<2>Digic Picturesのワークスタイル
ーーDigic Picturesは、どのような職場ですか?
松本:主にゲームのシネマティックムービーを手がけていることで知られています。最近では、映画『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』の冒頭バトルシーケンスを担当しました。この作品は、Digic史上、2作目の映画プロジェクトとのことです。プロジェクトは常に複数走っていて、かつ、向こう2年くらいはスケジュールが埋まっています。そのため次のプロジェクトの心配や、契約終了の期日などを気にする必要がないので、精神的にものすごく安心感があり、仕事に集中できますね。
Final Fantasy XV - Omen Trailer from Digic Pictures on Vimeo.
ーー日本では、ハンガリーのCG・VFX業界はまだ知られざる存在です。
松本:実は、Digicが初めて海外から採用したアーティストが僕なんです。まさにパイオニア(笑)。僕が入社したのを機に国際化が進んでいて、1年間で外国籍のアーティストが20名以上になりました。社内ツールの英語化も徐々に進んでいます。でも、社内のコミュニケーションはやっぱりハンガリー語がメインになっています。ちょっとでも理解できたらなあ、とは思っているのですが、ハンガリー語は世界屈指の難解な言語なので、まだ、ごく基本的な挨拶しかわかりません(苦笑)。
ーーハンガリーの国民性について教えてください。
松本:ハンガリー人はとてもシャイな民族だと思います。社内でも、英語が話せない、苦手、という人も多いのですが、上手く話せないから、話したがらない、という人が多い気がします。とてもシャイなんですけれど、素敵な人ばかりですよ。社長をはじめ、みんなが笑顔で挨拶してくれて、本当に気持ちがいい。ハンガリーは通貨価値が低いので、アメリカで働いていた頃と比べて給料は圧倒的に減りました。でも、僕は、綺麗事ではなく、お金のために働いていないので、全然気にしていません。素敵な仲間たちと、やりがいのある楽しいプロジェクトこそが、自分にとって何よりもかけがえのないものです。
Digic Picturesの仕事場にて
ーー日常生活についてはいかがですか?
松本:僕はブダペストの街が大好きです。美しい東欧の街並みは言うまでもないですが、それと同時に、巨大な銅像などコミュニズム(共産主義)の名残も街のいたるところに点在しているのも興味深いです。ハンガリー料理も好きですね。とても脂っこくて、味付けも濃いので、そればかり、というのはさすがに無理ですが(苦笑)。特筆すべきは、街がとても安全だということです。治安の良さは日本と同等レベルではないでしょうか。夜中の3時に、大通りから離れた細い道を若い女性が1人で歩けるレベルです。人種差別も経験したことはありません。日本人、アジア人ということで見下されることは、まずないと思います(私見ですが、シドニーでは特に多かったりしたので)。難点は、日本のものがほとんど手に入らないことでしょうか。日本の食材も非常に限られているので、自ずと高価になっています。その分、パプリカなどハンガリーならではの味を楽しんでますよ。
ーー最後に将来、海外で働きたい人たちへのアドバイスをお願いします。
松本:いくつかの国を経験して思うのは、異文化の交流はものすごく興味深い、ということです。ブダペストでは、日本人がそれほど多くないこともあり、彼らも日本に対してとても興味があるようです。様々な国から来ている外国籍の同僚たちの「うちの国では......」という会話はいつも面白いです。海外に行っても、日本人同士でつるむのではなく、色々な人と触れ会うことができたら、もっと楽しい、本当の意味で視野が広がると思いますよ。
【ビザ取得のキーワード】
1.日本大学を卒業後、DHIMAで3DCGを学ぶ
2.DHIMA卒業後、現地(サンタモニカ)のEntity FXで勤務。1年間、J-1ビザで勤務後にH1-Bビザを取得
3.オーストラリアのAnimal Logicへ移籍。2年間の勤務後、再びLAのDreamWorksへ(O-1ビザを取得)
4.ハンガリーのDigic Picturesへ移籍。「レジデンス・パーミット」(居住許可証)を取得
info.
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