>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:社会人経験を経て留学後、米国で就職 第43回:冨ケ原美菜子(米大手TVアニメーション制作会社勤務 / Background Designer)
社会人経験を経て留学後、米国で就職 第43回:冨ケ原美菜子(米大手TVアニメーション制作会社勤務 / Background Designer)

社会人経験を経て留学後、米国で就職 第43回:冨ケ原美菜子(米大手TVアニメーション制作会社勤務 / Background Designer)

<2>アメリカの大手TVアニメーション制作会社で背景デザイナーとして活躍中

――現在の勤務先は、どんな会社でしょうか。簡単にご紹介ください。

現在、勤務しているスタジオはロサンゼルスにあります。スタジオはとてもオープンな雰囲気です。制作スタッフは全員同じフロアに個人の部屋があり、いつでも直接行き来して話し合うことができるようになっています。ランチタイムにはチームで外に出かけたり、スタジオ内にある展望スペースで昼食を取りながら親睦を深めています。特にアート・チームは同じ大学の卒業生の方が多いので、繋がりが多く、すぐに打ち解けることができました。才能あるアーティストに囲まれて、毎日絵が描けるこの環境にはとても感謝しています。

――現在のポジションの面白いところは何でしょうか

TVのプロジェクトは進行スピードがとても早いです。そのため、毎週どんどん先に進んで行くので、最初はついて行くのに苦労しましたが、今はそのスピード感と、毎週異なるエピソードなので様々なロケーションのデザインをできるところがとても面白いと感じています。

TVには、その番組毎のスタイルがありますが、私たちのショー(作品)ではスタイルに固執し過ぎず、新しいことにも挑戦させてもらえる環境なので、飽きることがなく、とても充実しています。

――英語や英会話のスキル習得はどのようにされましたか?

私が思う1番早い英語のスキルアップの方法は「とにかく英語圏に自分の身を置くこと」、「恥ずかしさを捨てて、とにかく何か話すこと」だと思いました。

日本にいた頃から少しずつ英語の勉強をしていたのですが、あまり伸びませんでした。自分の英語力をかなり甘く見積もっていて、NYで初めてTOEFLを受けた時の点数が13点、合格点が80点以上だったので、絶望的なスタートでした(笑)。NY時代はまず最初に単語を3ヵ月ほど集中して勉強しました。書いて覚える、アプリを使って覚えるなど様々な方法を試しましたが、私には書いて覚える方法が一番合っていました。

その後はTOEFL取得のため、1日18時間机に向かって、過去問題を解くことを繰り返していました。しかし、必要なスコアを取得できるまでには、半年ほどかかりました。集中的に勉強できる時間が確保できたので、英語力はこのときにグッと伸びましたが、TOEFLで使用されているような英語を使うことは実際の大学生活ではほぼなく、入学当初は日常会話の部分でつまづきました。

NYの学校とはちがって、入学当時、私の学科には日本人が全くおらず、なおかつ授業と会話のスピードがとても速かったので、思うことを上手く伝えられなかったり、言われていることが理解できないことがよくあり、それを恥ずかしいことだと思ってしまい、発言すらしないという状態に陥った時期もありました。

しかし、それでは友達もできないし、学びたいことを学べないと思い、間違ってても良いから、とにかく何か発言すること、簡単な英語で人に話しかけるようにすることを心掛けるようにしました。また、理解できなかったときは素直に、「理解できなかったので、もう一度教えてください」と言うようにしました。

そうしてみたら、周りの人たちは私が話せないことや聞き取れないことなど、さほど気にしていないということに気づきましたし、逆に「話せないから、もっと話したいんだ」と言うと親切に教えてくれる人達ばかりでした。

緊張を解いて、ありのままにいるようにしてから一気に友達も増えましたし、会話力も伸びました。文法や単語は机に向かって勉強すれば伸びますが、会話の部分はとにかく話してみることが一番だと思います。

――将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。

ありきたりですが、もし「海外で働くこと」に興味があるのでしたら、まず現地に行ってみてほしいと思います。私も日本で働いていた頃は長いこと迷っていましたが、そのときには想像もしなかったことを5年間のアメリカ生活で学んできました。

何が起こるかは人それぞれとは思いますが、日本に居ては何も起こらないのは皆一緒だと思います。もっていたものを思い切って捨てなければ行けない上に、ビザの不安が常につきまといますが、私の場合はそのプレッシャーが逆によい方向に働いたなと感じています。

ここまで前のめりに生きたことは日本ではありませんでしたし、新しい自分を発見することもできました。自分の本当にしたいことを見つけて実現するために来たのですが、今ではそれ以上のことを学んだと実感しています。

やりたいことが海外にある人はもちろんですが、そうでない人も、ぜひ一度挑戦してみてほしいと思います。日本を離れると、日本の素晴らしさも身に染みますし、日本人としての自分と向き合うこともできます。その時間は、夢を実現することよりも大きな価値があると私は思っています。


ファッション・ブランドのポール・スミス ビバリーヒルズ店にて、個人作品を展示した際に撮影

【ビザ取得のキーワード】

1.文化服装学院を卒業
2.株式会社東京スタイルへ、ファッションデザイナーとして就職
3.一念発起し、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインへ留学
4.CPTを利用して、在学中から米大手TVアニメーション制作会社勤務へ就職、現在は就労ビザを申請中

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