<2>膨大なマスク作成によるシーン構築
2−1:12人分のマスク制作〜タイトルバック〜
本作は物語の性質上マンガ的な表現が多く、ダイナミックな場面展開やオーバーなアクションカットが数多く登場する。そのため、カラーキーやロトスコープによる人物のマスク作業も多い。右の事例はオープニングのショットで、日中のグラウンドから渓谷の背景に変わり、乃木坂46のメンバーのフォーメーションが変化して決め画になるというものだ。
オープニング内では非常に短いショットだが、グリーンバックを貼ったターンテーブルにメンバーをひとりひとり乗せて撮影し、その素材からマスクを作成している。「動いている12人分のマスクを作成しないといけないということで、社内で作業を分散させました。HD解像度であればある程度ラフな状態でもマスクが作れるのですが、4K解像度だとそうもいかず、ガッツリとした作業になりました」と担当したコンポジターの道木一馬氏は言う。背景はデザイナーの熊谷深理氏が制作しているが、4K解像度でのレンダリングに時間がかかるため、CINEMA 4D(以下、C4D)でラフな地形を作成したものをレンダリングし、Photoshopでディテールを描き込むという手法で制作時間の短縮を図ったという。
▲(左)グリーンバックで撮影された人物プレート。このようなプレート12人分撮影された/(右)キーアウトされた人物プレート
▲グリーンバックのキーアウトはAfter Effects(以下、AE)で行なっている
▲C4Dで作成された、タイトルバックの背景用地形データ
▲レンダリングされた地形の画像はPhotoshopでレタッチされ仕上げられていく
▲レタッチされた地形はAEで再配置し、雲などの背景を合成して仕上げていく
▲完成した渓谷の背景
▲(左)ショットの冒頭で使用するグラウンドの実写プレート/(右)ショットの最後に使用されたエフェクト背景
▲ 完成ショットの静止画連番。キーアウトされた12人分の人物プレートを配置し、背景の変化に合わせて人物を回転させながらフォーメーションを変更して、最終的なレイアウトに変化させるという短い尺だが非常に手の込んだショットだ
2−2:ロトスコープによるシーン構築
撮影スケジュールも非常にタイトなため、人物の背景に合成素材が必要でもグリーンバックを貼れないことも多いという。そのような場合は、AEのロトブラシを使ってマスクを自動生成して効率を図っているとのこと。右の事例は、4人のメンバーをカメラが回り込むというショットだが、背景にピッチングマシンを合成する必要があるため、手前の4人だけロトスコープ処理されている。
▲実写プレート
▲AEのロトブラシによる作業画面
▲カメラトラッキングにはThe FoundryのCAMERATRACKERを使用
▲合成されるピッチングマシンの3DCG素材
▲完成ショットく