が失われてしまうため、RGB画像も合わせて納品したという。「本作の場合は変換するとすごく色味が変わるので、両方の画像を納品しました」(五十嵐氏)
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  • フレームを付けた状態の「ユニコーンガンダム(サイコシャード)」
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C:入社から今日までをふり返ってみて、最も成長したのはどんな点だと思いますか?

五十嵐:ポージングですね。何枚もカードイラストを描いていると、ポージングのアイデアが枯渇してくるのです。それで壁に直面したとき、色々な人が描いた絵を見まくって「いいな」と思う部分を吸収しました。複数の要素を組み合わせたり、自分なりのアレンジをしたりして、ちょっとずつクライアントに満足いただけるバリエーションを出せるようになりました。

大谷:もともと五十嵐はポージングが上手かったのですが、その期間を経て、出せるバリエーションが大幅に増えました。自分なりに研究をして、バリエーションを出すコツを習得したのだと思います。加えて光の扱い方が上手くなったとも思いますね。特にKeyShotを使い始めて以降、光沢表現や、コントラストのバランスがレベルアップしました。そして「言われたことを素直に聞く」という点が最大の強みだと思います。とにかく素直さがすごいので、言われたことを着実に吸収し、高い伸び率で成長しています。

C:五十嵐さんはまだ20代後半ですから、ここからさらに成長しそうですね。今後の仕事に対して、どんなビジョンをお持ちですか?

五十嵐:これまであまり描いてこなかったもの、人型のキャラクターや背景なども積極的に描いていきたいです。3DCGを使わず、ゼロから2Dで描く機会も増やしたいですね。2Dのレベルが上がれば、3DCGを使う絵のレベルも上がると思います。それから自分より若い人に対して、自分の知識や技術を教えることにも取り組みたいです。自分の事業部には2年前に入社した新卒スタッフがいて、彼もまた、ポージングに悩んでいた時期がありました。そのときに自分なりのポージングのコツを資料にまとめ、彼に渡したところ、自分自身の理解も深まったのです。それまで感覚でやってきたことを言葉にして人に伝えたことで、自分の考えを整理することができました。だから今後は人材育成にも力を入れていきたいです。

C:お話いただき、有難うございました。ご自身のコツをまとめた資料が溜まったら、ぜひ大谷さんのように書籍化してくだることを期待しています。

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