>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:ピクサーで出会った伝説のエンジニアたちとCGの歴史 第23回:手島孝人/Takahito Tejima(Polyphony Digital / Software Engineer)
ピクサーで出会った伝説のエンジニアたちとCGの歴史 第23回:手島孝人/Takahito Tejima(Polyphony Digital / Software Engineer)

ピクサーで出会った伝説のエンジニアたちとCGの歴史 第23回:手島孝人/Takahito Tejima(Polyphony Digital / Software Engineer)

<2>テクノロジーとアートをつなぐ、CGエンジニアの魅力

――実際に海外で働きだして、英語のスキルが足りず困ったようなことはありましたか?

少なくともCGエンジニアという職種に限って言えば、エンジニアリングのスキルと積極的にコミュニケーションをとる意欲があれば、英語の上手下手はあまり問題にならないと思います。実際、僕も留学経験はなく、片言の会話と読み書きだけはできるという状態で渡米しましたが、何年もやっているうちに「あの日本人エンジニアは、英語は下手だけどプログラミングの腕はすごい」という評価を得ることができました(笑)。さらにピクサーはとても国際的な会社で、僕のチームも上司はイタリア人、同僚はフランス人、スペイン人と、英語が得意でない人がたくさんいましたから、みんな忍耐強く話を聞いてくれました。このようにどうにかなりますので、英語が下手でも、ひるまず挑戦してみてください。英語が上手くなったら応募しようと思っても、そんな日は永遠に来ませんよ。

――最後に、将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。

ソフトウェアエンジニアの皆さんへのアドバイスになりますが、今はやっぱりオープンソースの時代です。日本にいるうちから、ピクサーやハリウッドスタジオ各社のオープンソースの取り組みに積極的に参加して、スキルを磨きながら存在感を出していくのが良いと思います。各社のキーパーソンはコミュニティにいますから、やり取りする中で名前と腕を覚えてもらえれば、ピクサーでもどこでも、採用はスムーズにいくと思います。

就労ビザの取得は大変ですが、チャンスは誰にでも突然、やって来ます。僕のH-1Bビザも不景気で外国人採用が極端に減ってしまって、たまたま抽選(※)どころか年末まで余っていた年のおかげで取得することができました。いざというときを逃さずに、チャレンジあるのみです。

※H-1Bビザの抽選:アメリカの就労ビザH-1Bは、応募者の数がビザの規定発給数を大幅に上回っており、毎年抽選によって審査が行われている。そのため、採用のオファーが得られても、ビザの抽選を通過しないとビザの審査にたどり着けないという問題が起こっている。詳しくは『ハリウッドVFX業界就職の手引き』にて

CGエンジニアという仕事は、テクノロジとアートをブリッジする一番面白い仕事だと思います。"The art challenges the technology, and the technology inspires the art.(アートはテクノロジーの限界に挑み、テクノロジーはアートにひらめきを与える)"というジョン・ラセターの言葉もあります。

その中でも、特にピクサーのR&Dは今も昔も、その究極のゴールを目指す人たちが集まる場所ですから、日本の優秀なCGエンジニアのみなさんは、ぜひとも挑戦されてみてはいかがでしょうか。また、海外で腕を磨きたいと思った方は、思い切って大胆に飛び込んでいきましょう。そして一緒にCGの未来をつくりましょう!


ピクサーR&Dチームでボウリング

【ビザ取得のキーワード】

1.海外カンファレンスに積極的に参加して人脈をつくる
2.知人の紹介によりピクサーのポジションをオファーしてもらう
3.ピクサーのサポートでH-1Bビザを取得し、渡米
4.ピクサーのサポートでグリーンカードを取得

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  • 【PDF版】海外で働く映像クリエーター

    ーーハリウッドを支える日本人 CGWORLDで掲載された、海外で働くクリエイターの活躍を収めた記ことを見やすく再編集しました。「ワークス オンラインブックストア」ほかにて購入ができるので、興味のある方はぜひ!
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    www.borndigital.co.jp/book/648.html

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