ハイスピード撮影を模した、「The 特撮」的なカット
C:第11回は、グリッドナイトがグールギラスやデバダダンを倒すカット(第11回 11:57あたり)ですね。本カットはかなり尺が長いのに加え、画面の手前と奥とでちがう芝居を観せる演出が印象的でしたね。
近藤:尺は22秒くらいあります。「The 特撮」という感じの、本作の中で1番楽しんでつくったカットでした。ゆっくりとした動きを固定したカメラで映しており、ごまかしがきかないカットだったので、見えない足の先端まで全身の動きを付けてあります。かなり動きを突き詰めており、作業開始からOKをいただくまでに1ヶ月くらいかけました。
▲近藤氏が担当した、第11回のカット(第11回 11:57あたり)。【左列】はレイアウトのテイク1、【右列】はT撮のテイク1。基本的に3コマ打ちで制作されており、ほかのカットよりゆっくりとした動きになっている。本カットでは、画面手前を走る作画のマックス、ボラー、ヴィット、立花ママを抱えたサムライ・キャリバーと、画面奥で戦うグリッドナイトを同時に観せるため、あえてグリッドナイトのアクションはゆっくりとしたテンポで表現された
▲レイアウトのテイク1の映像
▲T撮のテイク1の映像
近藤:本カットでは、最初に尺を本来の1/4くらいに設定してから通常のスピードのアクションを付け、その後で尺を引き延ばしてゆっくりとした動きにしています。「そうやった方が、つくりやすいと思います」というアドバイスを宮風からもらったので、それに従いました。
C:ハイスピード撮影した映像を、スローモーションで再生するのと同じ原理ですね。つくり方まで特撮的なのが、すごく面白いです。本カットの場合は、レイアウトとT撮とで、大きなちがいはないですね。
近藤:この頃になると、どのスタッフも本作に対する理解が進んでいたので、リテイクは減っていましたね。本カットでも、BGや煙の引きの速度を変えたり、アクションのタイミングを微調整した程度で、大きな修正はありませんでした。煙の引きの速度は、手前から奥にかけて段階的に遅くすることで、遠近感を出しています。
C:本作を通して、どのような学びがあったと思いますか?
近藤:長濵や及川が語ったように、エフェクトやコンポジットまでやらせてもらえた点は勉強になりました。ほかの案件だとここまで経験できることはマレなので、色々と新しい発見がありました。
宮風慎一氏(3DCG監督)からのコメント
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写真提供:グラフィニカ - 今回の取材メンバーの中で、近藤は最もMotionBuilderを得意としていたので、さらに得意部分を伸ばしてもらいました。絵コンテにはないアクションも積極的に盛り込んでくれて、クライアントさんにも喜んでいただけました。アクションの腕は申し分がなく、ほかの案件ではやる機会の少ないエフェクトを含んだ画面構築もできたので、数少ないゼネラリストを目指して引き続きがんばってほしいです。
©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会