>   >  VFXアナトミー:Unreal Engine 4によるリアルタイムCGを活用した4Kベースの画、木ドラ25『モブサイコ100』
Unreal Engine 4によるリアルタイムCGを活用した4Kベースの画、木ドラ25『モブサイコ100』

Unreal Engine 4によるリアルタイムCGを活用した4Kベースの画、木ドラ25『モブサイコ100』

02 エクボのキャラクター表現

タイトな制作条件の下でも遊び心を忘れない

エクボは、完全体と霊魂の状態という2パターンで登場する。大半のシーンは霊魂の状態で描かれるため、ライティング以降の工程をUE4によるリアルタイムCGで作成することでコストパフォーマンスが高められた。「事前にフェイシャルが問題なく受け渡せるかなど、様々な検証を行いました。エクボの周りを漂うオーラのようなエフェクトもUE4のパーティクルを利用しています。リアルタイム処理のため、揺らめき具合は毎回変わりますが、表現的に再現性を重視する必要がありませんでしたし、4Kサイズのエフェクトを高速に作成できるメリットは非常に大きかったですね。意図した動きにならない場合も躊躇なく再レンダリングが行えました」(田中氏)。

完全体エクボについてはプリレンダーで完結(レンダラはArnoldを採用)。リグはHumanIKが用いられた。「揺れものが介在しなかったこともあり特別なことは行なっていません。モーションキャプチャについても同様です。ただ、完全体のエクボは全高3mという設定なのですが、ショットによっては物足りない場合もあったので、アオリの構図では全身をスケールして4、5mに改めるといった調整は適宜行なっています」(田中氏)。一方、霊魂のエクボは造形の大半を顔部分が占めることもあり、CVを務めた大塚明夫氏のフェイシャルキャプチャが活用されている。そのフェイシャルアニメーションは栗田泰成氏がリード。「エクボの声はプレスコ収録だったので、実写撮影に先行するかたちでフェイシャル作成に取り組むことができました。ほぼ表情が出来上がった状態でボディモーションを付けてもらっていたのですが、米倉が担当したカットでは即興でエクボが鼻をほじる芝居が加えられたりと、上手く相乗効果を発揮できたと思います」(栗田氏)。このように遊び心をもった画づくりが実践されていたことが窺える。

先日、NVIDIAがリアルタイムレイトレーシングの新技術「NVIDIA RTX Technology」を発表するなど、リアルタイムCGによるクオリティの追求が加速していくことはまちがいない。「シリーズものの企画でマスコット的なCGキャラクターを毎回必ず登場させよう、といったアイデアはわりと出てくるのですが、コスト的な問題から見送られがちです。そうした意味でも今回、エクボをつくりきることができて、大きな自信につながりました」(美濃氏)。

エクボ完全体モデルの変遷



  • 初期のスカルプトモデル(ZBrushで作成)



  • ブラッシュアップした完成形



  • Mayaに読み込んだモデル(メッシュ表示)



  • 同シェーディング表示


エクボ霊魂モデル



  • 完成形(メッシュ表示)



  • UE4に読み込んだ状態(シェーディング表示)


監督チェック用のレンダリングイメージ。表情バリエーションが複数用意された


完成形を用いたフェイシャルテスト




  • エクボ霊魂のボディリグ(Maya)



  • 同セットアップ

エクボ完全体のモーションキャプチャ収録の様子。ヴァーチャルカメラを使い、収録時にキャメラマンに実写撮影時のカメラアングルを想定しながら撮影してもらうことで、精度の高いプリビズを作成することができたという


フェイシャルアニメーション作業の例


ボディアニメーション作業の例



  • Maya上のプレビュー



  • UE4に読み込んだ状態。人魂のトレイルエフェクトはUE4上で付けている。また、通常はこのカットと同じくフェイシャル作成後にボディを付けるという手順だが、スケジュールとの兼ね合いでフェイシャルとボディを同時進行で付けることもあったという


アニメーションのブラッシュアップ例


上の3画像は修正前

下の3画像は修正後。第3話の学校シーンにて、エクボがヒロイン・高嶺ツボミ(与田祐希)を見て「いいケツしてんじゃん~」とセクハラ的な発言をし、モブにお仕置きされるというカットである。主な変更点は次のとおり



  • 当初はエクボがカットの途中からフレームインして、モブに話しかけるという段取りであったが、エクボの性格(オヤジ感)をしっかりと描くべく、ツボミの方を見つつ手でポーズをとりながら入ってくるように変更



  • モブに頭を掴まれた際の表情とポーズを「しまった、やばいこと言っちゃった!」という焦りの表情が読みとれるように強調


修正前はエクボの変形が小さく、硬質に見えていたため、振り回される際や机の角にぶつかった際の変形を、より漫画的に誇張。併せて、ヒットエフェクトも増やされた

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03 ショットワーク

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