<2>メジャーな作品に関わることができ、高度なスキルも学べる
ーー現在のお仕事の面白いところは何でしょうか。
安達:現在は次世代パイプラインの開発に携わっています。開発規模も大きく、クラウド、マイクロサービス、NoSQLなどの最新テクノロジーを積極的に使い、最先端好きにはたまらないプロジェクトになっています(笑)。パイプラインは映像制作ワークフローの根幹に位置していますが、DWAでは映像制作の全行程を自社で行なっているので、大胆な設計が可能になっていると思います。一般的なスタジオでは予算・人員などから、規模の大きな開発を行うのはなかなか難しいように思います。また、実際のユーザーであるアーティストが近くにいて、すぐにレスポンスが来るのも大きなポイントでしょうか。私自身、アーティストとプログラマの両方の経験がありますが、実際の映像制作にダイレクトに携われるのがアーティストの仕事の魅力とすれば、パイプライン開発の仕事はスタジオのワークフローを支えているという充実感がありますね。
仕事中の安達氏。主幹となるパイプライン開発は、責任ある仕事で充実感があるという
ーー英語や英会話のスキル習得はどのようにされましたか?
学生時代、英語はそれほど好きではなく、試験や輪読のために勉強する程度でした。むしろ社会人になってから英語の必要性を実感し、いわゆる英会話の本を読み、ラジオ講座などを聞き始めました。グループレッスンの英会話クラスを受講したこともありますが、もともと日本語でも喋るのが得意ではないので、グループで喋るレッスンは全く向いていませんでした(笑)。そこで、手頃な授業料のマンツーマンの外人講師に教わることにして、週に1~2回、会話をし、書き取りをし、文章を読む練習をしました。1年弱でしたが、これはとても効果的でした。講師からのフィードバックが早いのと、趣味が同じで、映画やゲームの話ばかりをしていたのが良かったのだと思います(笑)。あと、「読んでもわからない文章は、聞いてもわからないよ」と指摘され、簡単な英文小説も読み始めました。これも役に立っていると思います。実際に海外のスタジオで働き始めたら、あとはもう実践あるのみですね(笑)。
ーー将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。
いざ海外のスタジオで働こうと考えても、最初の一歩はなかなか勇気のいることだと思います。しかし、日本で活躍されているアーティストの方達はスキルも非常に高いですし、敷居は低いのではないでしょうか。英会話については、「行けばなんとかなるよ」と言われているのも、ある一面では真理だとは思いますが、やはり日常会話以上のコミュニケーション・スキルを身につけておいた方が良いかと思います。実際に求人へ応募する場合、アーティストでしたら、ポートフォリオ、ショット・ブレークダウン(※)などの資料を用意し、開発系でしたらプロジェクトやコード、アルゴリズムを説明できるようにするのが良いと思います。できれば電話インタビューの練習もしたほうが良いでしょう。
※ショット・ブレークダウン:デモリールに入れた各ショットに、自分が何を担当したのか等をわかりやすく説明する為の資料。詳細は書籍『ハリウッドVFX業界就職の手引き』の第7章にもあり
海外のスタジオ、特にアメリカ、カナダ、イギリスなどのスタジオで働くことは、メジャーな作品に関わることもでき、高度なスキル(特にワークフロー)も学ぶことができるので、たとえ短期間でも意義の大きいものになると思います。また、さまざまな国の人達と仕事をすることになるので、視野も広くなりますね。南カリフォルニアのような日本とは全く異なる気候・環境で生活するのも楽しいですよ。
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1. 東京都立大学大学院工学系修士課程修了
2. 国内のコンピュータ会社、ゲーム会社でソフト開発
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