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映画『彼岸島デラックス』(VFX制作:テトラほか)

映画『彼岸島デラックス』(VFX制作:テトラほか)

03 〈邪鬼〉百目のVFX

体表に覆われた百の目を細密なセットアップで再現

本作に登場する邪鬼の多くはデザインの段階で揺れものなどセカンダリアニメーション/シミュレーションの負荷を抑えた設計がなされていたため、そのセットアップも比較的シンプルなリグ構造になったという。しかし、全身に目があるという設定の「百目」については、ひとつひとつの目の開閉をコントロールするリグが必要となり相応の手間暇が費やされた。また、筋肉表現については百目も先述の太郎も身長15m体重3トンと巨体なため、Mayaマッスルを用いて筋肉の隆起など、重量感を強調させる仕様となっている。そして、そんな百目と太郎のキャラクターアニメーションについては、劇中の大きな見せ場となるVFXであることからテトラ内で一括して対応したという。「社内のモーションキャプチャスタジオで収録を行い、アニメーター6名が分業するかたちで、キャプチャベースのものはMotionBuilderで動きを整えてから、そのデータをMayaへ持ち込みモーフターゲットによるフェイシャルを加えるというながれで作業を進めました。百目と宮本兄弟の戦闘シーンでは、実は役者さんの3Dスキャンデータを基に作成したデジタルダブルも用いているんですよ。PhotoScanを使い、当社でスキャニングから一括して制作しているのですが、動きが速いのでそのつくり込みの度合いがまず伝わらないのが残念ですね(苦笑)」(谷口氏)。

テトラ内でのコンポジット作業は、コンポジター2名体制でNUKEを使って行われた。先述のとおり、映画本編だけでなく、TVドラマ等の連動コンテンツ向けの実写撮影(もちろんその後のポストプロダクションも)を同時に行う必要があったことから、スケジュール等との兼ね合いでスタジオセット(グリーンバック)とオープンセットで光源の位置が異なっていることへの対応など、ショットとして整合性をとるためには細かな苦労が求められたという。「今回初めてシーンリニアワークフローを導入しました。HDRIを用いたライティングのおかげで実写との馴染みは飛躍的に向上したのですが、本作が目指した"スタイリッシュ丸太アクション"というある種のケレン味あふれるビジュアルに仕上げる上では、ノーマルマップを用いてコンポジット時にリライティングする等の演出的な画づくりも心がけました」と、森出和真コンポジットスーパーバイザーはふり返る。「コンポジットにおいても新たな試みを実践することができたのですが、フォトリアルなVFXをつくるには、まだまだ改善の余地があるとも痛感しました。物理的に正しい画づくりが成し得た上でこそ演出的な職人芸が活きてくると考えているので、今後もこのアプローチを追求していきたいです」と、谷口氏。

CGW219連載「VFXアナトミー:彼岸島デラックス」

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百目のコンセプトアート(上)と設定資料(下)

百目の完成モデル。シェーディング表示(左)とメッシュ表示(右)


百目のセットアップ

  • CGW219連載「VFXアナトミー:彼岸島デラックス」

    本体用の各種コントロールリグ

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    アニメーション作業用ローモデル

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    体表に配された眼球と瞼のリグを表示した状態。眼球や瞼はエクスプレッションで個別に制御されており、手動でも操作可能

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    レンダリング用モデル。本体と体表の眼は一体成形になっており、個々の眼球と瞼の動きがレンダリングモデルに伝達される仕様

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筋肉シミュレーション用オブジェクトを表示した状態


百目のアニメーション作業例。百目の動きは手付けベースのため、一連のアニメーション作業はMaya上で完結させたという

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    プライマリアニメーション用リグを表示させた状態。基本となる動きはローモデル(ベースのジョイントのみ)で作業された

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    筋肉シミュレーション用オブジェクトを表示させた状態

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インハウスツール「V_DEAD」のUI。テトラ内のレンダリングのジョブ管理はDeadlineで行われたが、本ツールを用いることでジョブの実行を効率的に行えるという

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    百目のレンダーパス、13種類で構成(OpenEXRのマルチチャンネルを使用)

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    NUKE上のベースコンプ(ノードツリー)

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    百目のレンダリングイメージ

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    一連の処理を施した最終コンポジット

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