<2>様々な国の仲間たちと、ハリウッド映画のVFX制作に携わる日々
――現在の勤務先は、どんなスタジオでしょうか。簡単にご紹介ください。
Moving Picture Company(以下、MPC)はロンドンを拠点とする、各国にスタジオをもつ大きなVFXスタジオです。ディズニーの実写版や、マーベル作品などのハリウッド映画のVFXをつくっています。
近年は『ジャングル・ブック』、『ライオンキング』(2019年公開予定)などの、動物のVFXで活躍していると思います。MPCモントリオールでは、プロジェクトが複数同時に動いており、アニメーションの大きいチームになると1つのプロジェクトに50人ほどのアニメーターが参加しています。
――現在のポジションの面白いところを教えてください。
VFXアニメーションは、リアルを追求するアニメーションではありますが、ショットに絶対に存在している矛盾を違和感なく見せ、かつアニメーション12原則もしっかりと存在している、面白い分野だと思っています。
作業に取りかかる際は、監督やリードのアニメーションの好みを理解し、その理想形を目指していましたが、最近では特に「重さ」の表現に注意しています。「重さ」はそのキャラクターの大きさだったり、その世界を理解するのにとても需要なパーツです。理想形をつくるのに十分な時間をもらえないこともあるので、絶対に「重さ」は押さえることで説得力のあるアニメーションを目指しています。
それから、「なぜ」を考えることも説得力を出すのに重要になってくると、ILMでアニメーションスーパーバイザーをされていらっしゃる方の講義で学びました。「なぜ」という疑問から、体の構造や、バランス、動きの関係性などを学ぶことができます。「なぜ」を理解してからリファレンスを見ると、作業効率も上がります。こうした様々なことを考えて、そして、それを同僚と話しあったり、リードに聞くことも面白いです。人それぞれでつくり方もちがいますし、思いがけない便利なツールを教えてもらえることもあります。会社内では、カナディアンよりインターナショナルの方が多いので、アニメーションに限らず、文化のちがいや考え方をシェアできるところも面白いですね!
――英会話のスキル習得はどのようにされましたか?
昔から英語は苦手でした。まさか、こんなに英語漬けの生活になるとは思ってもみなかったです。海外に行くと決めてから時間がなかったので、中学英語をおさらいして、単語を覚えることをメインに勉強していましたが、こちらに来てからはスピーキングを意識していました。
オススメされたシャドーイング(英語の音声を聞いた後、すぐに真似して発音する訓練法)をやったり、洋楽の歌詞を見ないで聴いたままに歌う練習などをしていました。後から歌詞を見たときに、自分の知っていた単語や言い回しだったけれど、気がついていないことがよくあり、発音を意識することでリスニングを鍛えることができたと思います。
カナダに来てから3ヶ月間は語学学校に通いましたが、今では、もう少し短くても良かったと思っています。語学学校は英語を話す度胸、慣れをつくる場所でした。また、一度にたくさんの国の方々と知り会う機会は初めてだったので、休み時間に友達や先生と話すことが楽しく、会話の中で言い回しなどを覚えていきました。
宿題のほかに日記を書いて先生に添削してもらったり、語学学校の後には無料の語学カフェに通っていました。ネイティブ同土の会話に入るとまったく会話についていけず、でも不思議と辛くはなく「まったくわかんなかったー」と、あっけらかんと楽しく続けられたのが良かったと思います。
――将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。
海外に出るにあたって一番大きな壁となるのは、「出ると決めること」だと思います。キッカケはほかの人から見るとちっぽけで、理由にもなっていないものかもしれません。ですが自分が「今だ!」と思ったときが一番のチャンスだと思います。決めてしまえば、あとはもう行動あるのみで、私は行くと決めてから3ヵ月後にはカナダにいました。
ですが、職歴も英語力もなく飛び出してきてしまい、それをハンデに感じて自尊心が低くなることも多々あります。さらに海外での生活は不便なことも多く、言葉の壁や、生活の中で心が疲弊して、もうやめようかな、と思うこともよくあります(苦笑)
そんなときは、本当に大事なことだけ考えて、ほかのことは適当に考えるようにしています! 本当に大事なこととは、ビザのことや、仕事のことではなく、夢や目標といった憧れです。
私の場合はそれがとても漠然としていますが、その思いが自分をわがままにさせて、ここでがんばりたいと、踏ん張っていられるような気がします。その憧れとは、小さい頃から抱いていた海外に対する憧れと、そんな中で活躍している日本人の方への憧れです。
私もそんな"かっこいい人"になりたい、という漠然とした夢をもってカナダに来てから、もう3年になります。それでも、まだまだこれから海外で実力をつけたいと思っていて、こちらに来たからこそ、出会えた夢もできました。
最後に、憧れともうひとつ、海外生活の支えになっているのは、応援してくれている人たちの言葉です。この記事の話をいただいたときに、一番にお礼を言いたいと思った方が何人もいます。日本を出る前も、こちらに来た後も、本当にたくさんの方々にお世話になり、これまで私と話してくださった全ての人から、学んだり、励ましをもらったり、憧れをもらっています。
この場をお借りして、皆さんにお礼を申し上げたいです。ありがとうございました。これからも私の経験が誰かの背中を押せるように、精進していきます。
モニターの上にはお気に入りのキャラクターが並ぶ
【ビザ取得のキーワード】
1.武蔵野美術大学 映像学科を卒業
2.観光ビザでカナダのバンクーバーに入国し、ワーキング・ホリデービザを取得
3.Hydraulx VFXにワーキングホリデービザとインプライドステータスを使い1年3ヶ月就労
4.モントリオールのMPCに移籍し、ワークパーミットのサポートを受ける
info.
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