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キャラクターの魅力をモーションで伝えきる!「VR空間におけるキャラクターの自然な存在感を実現する方法」|CGWCCレポート(8)

キャラクターの魅力をモーションで伝えきる!「VR空間におけるキャラクターの自然な存在感を実現する方法」|CGWCCレポート(8)

「CGWORLD 2019 クリエイティブカンファレンス」で高い評価を得た「VR空間におけるキャラクターの自然な存在感を実現する方法」。ゲームキャラクターの魅力を表現する上で、アニメーターとTAの関係にまで踏み込んだ、希有な内容となった。改めてセッションを振り返りながら、ポイントを紹介しよう。

TEXT&PHOTO_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
© AMATA K.K. / LL Project

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3DアニメーターとTAの関係性がクオリティを左右する

2Dイラストレーターや3Dモデラーに比べて、人気の低い3Dアニメーター(モーションデザイナー)。では、「ゲーム中で登場するキャラクターが1体のみで、意味不明な無国籍語を話す」としたらどうか。キャラクターの魅力を表現する上で、がぜん重要になるのがジェスチャや仕草といった、動きの要素になることは明らかだろう。このことはVRゲームで、より重要な要素となる。キャラクターの全身像から表情のアップまで、違和感なく表現することが求められる。ちょっとした違和感でVRの魔法が解けてしまうからだ。

もっとも、どんなに優れた3Dアニメーターであっても、キャラクターのリギングが貧弱であれば、本来のスキルを発揮することは難しい。リグだけでなく、ツールの使いやすさも重要だ。これらを担当するのがテクニカルアーティスト(TA)で、その重要性が急増しているのは周知の通り。このように3DアニメーターとTAが良好な関係性をもつことは、ゲームのクオリティアップと生産性の向上を追求する上で、必須条件となる。ただし、これらは個々のデベロッパーの能力に左右される。そのため、なかなか理想の環境を整えることが難しいのも事実だ。

  • 福山敦子(あまた/3Dアニメーター)
    amata.co.jp

こうした中、CGWORLD 2019 クリエイティブカンファレンスで行われたセッション「VR空間におけるキャラクターの自然な存在感を実現する方法」は、この両者が高いレベルで結実すると、どのような効果をもたらすかについて、わかりやすく知らしめる内容だった。そこで今回あまたで3Dアニメーターをつとめる福山敦子氏と、3Dアニメーター兼TAのアレクシス・ブロードヘッド氏の協力を得て、講演内容を改めて紹介する。VRインディゲームならではの尖ったゲームデザインと、それを表現した3Dアニメーター&TAのノウハウを、ぜひ参考にしていただきたい。

  • アレクシス・ジャスミン・ブロードヘッド(あまた/3Dアニメーター兼TA)
    amata.co.jp

NPCと非言語的コミュニケーションをする脱出ゲーム

はじめに本講演のベースとなったVRアドベンチャーゲーム『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』について、簡単に紹介しよう。本作はVRだから実現できる世界観と、仮想キャラクターとのコミュニケーションを組み合わせたVR脱出ゲームだ。謎の館に閉じ込められたプレイヤーが、謎の少女カティアと力を合わせて様々な謎やしかけを解き明かしながら、館からの脱出を目指すというもの。2019年11月に同社より発売され、PlayStation VR、HTC Vive/同Pro/同Cosmos、Oculus Rift/同S、Oculus Quest、Windows Mixed Reality、Valve Index上でプレイすることができる。

『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』
VR脱出アドベンチャーゲーム
好評発売中
lastlabyrinth.jp

本作のポイントはプレイヤーが車椅子に拘束されていて、身動きが取れないため、ゲーム内のあらゆる動作をカティアに代行させている点だ。ただし、カティアは架空の言語を話すため、言語以外でコミュニケーションをとる必要がある。そこで用いられるのが、プレイヤーの頭部に装着されているレーザーポインタだ。ゲーム世界で調べたいところをポイントすると、自分のかわりにカティアがその場所まで移動し、扉を開けたり、しかけを動かしたりしてくれる。判断に迷ったときは指示を求めるように振り向くので、頭を動かして「はい」、「いいえ」を答えるしくみだ。

