>   >  VFXアナトミー:NHKスペシャル『戦艦武蔵の最期~映像解析 知られざる"真実"~』(リードVFX制作:NHK)
NHKスペシャル『戦艦武蔵の最期~映像解析 知られざる

NHKスペシャル『戦艦武蔵の最期~映像解析 知られざる"真実"~』(リードVFX制作:NHK)

02 キャラクターアニメーション&フェイシャル

画的なインパクトと時代考証を両立させる

再現CGアニメーションの大半の舞台となるのは当然ながら海上だ。自ずと海面や水飛沫のエフェクトワークが作品の出来映えに直結することになる。先述のとおり、海面のシミュレーション表現は東映アニメーションの協力を得る一方で、NHKのエフェクトアーティストたちは後半の見せ場となる沈没表現に挑んだ。『坂の上の雲』3部作では、水表現にはNaiadを、煙表現には3ds MaxFumeFXを用いていたが、NHK内ではLinuxベースのサーバを運用していることに加え、ことエフェクト表現については効率的にトライ&エラーとノウハウの蓄積が行えることから日本でも着実にシェアを伸ばしつつあるHoudiniをメインツールとした体制に移行中だという。「本作の流体表現もHoudiniベースで作成しています。エフェクトについては、レンダラもMantraを利用しました」(古川泰行エフェクトアーティスト)。沈没の表現はFLIP流体シミュレーションを利用したそうだが、馬鹿正直に計算するのではなく、ひとつのシミュレーション結果を可能な限り流用できるように工夫したという。「カメラが変わっても、再計算にそれほど時間を要さないようにセットアップすることで汎用性をもたせました」(安藤隼也エフェクトアーティスト)。主砲の爆煙に関してはPyroを使用。艦砲の発射表現はリファレンスが非常に限られたため、VFX側から提案するかたちで作業を進めることになったという。また、コンポジットの際にどのようなかたちの素材が望ましいのか、稲垣充育コンポジターたちと相談しながら進めたそうだ。「Alembic形式で書き出して、エフェクト自体の照り返しも、コンポジット作業時に調整できるようにしました。また、武蔵の煙突が映るショットが多いため、立ち上る煙にも苦労しました。それについてはショットごとに煙突の位置情報を自動で取得し、そのポジションから出るようにとシーンを工夫しています」(古川氏)。飛沫についてもできる限りキャッシュを流用し、厳しいところだけシミュレーションをし直すという方針が徹底された。

エフェクトに関しても時代考証への対応に苦労したそうだ。プリビズに対して、「当時の戦闘機は海面すれすれの低空飛行はできない」という指摘に加えて、武蔵の航行速度もより低速へと修正したという。それに伴い船の挙動は抑え目に仕上げることに。(特に史実に基づかない)映画やドラマであれば画的な派手さを優先する場合もあるが、こうしたところに再現映像ならではの難しさがあったそうだ。「ですが、歴史や軍事には非常に詳しい方々が必ずいらっしゃいます。本作ではできる限り当時の状況を正しく再現することにこだわっているので、そうした方がご覧になっても納得してもらえると嬉しいですね」(中野おかゆCGデザイナー)。

白組がショットワークを担当した空戦ショットの例

Mayaのシーンファイル

白組が手がけた空戦ショットのブレイクダウン



  • 背景プレート(実写素材を利用)



  • CGアニメーションを合成


コンポジット&グレーディングを施した最終形

主砲発射ショットのブレイクダウン



  • 背景プレート(4K実写映像)



  • 空と雲を差し替え、水面のシミュレーションを合成



  • 武蔵のCGアニメーション、煙ならびに航跡エフェクトを合成



  • Houdiniで作成した主砲エフェクトを加えた後、画ブレ等のコンポジット処理とグレーディングを施した最終形

本作最大の見せ場である武蔵の沈没クライマックス。Mayaから武蔵のCGモデルをAlembicで書き出し、HoudiniのFLIPによる海面シミュレーションが作成された

Houdiniによるエフェクト作業負荷を軽減させるべく、NUKE上でMayaから読み込んだLocatorの位置に実写の飛沫を追加。同様に武蔵CGモデルのUVを使い、NUKE上でマッピングし、滴り落ちる水素材を貼るといった処理も施された



  • 武蔵の簡易化したfbx、locatorをNUKEに読み込む



  • UVテクスチャチェッカーで確認しながら、飛沫素材を貼り付ける



  • 飛沫素材をマップ



  • スクリューに足された飛沫の実写素材

沈没ショットのブレイクダウン



  • 背景プレート。NUKEの3D空間にHDRIをマッピングして作成



  • 武蔵のCG(テクスチャなし)



  • Arnoldで質感レンダリング



  • Houdiniによる海面のシミュレーション



  • Houdiniによる飛沫のシミュレーション



  • コンポジットとしての完成形(グレーディング前)

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03 レンダリング&コンポジット