03 ショットワーク
4KベースのVFX制作は依然として過渡期
超能力や破壊表現といったその他のVFXについては通常のプリレンダーベースだったため、4Kベースの制作に苦労したそうだ。外部パートナーのGREAT INTERNATIONALは主に超能力のVFXを担当。「当社では3ds MaxでCG制作を行なっています。表現によっては、意図的にボケた感じを出すために小さめのサイズでレンダリングすることもありましたが、4Kサイズではプレビューすら走らないくらい重い表現も多かったですね(苦笑)。CGだけでなく、AEのレンダリングだけでも1フレーム4~5時間かかるショットもありました」(森 誉裕氏)。データ負荷の重い表現については、できるだけ静止した状態でプレビューを行うといった創意工夫も必須だったとか。
コンポジット工程においても"4Kの壁"は高かった。ツークン担当VFXのコンポジットワークをリードした遠藤眞一郎氏(ダブルドットワークス)は次のように語る。「After EffectsのCreative Cloud 2018を使い、可能なかぎり標準機能で画づくりを行うようにしました。プラグインについてはParticularやFoamを味付け程度に利用するのに留めています。4Kという高解像度も大きいのですが、他のスタッフや外部パートナーさんとのデータの受け渡しを行う際の余計なエラーを避けることがねらいです」。
「ビジュアルとしては監督の意向を汲んで、いわゆる特撮作品的な"わかりやすいエフェクト"は避けています。ぱっと見は地味かもしれないけど、シーンが進むにつれて深みを増していくような表現を目指しました」(小林氏)。エクボのルックについてもツークン側から積極的に提案するかたちで制作が進められた。「監督からは『あまりアニメっぽくはしたくない。リアル路線のキモかわいい感じで』というリクエストをいただいていました」(田中氏)。完全体エクボについてはレンダラにArnoldを用いられたが、クランチタイムでは内部のレンダーサーバが不足したため、GCP(Google Coud Platform)の「ZYNC」も併用したという。「GCPのクオリティは確かなものでしたが、意図どおりの画づくりのためにはどうしても何度かリトライする必要があるので、当初の予定よりもコストがふくらんでしまいました(苦笑)。クラウドレンダリングは便利ですが、コスト管理の面では課題も多いです」(田中氏)。「4KベースのVFX制作はまだ過渡期です。今回もファイナルクオリティでのチェックフローについては課題が残りました。そうした意味でもUE4によるリアルタイムCGのさらなる活用と、クオリティの追求を続けていきたいと思います」と、美濃氏は総括してくれた。本文で述べたとおり、エクボ完全体はMayaでライティング&レンダリングが施された
エクボ霊魂Ver.のライティングはUE4上で施された
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UE4のライティング設定。BackLight、FillLight、KeyLightの3灯。実写プレートに合わせて3D空間上で実際の環境を再現している
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UE4のレンダリング設定。「エクボの周りに漂うオーラ的なエフェクト表現については、1フレーム目からパーティクルが大量に発生した状態になっている必要があったため、Animationパラメータ中の「WarmUpStartFrame」を24、「DelayBeforeWarmUp」を2秒と入力し、レンダリングを開始する最初のフレームよりも先にパーティクルが発生、拡散するように設定しました」(田中氏)。UE4によるリアルタイムCG処理は、プリレンダーよりもはるかに速くレンダリングが完了するため、効率良く作業を行うことができたという
エクボ完全体CUTのブレイクダウン
エクボ霊魂CUTのブレイクダウン
台湾のMiracle Digital Content Companyが担当した、モブの超能力エフェクトCUT(第6話)ブレイクダウン