02 キャラクターアニメーション
急がば回れの発想で3Dベースによる作業を徹底
先述のとおり、実写撮影の際はジバニャンとウィスパーのモックアップのほか、妖怪たちのガイドとなるシンプルな立体物が用いられた。また、抱きかかえられたり、鼻を押されるコアラニャンなど、役者たちとのインタラクションが求められる芝居についてはクッションのような柔らかな材質のグリーン色の小道具を用いて撮影し、その動きに合わせてCGアニメーションが施された。また、本作には比較的リアルな頭身の妖怪も登場するが、モーションキャプチャは用いずに全て手付けでアニメーションが施されているとのこと。
アセット制作と同様に、アニメーション作業においてもオリジナルアニメの表現を忠実に写実的なCGアニメーションへと昇華させるという方針が採られた。その好例だと感じたのが、ジバニャンの「ひゃくれつ肉球」だ。「実際に高速で連打する動きを付けています。モーションブラーについても、基本的にはベクターブラーを使用していますが、アングルによっては綺麗にかからないので3Dのブラー処理も併用しています」(小俣氏)。クライマックスでは、複数体の妖怪たちがアクロバティックに飛び回るため、レンダリングコストが跳ね上がったと思うが、クオリティ優先で3Dブラーを多用したという。もちろん、そうした方針を支えるべく、本プロジェクトでは最大200台で構成されたレンダーサーバ(1台あたり20~24コア/40~48スレッド)を用意したそうだ。また、実写と2Dアニメのマッチカット(同ポジでの切り替わり)についても先に実写(3D)側で、切り替わりのディゾルブの尺数も加味してレイアウトを固め、アニメーションを付けた上で作画作業に入ってもらうようにされた。「これにより、自然なかたちでアニメと実写の世界が切り替われるようになりました。撮影終了後からレイアウト出しまでの期間は非常にタイトになりましたが、着実にクオリティを高められたと思います」(小俣氏)。
実写との馴染みを高めるべく、このプロジェクトでもHDRIによるIBLが用いられた。そのHDR素材は、Canon 5DSによるRAW撮影(9ステップ×4方向)が行われた。デイシーンについてはある程度共通のHDRIで対応できたというが、後半の商店街や遊園地のナイトシーンは、ほぼカットごとに撮っているとのこと。「30メートルぐらい上空に飛び上がる妖怪も登場するので、同じショットでも高度ちがいのバリエーションを作成する必要もありました。また、クランクアップ後に自分たちだけでもう一度ロケ現場に足を運び、3Dレイアウト用の計測を追加で行なったりもしています」(小俣氏)。撮影の段階で、こうした下地づくりをしっかりと行なったからこそ、実在感のあるVFXを創り出せたわけだ。
撮影現場で収集した、露出9段階 x 4方向で撮影されたHDRI素材の例
dcrawで現像、PTGuiでマージし、NUKEで色調整した本番用HDRIの例
ひとつ上の画像によるIBLを用いた完成カットの例
生身の役者とフルCGキャラとのインタラクションの例。図はコアラニャンの鼻を押すという芝居のカットより
TVシリーズのエピソードを忠実に再現することが目指されたカットの例(エピローグより)
ショットワークでは、まず最初に3Dレイアウトが作成された
このショットのブレイクダウン。まずは、CGキャラのガイドとなるモックアップ込みの状態で撮影したテイク(基本的なロトスコープ処理後)。この後にガイドなしで同じアングル、芝居で撮影する