>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:第7回:杉村昌哉(Cinesite / Senior FX TD)
第7回:杉村昌哉(Cinesite / Senior FX TD)

第7回:杉村昌哉(Cinesite / Senior FX TD)

<2>Cinesiteのワークスタイル

ーー現在お勤めのCinesiteについて教えてください。

杉村:現在はCinesiteのエフェクト・チームに所属しています。Cinesiteの本社はロンドンにあり(※2)、モントリオールは2014年にオープンした最も新しいスタジオです。昨年2月、モントリオールにオリジナルのフルCGアニメーション映画をつくるための部署が設けられたのですが、従来のVFX部門とフィーチャー・アニメーションという2つの部門全体で200名ほどのアーティストが働いています。私が籍を置くVFX部門が最近手がけた映画には『レヴェナント: 蘇えりし者』、『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』、『アサシン クリード』(いずれも2016年公開)などがあります。

※2:Cinesite、MPC(Moving Picture Company)、Framestore、そしてDouble Negativeの4社は、ロンドン4大VFXスタジオとしても知られる。

Cinesite VFX Demo Reel 2017

ーーエフェクト制作の醍醐味はどんなところですか?

杉村:エフェクトと、ひとくちに言っても破壊や爆発など物理法則に基づくものから、様式的な表現まで幅があって楽しいですね。シュミレーションとデザイン・アニメーションの要素を組み合わせながら、ときにはスクリプトも書いたりと、アートとテクニカル両方のスキルを使うので、とてもやり甲斐があります。

杉村氏がVimeoで公開しているデモリールのひとつ。
Houdini R&D Reel2013 from sugiggy on Vimeo.


ーーところで、英会話のスキルはどのように習得されたのですか?

杉村:英語の学習は色々と試してみたのですが、合宿制の英語学校に通ったことが一番効果ありました。私が通ったところの場合、日本語はいっさい禁止で英語をネイティブで話す講師が常駐し、授業だけでなく食事や休憩時間も共にすることで日常の英語を実体験できるという珍しい学校でした。有給を取り、年に1、2回通っていました。

ーー最後に将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。

杉村:海外へ就職するパターンは大きく2つあると思います。ひとつは志望する国のアートやCG系の専門学校または大学に通い、卒業後に現地で職を見つけ。ふたつ目は、私のように日本で働きながら、就職活動をするタイプです。お金と時間に余裕がある方であれば、前者の方が確実でしょう。英語力もCGスキルも同時に伸ばせるからです。日本の現場での職務経験があればさらに有利なはず。もし人生をやり直せるとしたら、日本で3〜4年働いた後、カナダの美術大学に通うと思います。後者の場合は、英語の勉強に集中することが一番の近道だと思います。CG・VFXのスキルは働いていれば自然とついていきますが、英語力は日本に住みながら伸ばすには意識的・徹底的に行わないと伸ばすことは難しいと、身をもって体験しているので(苦笑)。また、現在ゼネラリストで、将来は海外の大手スタジオの映画VFX部門で働きたいと考えている方の場合は、スペシャリストと言えるだけの特化したスキルも必要です。エフェクト・アーティストは特にツールに左右される職種なので、目標とするスタジオがどのソフトウエアを使っているのか知ることが先決です。各社のリクルートのページを見れば載っているはずです。あと、若い方は各国のワーキングホリデー制度を利用するのがとても有効でしょう。「習うより慣れろ」というのは好きな言葉ではないのですが、英語にかぎらず外国語はロジックを理解したところで話せるようになるものではなく、スポーツと一緒で反復あるのみ。くじけずがんばってください!

新・海外で働く日本人アーティスト 第7回:杉村昌哉

2017年に公開予定で、杉村氏も参加した映画『King Arthur: Legend of the Sword』(原題)VFXクルーの集合写真

【ビザ取得のキーワード】

1.成蹊大学 工学部を卒業
2.オムニバス・ジャパン、マーザ・アニメーションプラネットなど日本の著名スタジオで実績をかさねる
3.カナダ・モントリオールのFramestoreにFX TDとして就職、就労ビザを取得
4.モントリオールのCinesiteへ移籍



info.

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