>   >  VFXアナトミー:『キングスグレイブ FFXV』の技術力でよみがえるフォトリアルな旧人類・絶滅生物、NHKスペシャル『人類誕生』
『キングスグレイブ FFXV』の技術力でよみがえるフォトリアルな旧人類・絶滅生物、NHKスペシャル『人類誕生』

『キングスグレイブ FFXV』の技術力でよみがえるフォトリアルな旧人類・絶滅生物、NHKスペシャル『人類誕生』

02 旧人類を『キングスグレイブ FFXV』クオリティで描く

"World of Wonder"現実の神秘を採り入れる

ここでは、LPとSQEXによって内製されたアルディピテクス・ラミダスの制作と、外部パートナーへのディレクションについて中核スタッフのコメントを紹介していこう。「まずは、ラミダス、アファレンシス、ハビリスというフルCGで仕上げる3種類の旧人類に関する資料を集め、アートの制作から始めました。NHKさんからの参考資料をベースとして、CGモデルを制作する上で不足している情報を自分たちでもリサーチしながらグレーモデルを作成。身体的な特徴や、バランス等について、研究者の方々に見てもらいながらブラッシュアップしてきました。毛並みは、最終的なイメージをグレーモデルにペイントオーバーすることで作業効率を高めました」と、キャラクターSVを務めた岩澤和明氏(SQEX)はふり返る。毛の量、肌の色の変化が明確にわかるようにつくっていったそうだ。眼球の表現は、今までと同様の手法で作成しつつ、今回の人類の中では最古のラミダスは白目の割合を少なくしておき、アファレンシス、そしてハビリスと進化するにつれて、目を通して意思疎通を図るようになったことをビジュアルとしても描くために、白目の割合を増やすようにしたという。毛の表現について、内製するラミダスに関してはOrnatrixを採用。レンダリングされる体毛の数は数十万に達したという。「監修では、毛の本数や太さに関しても多くの意見をいただきましたが、チェック時のライティングによっても見え方は変わりますし、実際のシーンで動かすとまた見え方が変わってくるので落としどころが悩ましかったですね」とは、高橋浩一リギング&シミュレーション SV(SQEX)。

現実に即した画づくりにおいては『キングスグレイブ FFXV』制作時と同様に、"World of Wonder"という名目の下、制作者の実体験や実物の観察を重要とし、例えばプロップ制作では、実際に果実などを購入。それらを観察した結果を下に様々なリファレンスが作成された。また、キャラクターのアニメーションについては、「監修が入ることを考慮してモーションキャプチャベースのリアルな動きにまとめました。ただ、ハビリスのしゃがむ姿勢など、骨格的に現代の人間では不可能な姿勢が求められることもあったので、アニメーション工程では細かな調整も求められました」と、川村 茂アニメーションSV(SQEX)はふり返る。

内製パートでは、レンダラにV-Rayを採用。ラミダスは体毛が多く、シーン中には草木も多く登場するため、ショットによってはデフォルトのままでは1フレーム100時間のレンダリング負荷(レンダーサーバは約400CPU)に達したため、設定を調整して平均1フレーム30~40時間でまとめたという。「草が重なりあった箇所にはアーティファクトが生じやすかったのでコンポジットで調整しました。一定のクオリティを保つ上では、3Dモーションブラーも併用しています」とは、山口威一郎シークエンスSV(SQEX)。

ラミダスのアセット



  • 初期のグレーモデル。群れのリーダー(上段)と女性(下段)



  • 大人と赤子のサイズ比較



  • 手のディテールをスカルプトした例



  • ボディリグ&セットアップ。インハウスのモジュラーリグシステムCRAFTで作成

背景用モデルの例



  • 樹木。SpeedTreeで作成された



  • 低木





  • 小岩や枝、葉など

ラミダスが食するイサカマの実

完成モデル



  • 若いものから熟したものまで、細かくつくり分けられている



  • 登場カットの例。一連のプロップ制作では『ファイナルファンタジーXV』プロジェクト制作時と同様に、「World of Wonder」というコンセプトの下、実際に近い果実を購入し、観察から得た知見を適宜反映したという。「外部パートナーさんへ提供する資料を作成する際も、観察時の写真や動画を活用しています」(勝山裕輝恵プロップスSV)



  • モーションキャプチャ収録の様子。パントマイム・アーティストとしても高名な荒木シゲル氏がアクターを務めた



  • アニメーション作業の例


最終的なレンダリングイメージ

ラミダスの体毛表現のブレイクダウン。Ornatrixで生成後、nClothでシミュレーション。V-Rayでレンダリングされ

足の筋肉シミュレーション例。胸まわりと足まわりに仕込んである(Maya Muscleで作成)


シミュレーションだけでは対応できない草木の大きな揺らしエフェクトは、HoudiniのWire Solverで作成された

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03 外部パートナーとの協業

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