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ドラマ24『初森ベマーズ』(VFX制作:Zaxx)

ドラマ24『初森ベマーズ』(VFX制作:Zaxx)

<4>臨機応変に制作手法をプランニングする

4−1:銀球からHDRを作成

ソフトボールの特訓で使用されるピッチングマシンは、3DCGで作成され実写プレートに合成されている。超高速でボールが発射されるピッチングマシンはマンガチックな設定であるが、ボディの鋳造感や、焼けた砲身の質感など非常にリアルに作成されているため存在感のある小道具となっている。このピッチングマシンのレンダリングには、撮影現場に置いた銀玉を撮影した写真から擬似的にHDRIを作成したものが利用されている。「作成されたHDRIは簡易的なものですが、最初のライティングの手がかりとしては非常に効果的で、ライティングを詰めていくスピードが早くなりました。かなり使える手法でした」と末松氏は言う。「銀玉で撮影した写真をHDRIに展開するPhotoshopのプラグインもあるのですが、もっと手軽できないかと思い3ds axに作成した半球のモデルにマッピングしてそれを平面にモーフィングして作成してみたところ、ことのほか上手くいったのでこの方法でほとんどのHDRIを作成しています」とCGクリエイターの大口実希氏は語る。

連載VFXアナトミー:ドラマ24『初森ベマーズ』

▲現場で撮影された銀玉の写真

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▲3ds Maxで半球に銀玉の写真をマッピング

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▲モーファーを使って平面化する

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▲作成されたHDRI素材

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▲質感は赤道儀などの鋳造された部分の質感などを参考に作成された

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▲レンダリングされたピッチングマシン

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▲床への映り込み用に作成された素材。反射パスをレンダリングしていると時間がかかるので、モデルを逆さまに配置してレンダリングし、映り込み素材を作成している

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▲実写プレートにピッチングマシンを合成した完成ショット

4−2:実写素材を利用したボールの表現

本作はソフトボールをテーマにしたドラマであるため、演出的にボールを扱うシーンが多く、ボールだけ別に合成して動きを付けるというショットが随所にみられ、シーンの内容にあわせて多様な手法でボールを作成している。右の事例は、実写で撮影されたボールをロトスコープして位置を動かすことでアニメーションを作成している。ボールの数が多いが動きが単純なため、実写素材を加工してしまった方が効率が良いのだという。

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▲(左)ボールを床に置いた状態で撮影した実写プレート/(右)ボールがない状態の実写プレート

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▲(左)実写プレートからロトスコープで切り出したボールの素材/(右)ピッチングマシンの3DCG素材

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▲ボールとピッチングマシンをボールがない状態の実写プレートに合成した完成ショット。実写素材だけでボールのレイヤーを移動させて跳ねているような動きを作成している

4−3:Element 3Dで ボールを作成

3次元的な動きが必要だが、3ds Maxなどの3DCGで制作するほどではない場合、AEのプラグインElement 3Dを使ってボールを作成し、3DCGのレンダリングなしにダイレクトに実写プレートに合成されている。

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▲ Element 3Dによるボールの作成画面。「3DCGで制作してしまうと、4Kでのレンダリングにはそれ相当のコストがかかってきますが、Element 3Dを使うことでコストの面でもスケジュールの面でも効率化を図ることができます。また、使える人が多いAEでコンポジットまで完結できるので、人的コストも効率化できます」とエディターの藤田憲史氏は言う

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▲(左)ボールのノーマルマップ/(右)ボールのディフューズマップ

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▲ 使用されたショット例

4−4:3ds Maxを使った ボールの作成

ボールがアップになったり、スローモーションになったりするなどボールの動きが遅い場合は、Element 3Dでは質感が物足りないので3ds Maxを使ってボールをモデリングし、アニメーションをレンダリングして連番素材として合成に使用している。
「3ds Maxで全部やっています、というのも効率化としてはある意味簡単な手法なのですが、時間との闘いの中でわざわざ3種類の手法を臨機応変に使い分けて効率化を図れたということは今回の成果のひとつですね。そもそもVFXは手法を問わずそれらしく見えるということが大事。手法自体はあまり関係ありません」と小林氏は語る。

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▲ 3ds Maxによるボールのアニメーション作業画面

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▲(左)V-Rayでレンダリングされたボールのディフューズ素材/(右)ベロシティ素材

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▲ 実写プレート

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▲ ボールを合成

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▲ベロシティ素材を使ってブラーを調整した完成ショット

4−5:魔球エフェクト

登場するボールの表現はただのボールだけではない。今後益々VFX的にも見どころのあるシーンが多くなってくるという。特に試合で投げる魔球のエフェクトには期待してほしいとのことだ。下図は制作されている魔球のひとつ。FumeFXを使った炎の表現など、多くのバリエーションの魔球エフェクトが登場するという。本作がVFXを含め、どのような展開になっていくのか楽しみだ

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▲魔球の一例の完成ショット(一部トリミング)。止め画で見ても迫力ある魔球のデザインになっている

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▲ ボールを包む炎は、荒々しい炎を表現するために、あえてFumeFXのWaveletの設定を使用せずデフォルトのシミュレーションで行われている。炎に表情を持たせるため、AEのメッシュワープを使って最終的に形状を加工している

TEXT_大河原 浩一(ビットプランクス

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  • ドラマ24『初森ベマーズ』
    テレビ東京系 毎週金曜 深夜0時12分ほか放送中!
    監督:鈴村展弘、西海謙一郎、元木隆史/脚本:小峯裕之、根本ノンジ/チーフプロデューサー:中川順平/プロデューサー:濱谷晃一、小松俊喜/VFXスーパーバイザー:小林真吾/出演:乃木坂46 ほか/制作:テレビ東京、楽映舎

    ©「初森ベマーズ」製作委員会

    www.tv-tokyo.co.jp/bemars

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