<3>ショットワーク
3Dホログラムと4Kへの対応最後までトライ&エラー重ねる
新曲『あれから』の振付を手がけたのは、天童よしみ氏。番組内でも紹介されたとおり、天童氏自身がPerception Neuronのキャプチャスーツを装着し、そのモーションキャプチャ収録も行われた。そして、最終的なアニメーション制作を進めるにあたっては、より高精度のキャプチャデータが求められたため、ダイナモピクチャーズにてVICONによるキャプチャが改めて実施された。
一連のアニメーション作業は高橋由佳氏によるディレクションの下、社内のアニメーターが担当した。
「綺麗なデータを提供していただけたので、ボディモーションについてはスムーズに進めることができました。フェイシャルは、手付けで作成しています。『復活コンサート』のアーカイブ映像を参考に表情を付けていったのですが、病魔と闘われた時期ということもあって、笑顔のリファレンスとしては厳しいものがありました。笑顔の表現が一番難しかったですね。アップショットでは、岡田さんにリグを改良していただき、唇の粘着感(Lipsticky)や首筋の筋肉の動きも加えてリアリティを高めていきました」(髙橋氏)。
レンダラは松本氏が使い慣れていることもあり、Arnoldを採用。デジタルヒューマン制作の確かなノウハウの下、肌や髪の毛の質感がリアルに仕上げられた。ライティングからコンポジットまでの仕上げを担当した廣茂義人氏は次のようにふり返る。
「ロングとアップを合わせた総尺は9,000フレーム以上に達したため、プレイブラストを出すだけでも苦労しました(苦笑)。3Dホログラム用の全身ショットは2Kサイズの正方形という特殊な画角で作成。アップショットは4Kフォーマットで作成する必要があったため、アップショット用にテクスチャや髪のディテールを上げたものや、産毛を追加したモデルをモデラーさんに作成してもらいました。その一方ではレンダリングのサンプル数は可能な限り下げて、NUKEによるコンポジット作業時にデノイズ処理を施すことで何とか納品に間に合わせることができました」。
最終データの納品は、初回放送の3日前(9月26日)。プレイブラストの段階では問題なく見えても、ライティングを施しレンダリングしてみると違和感が出てしまう。また、アップショットでは美空ひばりの印象により近づけるべく、肌の細かいシミの強度やアイメイクの幅、口を開けた時の歯の見え方など資料映像と見比べながら最後までトライ&エラーをくり返していたそうだ。
「今回は、元データとの兼ね合いもあり、非常に複雑で重いリグになってしまったので、もし復活コンサート再演の機会があるなら、改善したいですね。そして、ひばりさんの笑顔をさらに追求して、よりクオリティの高い表現に仕上げられたらと思います」(岡田氏)。
フェイシャルアニメーション作業の例
NHKから提供された資料の例
Maya上に再現されたホログラム上演のエンバイロンメント
ライブステージに映し出された美空ひばりのデジタルヒューマン(本番の様子)
特殊なスクリーンにCGアニメーションを投影することで3Dホログラムを映し出している
投影テスト時のライト環境を撮影した写真
Arnoldから書き出したAOVs
NUKEの3D空間に上演時の背景や照明、フォグ、埃などを再現したプレートを配置
コンポジット作業の例
info.
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