>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:セガに入社し海外赴任で渡米、移籍・帰国を経て再び米国へ 第46回:西山 洋(Sega of America SONIC Pillar / Art Director)
セガに入社し海外赴任で渡米、移籍・帰国を経て再び米国へ 第46回:西山 洋(Sega of America SONIC Pillar / Art Director)

セガに入社し海外赴任で渡米、移籍・帰国を経て再び米国へ 第46回:西山 洋(Sega of America SONIC Pillar / Art Director)

<2>Sega of Americaで『ソニック』のアートディレクションを担当

――現在の勤務先は、どんな会社でしょうか?

Sega of America内に、「ソニックピラー(SONIC Pillar)」という、『ソニック』ビジネスを統括する組織があり、エンタテインメント産業に精通しているスタッフが、バーバンク(ハリウッド周辺)のオフィスに集結しています。

そこにはゲーム開発をはじめ、玩具やアパレルなどのライセンス、アニメーション、SNSやマーケティングなどを担当している30名ほどが在籍しています。SNSやイベントでファンに対して発信し、新規ユーザーへの獲得も図りながら、様々なコンテンツを開発し、世界中に届けて楽しんでもらうためのビジネスを展開しているスタジオです。

社内イベントも大切にするスタジオで、バースデイパーティ、ハロウィンやクリスマスの他、タイトルリリース記念に全員で食事に行ったりアットホームな雰囲気があります。

――最近参加された作品についてお聞かせください。

先日は会長、役員、社員も交えて、映画『ソニック・ザ・ムービー』(原題:Sonic the Hedgehog)のプレミア試写会に行きました。この映画のエンドロールで「Sonic's Island Concept Artist(Sega)」として名前がクレジットされたのを見たときは、物凄く嬉しかったですね。試写会後にソニックの声を務める俳優ベン・シュワルツに握手を求められたりと、人生最良の日でした。

苦労している点で言えば、ゲーム開発以外のアパレルやマーチャンダイジング関係は今まで経験がないので、当初は苦労しました。シーズンごとに各世代や性別に向けてアパレルデザインの方向性を決める、スタイルガイドの会議が行われるんですが、最初は資料を見ても考え方がまとまらず、自分の意見を加えることも難しかったです。

幸いLAはファッションや物質的な部分においても刺激や情報も収集しやすいので、週末肌で感じながら色々とリサーチして日々の業務に活かしています。

――現在のポジションの面白いところは何でしょうか。

私は『ソニック』に関する全クリエイティブ面のアートディレクションを担当しています。いいゲームをつくって、ファンの方に喜んでいただくことはもちろん大切なことなのですが、ゲームに留まらず、様々な分野で『ソニック』が世界中に広まることによって、ファン層をさらに拡大することに挑戦しています。

新しい経験も多く、苦労は常にありますが、現地の様々な人種と世代に囲まれて意見を交わし、新しいものを生み出すことにやりがいを感じています。

私としてはソニックというキャラクターを大事にしながらも、ゲームや商品開発において新しいことにも取り組んで行きたいと考えています。21年前に渡米して感じたように、世界のユーザーに向けて新たな感動体験を与えることができたら、自分がセガに戻ってきた意味もあるのかなとも思って、日々挑戦を楽しんで働いています。

――英語や英会話のスキルはどのように習得されましたか?

最初の渡米で8年間ほど駐在していましたが、その間は日本人開発者と働く環境にいたので、暮らしは何とかなっても、現地で業務を進めるに英語力が不足していました。なので現地採用になったときには、パソコンのモニターに成果物を付き合わせることで何とか凌いでいたのですが、そういうことができない会議などでは理解不足だったり発言できなかったりで、かなり苦労しました。

自宅で文法や単語の勉強はしていましたが、一番力を入れていたのは40~50分ほどの毎日の通勤時や週末遊びに行くときの長距離移動時の車内でポッドキャストを聞いての勉強です。ただ漫然と聞いているだけでは覚えられないので、最初は業務で使うためのフレーズ、社内コミュニケーションを円滑にするフレーズなどを選んで聞くようにしていました。シャドーイングするにも車内はちょうど良かったですし、出勤後にはそこで学んだ英語を使ってみて感触を得ていました。

また、仕事ではタイトルリリースの締め切りまで時間のない状態の業務が、一番英語力を伸ばすことができました。ミスが許されない状況で、文法が合っているかななど考えている場合ではなく必死で伝え、状況も状況なので相手も真剣に聞いてくれる。わからなければ何度も聞いてもらっての繰り返しにより、随分鍛えられました。とにかく恥ずかしがらず、話してみる、たくさん使って慣れることが大事だったと思います。

――将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。

今の時代はネットを通じて作品を公開できたり、人との繋がりも得やすい環境があります。そうした繋がりをきっかけに、ぜひ現地に来て直接会って話したり、肌で感じてみてください。

社会人は時間がなく、現地を訪れることが大変とも思いますが、そこから新たな紹介や出会いがあり、その人となりも伝えることもできます。同じスキルなら、知っている人からの紹介の方が断然有利ですから、決して無駄にはならないと思います。

実際そうした行動をしている方を見てきましたが、タイミングもあり直ぐに採用まで行かなくても、感触を得て次のインタビューや活動に繋げています。もちろん、企業に欲しいと思わせるスキルをもっているということは重要ですので、そのあたりも含めがんばってください。応援しております。


『ソニック・ザ・ムービー』プレミア試写会にて、Sega of AmericaのChief Brand Officerと

【ビザ取得のキーワード】

①東京藝術大学 美術学部 デザイン科 大学院修士課程修了
②日本のセガで『ソニック』シリーズ開発実績を積み海外転勤、渡米 L-1ビザ→Eビザ
③現地の会社に転職、O-1ビザ→グリーンカードを取得
④家庭の事情のため日本帰国の際、グリーンカードを返還。セガに戻りセガ・オブ・アメリカに駐在、L-1ビザ

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