>   >  どこに行けば、キャラクターをつくれますか?:No.11(前編)>>ntny & フリュー
No.11(前編)>>ntny & フリュー

No.11(前編)>>ntny & フリュー

デザイン画をそのまま3D化してほしいとは、全く思っていない

C:林さんは、本作の企画・原案、プロデューサー兼ディレクターを務めたとのことですが、具体的にはどんなことをなさったのでしょうか?

林 風肖氏(以下、林):プロデューサー兼ディレクターって、学生の皆さんには想像しにくい肩書きだと思いますが、コンセプトを立て、制作方針を明示し、作品を通してユーザーの皆様に提供する体験を統一させることが主な役割です。キャラクターデザインだけでなく、ゲームに関わる全ての要素のプロデュースとディレクションを担当しますが、コンセプトやユーザーに提供する体験が守られていれば、細かいことは各セクションの専門家の審美眼に委ねるようにしています。その結果、いい化学反応が起こるように導いていくことを自分の仕事のやりがいとして、そこに重きを置いてやっています。

  • 林 風肖
    
フリューのゲームクリエイター。『CRYSTAR -クライスタ-』の企画・原案、プロデューサー兼ディレクターを務める。


C:本作のプレイヤーキャラクター4体のうち、幡田 零と恵羽 千はリウイチさん、777と不動寺 小衣はntnyさんがデザインなさっていますね。お二人にキャラクターデザインを依頼した経緯を教えていただけますか?

:最初に僕がリウイチさんの絵に惚れ込み、キャラクターデザインを依頼しました。リウイチさんには、零と千に加え、幡田 みらい、アナムネシス、メフィス、フェレスなど、人型のキャラクターのほとんどをデザインしていただきました。零と千の守護者をはじめ、人型以外のキャラクターのデザインも一部ご依頼しています。その後、リウイチさんの独特の画風を3Dで表現できるテクニックをもつモデラーさんを探した結果、ntnyさんの名前が浮上し、ご相談するにいたりました。

C:リウイチさん、ntnyさんの参加が決まった後、ジェムドロップさんに開発を依頼したというながれでしょうか?

:そうです。ntnyさんに依頼した時点では、ジェムドロップさんは合流していませんでした。リウイチさんの絵が3D化できるのか、早めに確認しておきたいという思いがあり、まずはntnyさんに相談しました。

C:そもそも、リウイチさんの絵を3D化しようした時点ですごい挑戦だなと思います。さらに変身後のコスチュームは私服以上に3D化が難しそうなデザインで、よくぞ「ヒロインが変身する」という提案にGOサインを出されたなと驚きました。

:どうすればゲームのユーザーにヒロインを印象づけられるか、リウイチさんとntnyさんとで1週間くらい議論した結果、変身させるというアイデアに帰結しました。ゲームのコンセプトを左右する部分ではなかったし、おっしゃることはもっともだと思ったのでOKを出しました。

C:とはいえ、モデリングの工数は結構増えますよね......。

:だから最初は苦い顔をしましたよ(笑)。

C:ntnyさんはインタビューの中で「『キャラクター』についてちゃんと理解のあるモデラーは、基本的に三面図を必要としません」という発言をなさっていて、「え? そうだったの??」と驚きました。

:僕はntnyさん以外に、そういうモデラーさんに出会ったことはありません(笑)。

C:人によるというわけですね(笑)。

:ntnyさんは「三面図を細かく描いてもらっても、実は矛盾があったりする場合が多いから、どうせ完璧には再現できない」ともおっしゃっていました。結局調整が必要になるから、正面と斜めのデザイン画さえしっかり描いていただければ、支障はないということでしょう。発注をしている僕としても、リウイチさんのデザイン画をそのまま完璧に3D化してほしいとは全く思っていませんでした。僕が素敵だなと思った要素、みるからにダークな雰囲気、線の情報量の多さ、銀河のような目の輝きといったリウイチさんならではの「ブランド感」が表現されていれば、それ以外の要素は省略されても無問題だと思っていました。

C:そういう「リウイチ・ブランド」の世界に、「ntny・ブランド」のキャラクターを混ぜることで、何が起こることを期待しましたか?

:ntnyさんには、リウイチさんが描きにくそうなキャラクターを発注しました。褐色の肌をした777や、ナイスバディなお姉さんの小衣は、リウイチさんの引き出しからは出てきにくいキャラクターだと思います。そういうキャラクターを加えることで、作品の懐を広げ、興味をもってくれるユーザーさんを増やしたいというねらいがありました。

C:ちなみに......、ntnyさんは「キャラクターにまつわるフェチの面で林さんと意見が合致した」という気になる発言もなさっていました。どんなフェチなのでしょうか?

:ご想像にお任せします(笑)。ntnyさんにデザインしていただいた777と小衣から察していただけると嬉しいです。

▲ntny氏によって描かれた777のデザイン画


▲【左】同じく、777のデザイン画。このデザイン画には「白衣の下の方にトゲがありますが、こちらは演出用で、イラストには入れる場合がありますが、3Dモデルやアニメではなくてよいものです。つまりデザイン上はないのが正解で、イラストでのみ使う「盛り」要素なのでオミットOK」という注意書きも添付されている/【左】前述のデザイン画を基に制作された777の3Dモデル


▲777の3Dモデルのターンテーブル


▲ntny氏によって描かれたエピクロス(777が異形化した姿)のデザイン画


▲【上】前述のデザイン画を基に制作されたエピクロスの3Dモデル/【下】同じく、頭部の拡大。デザイン画と3Dモデルを比較すると、デザイン画の印象は残しつつ、凹凸を減らしたり、メカ構造をアレンジすることで、ゲームの3Dキャラクターとして表現可能な折衷案がジェムドロップのアーティストによって提案されていることがわかる


▲エピクロスの3Dモデルのターンテーブル

©FURYU Corporation. 

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せっかくの感性をつぶしてしまう

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