>   >  VFXアナトミー:きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』MV(VFX制作:十十ほか)
きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』MV(VFX制作:十十ほか)

きゃりーぱみゅぱみゅ『原宿いやほい』MV(VFX制作:十十ほか)

02 ダンスパート

長尺かつ大量のレンダリングにZyncを活用

今回、モーションコントロールカメラを使用するにあたって、Houdiからカメラ情報を書き出し、モーションコントロール用ソフトウェア「Kuper」(カメラのポジション、角度の数値の列を出せる)で読み込み撮影をしているという。3Dソフトウェア上でのカメラを実際のカメラと同期させているわけだ。実写撮影時の照明は正面からのキーライトのみ。一応人物に当てている環境のHDRIは撮ったが、今回は人に当たるライティングの参考程度にしか使用していないようだ。厳密に言うと、3DCG環境と実写素材のライティングは正確には合っていないらしいが、違和感なく馴染んでいる(正に匠の技だ)。NUKEによるコンポジットで、地面への反射や被写界深度の処理などを工夫することで上手く馴染ませている。地面の反射に関しては、MantraV-Ray両方で出す必要があり、このダンスパートは特に前後のレイヤーが複雑ですごく大変だったそうだ。

十十としては、こういう企画の際はプロジェクトがスタートするときに「何かしら新しいチャレンジ」をしようとしているという。そこで今回、ちょうどMaya 2017がリリースされたタイミングだったということもあり、レンダラはArnoldを使用しようと試みていたという。しかし、最終的にはレンダリング処理に要する時間の問題で納品に間に合わないという結論に達し、Zync(MayaのV-RayとMantra)を使用。勝ち目を探ってぎりぎりまで試行錯誤したが、今回はレンダリングコストの点で見送ることになった。Zyncを使うにあたっては回線もNUROに変更している。「社内で回ることは回るのですが、1フレームに1時間半ほどかかるフレームもあったり、20レイヤーで構成されたCGアニメーションを1,000フレーム投げることもありました」と戸梶雅章氏が語るように、非常にレンダリングコストのかかる表現がなされている。「今回、Zyncがあって本当に助かった。ただ、上手く使う必要がありますね。当然、使えば使うだけお金がかかるので気兼ねなくバンバンは使えないのでね(苦笑)」と神田氏。「今後、Redshiftが普及しそうなこともあり、クラウドベースのレンダラがさらに主流になっていくのかなと。最近技術の進歩がすごいですし」とは、尹氏。そのほか、「メガネフィルムさんにモーションキャプチャのデータの整理をしてもらえたのは非常に助かりました」と、話す神田氏。音とダンスが合っているかどうかのよりどころになり、とても助けられたという。


2016年12月中旬に黒澤フィルムスタジオで行われた実写撮影の様子(次のページで解説する「行進シーン」(1回目)を撮影中)



次のページで解説する行進シーン(2回目)の奥用のKPP実写素材。回転台とルームランナーを用いて撮影された。「EOS C300、5D、そして7Dなどを使い、別角度から同時に撮影しています。これらの実写素材をカメラと人物位置の角度をHoudini上で計算して切り替えて配置しています」(床井氏)

ダンスパート向けのMayaによるショットワークの例



  • 曲の最後にシャンパンタワーのキャラクターが倒れる表現のグラスの物理シミュレーションと、nClothによるテーブルクロスのシミュレーション作業



  • ダンスの動きに合わせてテーブルクロスの動きをnClothでシミュレーションしている



  • 同じく曲の最後に、Tシャツの塊キャラクターが爆発する表現のシミュレーション作業



  • 【画像左】のプレビューをワイヤーフレームをONにしたもの

ダンスパート向けのMayaによるショットワークの例


帽子や靴が身体に群生する表現はconstraintを用いてHoudiniで構築。部分ごとにspringの強度などを調整でき、レスポンスも速く、ベースとなる数値がひとつ握れれば、後はパーツの差し替えで基本的な動きをつくることができたという


群生する帽子や靴などは色のちがいなどを出すために、Houdiniでprimitiveごとにvertex colorに異なる値を入れて、Mayaでマテリアルを個別に変えられるようにセットアップされた


レイアウト作業の例。カメラから見たときに魅せたいキャラクターが通るように、キャラクターごとにIDをふり分け、copy元のID番号を変更することで整列するキャラクターを変えられるようにしてある

NUKEによるコンポジット作業の例(最後のサビパート)

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03 行進パート

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