<2>大規模スタジオならではの充実した環境
――現在の勤務先であるWeta Digitalは、どんな会社でしょうか。
ハリウッド映画の大作を数々手がけているだけあって、ワークフローも大手スタジオらしい余裕があり、施設も充実しています。また、独自の技術も多く、入社して約1年経ちますが、まだまだ学ぶことがたくさんあります。ここで働いている人たちは優秀な方ばかりですし、特にスーパーバイザーの絵に対する厳しい目には毎度驚かされますね。
ウェリントン(Wellington)というニュージーランドの首都にスタジオがあるんですが、Weta Digitalの名前はやはり有名で、業界以外の人にも知られています。大規模なクリスマス・パーティーはニュースで報道されたりするそうです。
――現在のお仕事の面白いところはどんな点でしょうか。
Weta DigitalのCrowd部門は、有名な群衆シミュレーションソフト Massive発祥の地でもあります。そこで、Massiveを開発段階から使っているアーティストの方々と肩を並べて働けるのは大変光栄です。先日、Massive SoftwareのCEOでもある開発者のスティーブン・レジェラス(Stephen Regelous)氏がチームを訪問された際、お話しさせていただくこともできました。
チームの皆さんはCGを根本から理解されている方ばかりで、技術的な話をするのがとても楽しく、難しいショットに対するアプローチなども、時間がかかることを理解してくれていて、充分な時間、自由にR&Dをさせてもらえるためストレスなく働けています。
――英会話のスキル習得はどのようにされましたか?
大して喋れない状態でオーストラリアに行き、その場で周りの人から少しずつ教わりました。一番上達したなと感じたのは、親切な同僚が僕の興味ある分野のことを根掘り葉掘り聞いてくれたときですね。自分の好きなことに興味をもってもらえたのが嬉しくてあれこれ説明したくて、必死で言葉を捻り出してたんですが、あのときが一番英語を喋っていたと思います。自分の好きな分野なら知ってる言葉も多いし、話も組み立てやすいじゃないですか。考えた所から口に出るまでのプロセスが簡単なんですよね。きっとその同僚は上手く会話を誘導してくれていたんだと思います。
おかげで英語を話すことに少し慣れて、会話する機会も増えていき、テンポだったり言い回しを覚えていきました。そうこうしている間にリスニングも発音も少しずつ慣れていった感じです。
しかしオーストラリアに来て数年経ったころ、自分の主張をうまく伝えられないことで壁を感じ、仕事を辞めて英語学校に通う決心をしました。順序が逆になりましたが、おかげで自分が何を学ぶ必要があるのかが明確だったので、勉強しやすかったと思います。また、仕事をしていると会話の頻度もそこまで多くなかったんですが、学校に行ってからは英語を喋る機会が増えたのも良かったです。そうしてある程度、文化や会話のテンポに慣れた状態で英語学校に行ったので、語彙力があまりなくてもながれにすぐ乗れて、授業に参加しやすかったです。
――ニュージーランドでの生活はいかがですか?
今住んでいる地域は大都市ほど人が多くないので、一軒家を借りてゆったりした生活ができています。ウェリントンはコーヒーがおいしいことで有名らしく、どのカフェに行ってもクオリティの高いコーヒーを楽しめるのが良いですね。また、オーストラリアにいた間はインターネットがADSL方式のものしか使うことができなかったので、ニュージーランドで光回線を使えることが個人的には何よりも嬉しいです(笑)。
――将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。
自分が慣れ親しんだ常識や、生活から抜け出して知らない所に飛び込むのはきっと怖いでしょうし、周り人から様々な意見を聞くと思います。失敗するかもと心配かもしれません。でも失敗なら海外に出た後もきっと山ほどしますので安心してください。英会話に慣れない間は恥ずかしい思いも数え切れないほどするでしょう。それを経て海外で働くコツみたいのを掴んでいくはずです。今は海外就労のキッカケが沢山あるので、行きたいと思っていて、環境的、経済的に可能なら心配事は横に置いておいて、どんどん失敗していきましょう。
スタジオの近所にあるWeta Caveというミュージアムの前にあるクリーチャーと
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