作品02:「興奮する」
投稿作品もうひとつ、今回は手描きのポーズを添削しようと思います。靴の組み合わせが合っていないこと、走り方が前傾姿勢という点から、キャラクターが興奮している様子がとてもわかりやすく表現されていてとても良いポーズですよね。
このままでもとても良いポーズですが、どこか直すとしたら、「緊張と緩和」という観点でひとつと、人間の体の構造、特に「走り」のメカニクスについての部分でひとつの2つだけ提案したいと思います。
ドローオーバーPoint 1:緊張と緩和
前回の記事でも少しだけ触れましたが、「緊張と緩和」は僕が個人的にポーズを作るときにとても大事にしていることのひとつです。要は、体に力が入っているか、抜けているかを最初に決めるということです。そして、その指標になるもののひとつが肩の上下なのです。詳しくは、ブログの方にも記事があるので、参考にしてみてください。
この走っているポーズの場合は、「興奮する」というお題なので、きっと体に力が入っているはずです。肩も普通の位置よりは高く上がっているので良い感じですが、見ている人にもっとわかりやすく興奮を伝えるために、もう少しだけ肩を上げても良いでしょう。それに伴って、さらに反対側の腕を少しだけ体の外に出すと、同じく力が入っている感じが出るだけでなく、シルエットも綺麗になりもっと見やすくなると思います。
Point 2:走りのメカニクス個人的には、足があまり上がっていないのが走り慣れていない女の子らしくて好きだったりするのですが、「興奮して走っている」ことを優先するのであれば、走りのメカニクスに忠実に、走っているときの足の蹴り上げをもう少し高くしても良いかなと思います。
この添削は良い例ですが、ポーズを作っていると、何を見せるか、どれを優先するか、という選択によって何が正解か変わってくるんですよね。今回の場合は女の子らしさを優先するか、感情のわかりやすさを優先するか、という選択です。最終的には監督の意向や、それぞれのカットで何を求められているのかによって変わってくるのですが、それぞれ自分の中でどうしてこの場合はこっちを優先したのか? というところまで説明できると良いですね。そうすると全てのポーズに意味があるアニメーションや絵が描けるようになると思います。
今回の添削はこんな感じです。最後に、いつもエイド宿題に参加してくださってありがとうございます! 皆さん本当に素晴らしいポーズを作ってくださるので、僕も勉強させていただいています。ぜひまた今後も参加してくださると嬉しいです!
「エイド宿題」とは?
「エイド宿題」はTwitterで始めたクリエイターの皆さんへ向けた新しい企画です。オンラインスクールAnimationAidのクラス内で出している「ポーズを作る」という課題を、Twitterでみんなでやってみようというとってもシンプルな企画です。
●参加方法とやり方
・毎週月曜日にTwitter(@ryowaks)でその週のお題を発表するので、そのお題に沿ったポーズを作ってみましょう。
・CGで作った、もしくは絵で描いたポーズにハッシュタグ(#エイド宿題)をつけてTwitterに上げましょう。
・ぜひハッシュタグで検索して、他の人が作ったポーズも見てみましょう。
・エイド宿題とは?
https://ryowaks.com/what-is-aidshukudai/
・エイド宿題 これまでのお題
https://ryowaks.com/category/aidshukudai/
Profile.
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若杉 遼/Ryo Wakasugi
2012年にサンフランシスコの美術大学Academy of Art Universityを卒業後、Pixar Animation StudiosにてCGアニメーターとしてキャリアを始める。2015年にサンフランシスコからカナダのバンクーバーに移り、現在はSony Pictures Imageworksに所属。CGアニメーターとしての仕事の傍ら、CGアニメーションに特化したオンラインスクール「AnimationAid」を創設、現在も運営のほか講師としてクラスも教えている。これまでに参加した作品は『アングリーバード』(2016)、『コウノトリ大作戦!』(2016)、『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』(2017)、『絵文字の国のジーン』(2018)、『スモールフット』(2018)など
●若杉遼 ブログ わかすぎものがたり
ryowaks.com
●AnimationAid
animation-aid.com