>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:カメラを抱えて海外へ、人との縁に導かれCGアニメーターに 第29回:佐藤 成/Sei Sato(Logan / Senior Animator)
カメラを抱えて海外へ、人との縁に導かれCGアニメーターに 第29回:佐藤 成/Sei Sato(Logan / Senior Animator)

カメラを抱えて海外へ、人との縁に導かれCGアニメーターに 第29回:佐藤 成/Sei Sato(Logan / Senior Animator)

<2>まず行動し、試行錯誤をくりかえしながら問題を乗り越えていく

――現在の勤務先は、どんな会社でしょうか。

Loganという会社の役割は、ディレクターでもありデザイナーでもあります。そして会社のCEOであるAlexeiを中心に、デザイン性の高い作品をつくる会社です。映像制作にとどまらず、企業のブランディングも行なっています。その高いデザイン性のお陰でAppleのCMやストアで流れるムービーなどを、もう長年も手がけています。独自のスタイルでTVやWeb CMのほかにも、ゲームのトレイラーや映画のタイトルシーケンス、VFXからモーショングラフィックスまで幅広くこなしますので、様々な経験をさせてくれる会社です。

――現在のお仕事の面白いところは、どんな点でしょうか。 

僕はアニメーターとして2Dや3DのCG素材に動きをつけるだけでなく、カメラも動かしてショットを1からつくっていきます。コンセプトとストーリーをよりダイナミックに、そしてドラマティックに視聴者に伝えるにはどういうリズムでストーリーを展開していくか、ストーリーを意図したように見せるにはどういうカメラレンズでどういった構図のカット割りがより効果的でカッコよくなるか、作品を観て視聴者にどう感じて欲しいかを、常にクリエイティブディレクター、エディターと一緒に考えてつくっていくのが僕の役割です。

最終的な仕上げのアニメーション作業ももちろん楽しいですが、自分でラフにつくったショットを編集ソフトで並べてリズム、タイミングをチェックし、自分なりのラフなエディットをつくってディレクターやエディターにプレゼンすることもあります。そのため、いつもディレクション側の視点でプロジェクトを進行できる点が、とても面白いと感じています。


「ディレクション側の視点でプロジェクトを進行できるところがとても面白い」と佐藤氏  

――英語や英会話は、どのように習得されましたか?

英語のスキルに関しては人様にアドバイスできるような立場ではないのですが......僕の場合はとにかく人の会話を聞いて発音や言い回しを真似することから始めました。日常会話でもいいし、映画やTVでも何でもいいんです。また気をつけているのは、わからないことをわからないままにしないということ。僕が日本人で、英語が第一言語ではないということを一緒に働いている人達は知っているので、わからないことはその場ですぐ質問するようにしています。そうすることで、いつの間にかコミュニケーションが円滑に進むようになりました。わからないとはっきり伝えた方が信頼関係を築けると知ったのは、渡米から暫く経ってからのことです。もっと早く実践しておけばよかったと、今になって思います。

――将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。 

アメリカで働くにあたって、大学を卒業しておくことがこんなにも大事なことだとは全く知りませんでした。大学を卒業している、もしくはその業種の経験が規定年数ないと就労ビザの申請すらできない※2ということは意外に知られていないと思います。

※2アメリカにおける就労ビザの申請資格や規定実務経験年数の関係などについては、書籍『ハリウッドVFX業界就職の手引き』で詳しく紹介している

僕のやり方が参考になるかわかりませんが、ごちゃごちゃ考えずにまず行動し、その先で試行錯誤し問題を乗り越えていく。その経験が自信につながり、いずれ必ず道が開けると思います。思いきりと経験が皆さんの未来を切り拓く。恐れずに一歩前に進んでみると、その先には同じような気持ちで一歩踏み込んだ人達との出会いが待っています。その出会いはきっと皆さんにとって、人生を左右するほど大きな意味をもつものになると、僕は信じています。

【ビザ取得のキーワード】

1.日本で、約4年ほど工務店の現場監督として働く
2.ロンドンに1年間語学留学
3.その後ロサンゼルスに留学し、DHIMAにて1年間CGを学ぶ
4.LoganでH-1Bビザのサポートを受けて就職し、その後グリーンカードを取得

info.

  • 【PDF版】海外で働く映像クリエーター

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