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No.11(後編)>>ジェムドロップ

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ゲームの世界観を汲んだデザインを提案する

C:おばけエネミーは子供のような可愛らしさを感じるデザインですが、突進系エネミーは夢の中で追いかけてきそうな不気味さがありますね。

小寺:そういう印象を目指しました。突進系エネミーは両腕の武器を合わせると顔が出現するという設定で、その顔がすごい勢いで突進してくるんです。

C:単にエネミーが突進してくる以上のインパクトがありますね。林さんが絶賛なさるのも納得です。

小寺:当社の企画から「突進攻撃をする」「4本脚」という仕様が示されたので、どう突進させたら面白いかを考え抜いた結果、「顔が突進してくる」というアイデアが出てきました。4本脚にしたのは、実際以上にエネミーのバリエーションがあるような印象にするためです。二足歩行のキャラクターばかりだと似たような印象になってしまうので、ちがうシルエット、ちがうモーションのキャラクターをデザインするよう意識しています。

増田:本作のエネミーは「死んだ人間の魂が変化したもので、生前の記憶は壊れている」という設定だったので、当社のスタッフがエネミーの系統ごとに生前の行いや死因などのバックボーンを考え、それを基点としたデザインを提案しました。元は人間ですが、記憶が壊れているので、ぱっと見では何を考えているのか読み取れず、明らかな殺意は感じられないデザインにしています。また、グロ系、ホラー系の「ダイレクトな怖さ」ではなく、「精神的な怖さ」の表現を目指しました。そうやってゲームの世界観を汲んだデザインを提案するよう心がけたから、林さんに喜んでいただけたのだと思います。

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開発開始から3ヶ月目頃に実施されたエネミーのアイデア出しの様子。キャラクターの様々なデザインやカラーバリエーションの草案を紙に印刷し、机の上に並べながら意見を出し合っている。このミーティングには、増田氏や小寺氏に加えモーションリードや企画も参加しており、アート・モーション・企画の各分野の意見を踏まえたデザインが吟味される


▲エネミー(通称:突進系エネミー)のデザイン過程。左から右へとデザインがブラッシュアップされていった。「デザイン着手の段階で決まっていた仕様は『突進攻撃をする』『4本脚』という2点のみだったので、本作の世界観や設定を踏まえて方向性を調整しつつ、序盤に様々な突進型のデザインの草案を出しました。中盤で『両腕の武器を合わせると顔が出現する』というアイデアが出て、デザインの方向性が固まりました。この段階くらいから、3D化も念頭に置いてデザインを詰めていきました。終盤で武器と顔のデザイン案を何パターンか試行錯誤しましたが、最終的には中盤で出た案をベースにしたデザインに落ち着きました」(小寺氏)


▲突進系エネミーのカラーバリエーション


▲突進系エネミーの完成デザイン


▲前述のデザイン画を基に制作された突進系エネミーの3Dモデル


▲突進系エネミーのターンテーブル


C:ntnyさんはインタビューの中で「『キャラクター』についてちゃんと理解のあるモデラーは、基本的に三面図を必要としません」と語っていましたが、ジェムドロップのモデラーの皆さんはどう思われますか?

増田:三面図はあった方がいいですが、正面と斜めの絵があれば、後は想像で補えるとは思います。実際、本作でも想像で補った部分が結構あります。ただしモデラーのスキルによってはできない場合もありますし、想像してつくるのが好きなモデラーもいれば、そうではないモデラーもいると思います。加えて、ゲームの内容にも左右されるでしょう。例えばあまりカメラが寄らない、あるいは映らないのであれば、細かくデザイン画を描く必要はありません。

C:モデラーやゲームの内容によりけり、というわけですね。

ポージングした後で、モデラーが形を直すこともある

C:おばけエネミーや突進系エネミーのモーションは釣谷さんが担当なさったのでしょうか?

釣谷太一氏(以下、釣谷):はい。先ほど増田が説明したように本作のモーション担当は2名で、1名は人型キャラクターを中心に、私は人型以外のキャラクターを中心に担当しました。開発初期には、キャラクターの揺れ物などのダイナミクスの検証もしています。

  • 釣谷太一
    アーティスト。『CRYSTAR -クライスタ-』では主にエネミーのモーションを担当。4年制大学の経営学部を卒業後、大阪アミューズメントメディア専門学校で2年間3D制作を学ぶ。在学1年次の夏にゲーム制作の機会があり、モデリングとモーションを担当したことがきっかけで、モーション制作は面白いと思うようになる。2015年にジェムドロップへ入社してからは主にモーション制作を担当する一方で、映像編集やモデリングなども担当。


C:ゲーム1本分のモーションとなると、膨大な数がありそうですね。

釣谷:大変でした(苦笑)。エネミーの場合はザコが8体、同じ系統のボスも8体くらいいたので、なるべくザコとボスのボーン構造を共通にすることで、セットアップやモーション作業の効率化を図っています。それでも検証やセットアップもしつつ、半年以上はひたすらモーションをつけていましたね。デザインやモデリングと同様、企画から「こういう動きやシルエットにしてほしい」という仕様が示されるので、それを踏まえてつくった粗いモーションを企画に見てもらい、OKが出たらつくり込んでいきました。タイミングやポージングなど、細かい部分は任されているので、自分で考え、提案する余地は結構ありました。

小寺:ポージングしてみた結果、思ったようなカッコ良さが出なければ、モデラーが形を直すこともあります。例えば突進系エネミーの場合だと、当初は両腕の先端が太く直線的なデザインだったのですが、釣谷の提案を踏まえ、先端を細くしてカーブを付けました。さらに、両腕の武器を合わせて顔が出現した後、身体がちゃんと隠れるように突進時だけスケールを大きくするといった調整を釣谷の方で行なっています。

増田:顔の出現前と出現後ではベストな腕の大きさが変わってくるので、そこはスケールを調整しています。どの程度スケールをかけるか、決定前にチェックはしますが、基本的には担当者に任せています。

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