このように本作では、プレイヤーとカティアがお互いにうなずきあいながら、共同作業でパズルをクリアしていく。背景にあるのが、「相手の行動を反復することが相手との心理的な距離を縮める」という考え方だ。カティアが9~12歳の少女にデザインされているのも偶然ではない。相手が子どもであれば、パズルを解くのにプレイヤーを頼らざるを得ないことが、自然と理解される。車椅子に座っているプレイヤーと視線を合わせるためにも、その年頃の身長がちょうど良い。キャラクターと視線を合わせられることがVRの特徴であり、これによって没入感が増すからだ。

このように本作のコンセプトは「NPCとの非言語コミュニケーションが生み出すつながり」だ。VRというテクノロジーや、カティアのキャラクターデザイン、ジェスチャベースの操作といった要素は、すべてこのコンセプトにもとづいて決定されている。目的はプレイヤーに「カティアとの一体感を感じさせ、心を通わせられる存在」だと認識してもらうこと。もっとも、そのための近道はどこにもない......福山氏とブロードヘッド氏は口を揃える。中でもビジュアル面で重視されたのが「外見」、「動作の情報量」、「動作のボリューム」、「意思」だった。以下、ひとつずつ解説していこう。

カティアの外見

「VRは視覚優位のデバイスなので、プレイヤーに短時間でキャラクターの魅力を感じてもらうために、キャラクターの第一印象をとても重視しました」。開発チームを代表して、ブロードヘッド氏はこのように語った。キャラクターに興味をもってもらえなければ、いくら存在感をつくり出そうとしても成立しないからだ。一方でキャラクターの外見をリアルに寄せすぎても、プレイヤーに違和感を抱かせる恐れがある。そのため開発チームでは、フォトリアルとファンタジーの中道を目指した。「VR上の存在感を何よりも優先するため、キャラクターデザインとラフモデルの制作をくり返しながら進めました」。

ちなみに、人間のシルエットで重要な点に頭と肩がある。トイレの性別を表す記号が丸と三角だけで成立するのも、人間がそこから頭と肩を認識できるからだ。そのためカティアも肩の輪郭を見せることが検討されたが、子どもということもあり、半透明の生地が用いられた。髪がショートになっているのも、遠くからでもシルエットがよくわかるためだ。また、ショートヘアはアクティブな子どもの記号でもある。手足に目を惹く色を使っていたり、長靴を履いていたり、手首にリボンを巻いていたりするのも、キャラクターの視認性を増すための工夫のひとつとなっている。

頭部のデザインでは、目から深い印象を残すことが重視された。前述のようにVRゲームにおいてプレイヤーとキャラクターが視線を合わせる行為は、キャラクターの存在感を高める上で大きな演出効果をもたらす。ブロードヘッド氏は「非言語的なコミュニケーションの中で、最も重要なのが目の役割だそうです。そのため人間のようでいて、少し違和感がある目になっています」と説明する。実際、カティアの目は色・彩度・形・虹彩と瞳孔の比率が、少し人間と異なる。シェーダも少し違和感を抱かせるように調整しており、どんなライティングでもVRで見たとき、虹彩が目立つようになっている。

ライティングにおいてもNPR(ノンフォトリアリスティックレンダリング)と専用ライトの組み合わせで、カティアを背景から目立たせるように調整された。その上で、そこに立っているように見せるため、環境光を強めに受けるようなシェーダになっている。「これでカティアをVRで見たとき、かなり存在感が出るようになりました。しかし、その存在感は静的なものでしかありません。より自然な存在にするためには、動作の情報量を加えることが必要です」。そこで求められるのがモーションとなる。以下、講演を福山氏が引き継ぎ、具体的なテクニックを説明していった。

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