04:エフェクト制作
Houdiniによるエフェクト制作
随所に合成された数々のエフェクトは、秋元氏がHoudiniを使って制作。
具体的には、Mayaで作成したアニメーションをAlembicを使ってHoudiniに読み込みエフェクトを作成している。
下記に掲載したキャラクターのボディが崩壊するようなエフェクトも、Houdiniで作成したエフェクトのキャッシュを、Mayaに読み込んでレンダリングしてコンポジットの素材としている。
「キャラクターの動きに沿うように電流が走ったり、崩壊するようなエフェクト制作はMayaでは難しい。Houdiniはそのようなエフェクト制作がとても得意なので、キャッシュをAlembicでやりとりすれば、そんなにストレスを感じることなく作成することができます」と秋元氏は言う。
▲Houdiniによるエフェクト制作の作業画面
▲Hounidiで作成されたエフェクトは、図のようにキャッシュをAlembicでMayaに読み込みレンダリングを行う
▲ワイヤーフレーム素材
▲オブジェクト識別用マスク素材
▲デプス素材。ほかにも崩壊する部分の境界を抽出するためのマスクなどが出力されている
▲エフェクトの完成ショット
モーションタイポのエフェクト制作
本作はMVということでモーションタイポも多用されている。
これらの文字を使ったエフェクトアニメーションも、Houdiniを使って制作されている。
数が多かったため、あらかじめアルファベットの出現と消失のアセットを作成しておき、テキストを差し替えて微調整すれば利用できるように作成されているという。
作成されたテキストのエフェクトは、歌詞ごとに小分けにしてMayaに読み込み、ベンドさせたりアニメーション付けを行なっている。
▲Houdiniによるテキストのエフェクト制作画面
▲Houdiniで作成されたテキストのアニメーションは、Mayaによって、ベンドなどで変形加工してアニメーション付けされる。レイアウトやアニメーションのタイミングなどは、アニメーターに任せられている
▲テキストのアウトライン素材
▲半透明のシェーディング素材
▲エフェクトの完成ショット
05:ルックデヴ&コンポジット
強烈に未来感のあるルックを作り出す
森江氏が作成したイメージリファレンスを基に、MayaによるライティングやレンダリングといったフィニッシングとAfterEffectsによるコンポジットは、デザイナーの柴野氏が中心となって行なっている。
「強烈な未来感を出してほしいというのがアーティストからの要望だったので、未来的な画になるようなハイライトの入り方を表現するという方向でマテリアルやライティングを決めていきました。個人的に青系が好きなので全体的に青っぽいルックになるようにしています」と森江氏は話す。
森江氏の要望に、柴野氏は「シンプルな画であっても魅力的なものにするためにはどうしたらよいのか、リファレンスとなるような画像を探しながら結構悩んでつくっていた気がします。一番リファレンスで参考にしてのは『トロン・レガシー』です」という。
「現実的に考えてしまうと、ハイライトの入り方などが本当は不自然なのですが、あえて嘘をついた画づくりもしています。例えばステージを真上から撮影しているカットでは、背景の映り込みが床にはっきり出るので、画的にダサくなる。映り込むはずの光源の影響は受けたいけど、光源の映り込みはやめようとか、下からのライトのバランスを考えて、何もないはずなのに格好良く映り込みが起きるような処理を柴野さんにお願いしていました」と森江氏は語る。
スタジオのライティングセットのようなHDRを使って森江氏の考えるルックを表現しているというが、カットや角度によってはそれだけでは不自然になるので、カットごとにHDR素材を変えているのだという。またコンポジットでは、重ねるレイヤーがかなりの数となったため、シンプルになるようにエクスプレッションを組んで工夫しながら、エフェクトが綺麗に見えるように組まれている。
MV冒頭のSun Foreverの主観カットのコンポジット例。
▲基本使用しているHDR素材
▲不要な映り込みをなくすためのHDR素材
▲背景の外側に走る光のリングを映り込ませるためのHDR素材
▲ビューティ素材
▲グロー用マスク素材
▲オブジェクト識別用のマスク素材
▲ワイヤーフレーム素材
▲通常使用のHDR素材を使ってレンダリングし、コンポジットした画像
▲HDRを2 のHDRに差し替えてレンダリングし、明るさの微調整を行なった状態。不必要な映り込みがなくなっている
▲色収差やノイズなどSun Foreverの主観エフェクトを追加した完成ショット
完成映像からの抜粋
Information
MV『I wanna rock』(High Speed Boyz)
アーティスト:High Speed Boyz/ディレクター:森江康太/
制作:トランジスタ・スタジオ
©Transistor Studio Co.,Ltd.
STUDIO
株式会社トランジスタ・スタジオ
www.transistorstudio.co.jp
TEXT_大河原 浩一(ビットプランクス)